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いやいや、そんなことよりも……そうなると当然、隼人には聞かずにはいられないことがあった。
「性行為を知らないって……、じゃあこの世界では一体どうやって子供が出来るんだ?」
「子供? そんなの『受精魔法』に決まっておるだろ。ん? もしかしてお前の言う『せいこうい』とは、『受精魔法』のことを指しているのか?」
「じゅ、受精魔法?」
一体なんなんだこの世界は。なんでもかんでも『魔法』ですか。
「そうだ。受精魔法だ」
「魔法でどうやって? 『赤ちゃん』って唱えたら『はい、ポン』って産まれるのか?」
「そんなわけあるか!」
「んじゃ、どうやってだよ!」
「それは――」
心なしか、恥ずかしそうに説明するナスターシャ。
簡潔に纏めれば、こうだ。
世界中には『新生館』と呼ばれる館が多く存在し、そこの館主、働く人間だけが『受精魔法』という特殊魔法を唱えることが出来る。その者達を『生殖師』と呼ぶらしい。
特殊魔法である『受精魔法』は誰にでも掛かるのではなく、結婚の儀を行った女性のみ。
伴侶となった男性の体から、『生殖師』が魔法を使って『生命の光』とやらを抜き出し、これまた魔法を使って、抜き出した『生命の光』を愛する妻のお腹の下、下腹部へと移転させる。
要するに。
『生命の光』とかロマンチックなネーミングをしてるが、単に精子で、その精子を魔法で女の子宮に飛ばすってことか。人工授精みたいなものか?
「なんでそんな回りくどくって面倒くさいことしてるんだ?」
「面倒くさいだと!? 新しい命を宿す儀を何だと思ってるんだ!」
「マジなの? そのやり方でしか子供作れないの?」
「当たり前だ! 他になにがあるというのか。なんだ? もしかしてお前のいた世界では違うというのか?」
「――動物は?」
「は? いきなり何を……」
「いやいや、動物も人間と同じように『受精魔法』で子供作ってんのか?」
「何を馬鹿なことを」
「馬鹿なこと、じゃねーよ。良いからちょっと答えてみろよ。どうやって動物は子供を作ってるんだ?」
「そ、そ、そんなの交尾に決まっているだろ……」
モゴモゴと小さな声で言うナスターシャ。
なぜ恥ずかしがる。意味が分からん。この世界には人間が行う性行為という概念がないのに、動物の『交尾』という言葉を口にするだけで恥ずかしがる意味が分からん。
でも隼人はこれで安心した。この世界にも『ズコバコ』の性行為というものがちゃんと存在していることに。




