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「な、なんだ、そのステータスは……」
隼人の戦歴を見たナスターシャの体が戦慄く。
「さあ? それに、なんかこの前見たデータと違うよな。黒いお星さんがいっぱいだ」
「そ、そもそもだ! お前はまだ『紋章憑き』と戦ってはおらぬではないか! そ、そのステータスは異常だ。間違いだ! あり得ぬ! ふざけるな!」
いつもの落ち着き払ったナスターシャからは想像も出来ない口調で、一気に捲し立てる。
「そんなこと言われても知らねーよ。あ、もしかしてさっきのマウロノってヤツが、実は『紋章憑き』だったとか? ない? ない?」
隼人が飄々と言う。
「マウ、ロノ?」
ナスターシャは口籠もる。あり得ない話ではないからだ。ナスターシャ自身、今までそういう不正を働く輩をこの闘技場で数回目の当たりにしていた。しかもマウロノは、あの『卑怯』が服を着ているような……ダンダークの部下だ。そう考えると『あり得ない話ではない』どころか、そう考えるのか妥当だと思えてきた。
ナスターシャは更に考える。
例えそうだったとして、だ。
たった一戦。
ナスターシャは隼人のステータスに目を向けた。たった一つの勝利で……私の三十八戦と地道に培ってきた能力値を軽く越えたというのか? 信じられん。正直に言って、これは挫けたくなるな……。ナスターシャの口から乾いた笑いが漏れた。
しかしそれも一瞬だった。ナスターシャは何かを振り払うかのように、左右に強く顔を振る。
何を弱気になっていたのか。それに、私らしくもなく、みっともなく取り乱してしまったな。
ナスターシャが口を真一に結ぶと、いつもの凛と済ました表情で隼人を睨む。
そして一言。
「さあ始めようか……掛かってくるがよい」
それに隼人が答える。
「さっきのヤツとは違うってのは間違いなさそうだ」
「当たり前だ」
隼人がマウロノ時と同じように、少し前傾に構える。
「でも、女だ。殴れねぇ」挑発と取られてもおかしくない口調で言う隼人。
「……貴様はぁ……女、女と……舐めるなぁぁ!」
怒りの形相のナスターシャが隼人に向かって猛突進する。




