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紋章憑き~世界最強の男がやって来た世界は、キスもエッチも無い世界のようです  作者: 琴崎大寿
第一章 ワケも分からぬまま、この世界で最強を目指すことになりました
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「うはー、すげー」


でかい。本当にでかい。例えがアレだが、もしかしたら某世紀末救世主漫画に登場する『黒王号』くらいの大きさではないだろうか。と隼人は思った。蹄が人間の顔と同じくらいの大きさって、もはや化け物と同じだろ。これは『白王号だ』と隼人は思った。


しかし、そんな見た目と違って気性は大人しいのか、ナスターシャの差し出した手に、リリマーレンは顔をスリスリと擦りつける。


「良い子だ」


そう言ってナスターシャはリリマーレンの鬣を優しく撫でると、勢いよくリリマーレンに跳び跨り、隼人に後ろに乗るよう促した。


軽やかに飛び跨ったナスターシャと違い、隼人はモタモタと何とかリリマーレンに乗ることが出来た。


ナスターシャが鞍に取り付けられた取っ手に掴まるよう指示する。


「取っ手? コレか?」


跨った丁度、股の辺りにコの字型の取っ手があった。それを隼人はシッカリと掴む。掴んだのを確認したナスターシャは一言。


「落ちるなよ」


ナスターシャがリリマーレンの手綱を引くと同時に、リリマーレンは地を蹴り大空へと、まるで透明の階段を駆け上るかのように飛び羽ばたいた。


「え? お、おわぁぁああああっ! おわっ! おわっ! おわあぁっ!」


隼人は堪らず、咄嗟に取っ手から手を放すとナスターシャの腰に抱きつくようにしがみついた。


「こ、コラ! 何をするか! 取っ手を掴め!」


「やだ! む、無理! 無理! ヤバイ! ヤバイ! これ滅茶苦茶恐いって!」


「お、大袈裟な! さっさと腰から手を放せバカモノが! 集中出来んではないか!」


「むむむ無茶言うな! 放したら死ぬ! 落ちる! 絶対落ちるからぁぁ!」


演技でもない正真正銘、隼人の心の奥底からの叫びにナスターシャは嘆息を漏らした。


「情けないというか何というか……こんなヤツが本当に『竜神』に選ばれたのか」

 


リーンハルス王国。世界はプリマヴェーラの北側に位置する国である。王国の中心である王都ログナス。ログナスの中心、賑わう街を見下ろすようにして、丘の上にジュナルベイル城はあった。


城門の前には四人の衛兵が配置されていた。しかもその四人、只者ではなさそうだ。黒光りする甲冑に身を包んだ男達の、自分の身の丈を越える巨大な剣を地に刺し、無言で腕を組む姿はなかなかの迫力を感じさせるほどである。裏生地が赤色の黒色のマントには『不死鳥』の刺繍が施されていた。それは、その四人が王国の誇る『双神』が一人、『火の紋章憑き』直属の精鋭達であることを示していた。


「ん?」


突然吹いた強い風に煽られ、衛兵達のマントが靡いた。


四人の衛兵が上空を見上げると、馬に翼を生やした、俗に言うペガサスが地に降り立とうとしていた。リリマーレンである。


城門を守る衛兵達は姿勢をより正し直して迎える。


小気味よい蹄の音を立て、地に降りたペガサスを前にした衛兵達は、険しい表情の中にも若干の緩みが感じられた。いや、正しくはペガサスに跨る女性、ナスターシャを前にして表情を緩ませたとと言った方が良いだろうか。


「着いたぞ」


「……やっとか……長かった」


軽やかにリリマーレンから跳び降りるナスターシャに続いて隼人もリリマーレンから降りるが足に全く力が入らず、尻餅を付いてしまった。


「だ、大丈夫か?」


「……マジ恐かった」


「立てるか?」


「ちょっと無理。足に力が入らん。ガックガク」


「そうか、仕方ない。少し休むか。おい、リリマーレンを頼む」


そう言って衛兵の一人にリリマーレンの手綱を託すと、リリマーレンは素直に衛兵に連れられていった。


「お疲れ様です」


一番年齢がいってると思われる衛兵がナスターシャに話しかける。


「馬房からリリマーレンが突如居なくなったんでみんな慌ててますよ? 何かあったんで?」


「いや、別に何もない。人を一人連れてくるのに必要だっただけだ」


「そうでしたか。なら良かったです。空を飛べるナスターシャ様がリリマーレンを必要とする時はケンタウロスモードに入るときくらいなものですから……それに先程空が『夜転化』したので、もしかしたら不測なことがあったものかと。アルベセウス様も心配しておられます。――で? そこの……不思議なかぶり物をしてる彼が、そうで?」


「そうだ」


「大丈夫ですか? なんか憔悴しきってますが。しかしなぜに裸?」


「それは私にも分からんが……そうそう、先程の『夜転化』はこの男が起こしたものだ」


「っ!? そ、それは誠で!? で、ではこの方は、まさか……」


「そうだ『紋章憑き』だ」


「こ、これは大変な失礼を!」


衛兵は慌てて勢いよく頭を下げた。


「いや、良いよ。全然気にしてないから」


隼人は衛兵が頭を下げるのを手で制すると、ゆっくりと腰を上げ、軽く膝の屈伸を繰り返した。


「もう大丈夫なのか?」


「まだ少しアレだけど。まあ、歩くだけなら大丈夫よ」


「そうか。……しかし、本当に空がダメとはな」


「は? ダメとかの問題じゃねーだろ。いきなりあんな高い所飛ばれて平気なヤツなんていねーからな? あのな? それとな? 第一に、人間は普通空飛ばないからな? な?」


そう言って隼人は隣に立つ衛兵に話を振った。


「え? い、いえ自分は飛べませんが。魔力を持つ人間なら普通に飛びますよね?」


「……え? それ、もはや人間じゃなくね?」

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