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否定は受け付けぬ。とばかりに、ナスターシャは隼人の言葉を待たずにサッサと行ってしまった。
「……許さぬって」
なんで命令口調なんだよ。立場はオレの方が上になったんじゃないのかよ。
隼人は内心そう思ったが、口にはしなかった。上下関係云々で要求した『隷属戦』ではない。ナスターシャを好きにすることが出来ればそれで良い。
そうだな。まずは……キッスから教えていこうか。それから慌てず急がず、順を追ってナスターシャを仕込んでいくとしようか。
こういうのって、なんて言うんだっけ。
躾け? 違う。教育? 違う。調教? ……調教。そうだ調教ってやつだ。
「ふひ……」
まさかまさか、異国の地で女性を調教することになるとは夢にも思わなかった。しかも美女ときた。そうか、これもファンタジーってやつか。ファンタジーならではの、とんでも展開だな、おい。
「ふひひひひ……」
「気持ち悪い。無言になったかと思えば急に笑い出しおって」
「えあ?」
隼人はダンダークの野太い声に、現実に引き戻された。
「悪い悪い。ちょっとこれからのことを考えてた」
「我にやられる未来でも想像したか?」
「んなわけあるか。てかよ、ナスターシャっておっさんの目から見てどう思うよ。やっぱイイ女なわけ?」
「? ナスターシャか? それはイイ女に決まっておろう。何しろ、ナスターシャは世界四大美女の一人なのだからな」
「そうなの?」
隼人は食い付いた。『世界四大美女』という言葉に。
「そうだ。世界中で知らぬ人間などおらぬ程に有名な話だがの」
「ああ、オレ今日この世界に来たばかりで何も知らないから」
「何のことだ?」
「ああ、コッチの話だからスルーでいいよ。そうか、かなりイイ女なのか。なるほど」
「あれほどの上玉を侍らせることが出来れば至福であろうな」
「もしかして、おっさんも狙ってた口か?」
ダンダークがニタリと笑った。
「当然ぞ」




