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今度は隼人が勝ち誇ったかのように口の端をつり上げた。
「でも残念だったな。その狙ってたイイ女がオレのモノになってよ」
「別に残念ではないぞ。四大美女と言う言葉が示すように、世界にはナスターシャの他にも男を虜にする女がおるからの。そしての? 偶然にも、我がヴァティスガロは次に侵攻する国をあのロングラッソと決めたのだ。国を支配するグリオローネもナスターシャに劣らずイイ女ぞ。我的にはグリオローネの方が好みぞ……何というか妖艶な……」
「おっさんの好みとかはどうでもいいから。そろそろやろうぜ」
自分の聞きたかったことだけを聞き終えた隼人は、会話を一方的に切り上げた。
「……お主は少し痛い目を見た方がよいぞ」ダンダークが眉間に皺を寄せて言う。
「じゃあ好都合じゃね? おっさんが痛い目を見させてくれ」
「我の『痛い目』は優しくないぞ」
ダンダークが両手を斜め上に挙げるようにして構える。まるで、『どこからでも仕掛けてこい』と言わんばかりに。
「上等」
隼人はいつものように体を前傾にした構えを見せる。
隼人とダンダークとの体格差はあまりに歴然だった。
ダンダークの体格はまさに重量級。それも超が付くほどの巨体の持ち主だ。
それに引き替え隼人は体重六五キロそこそこの中量級である。率直に言ってやられにいくようなもの。まず試合としては組まれないカード。見る人達全てが『ショーだ』と口にするカードだろう。
しかし、ここはファンタジー。ファンタジー世界でのリアルファイトだ。
もし現実世界であれば隼人は即拒否していたであろう。そんなふざけた試合が今まさに始まるのだ。
だが、隼人は不思議と落ち着いていた。
ナスターシャには『やってみないと分からない』と言ったが、実際は妙な自信もあった。それはマウロノとナスターシャと戦ってみて植え付けられた自信なのかもしれない。
そしてもう一つ。隼人には確信に近い自信を持って言えることがあった。
この世界の格闘技レベルは低い、ものすごく低いと。
隼人はダンダークの構えが見せる『誘い』に、考えることなく突っ込んだ。




