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言った直後、ウッカリ口を滑らせてしまったことに気付いた男が隣のアルベセウスの反応を横目で伺う。聞こえたか?
アルベセウスは気にした素振りも見せず、闘技場の二人に視線を向けたまま。
男は胸をなで下ろす。
が、それも束の間。アルベセウスが言う。冷たい声で。
「――そうか、ヤツは『紋章憑き』であったか」
アルベセウスの言葉の節々から滲み出る圧力に男はたじろぐ。
「い、いや、それはだな」
「言い訳は聞かぬ。聞くのは一つ、マウロノをどう処するのか。上官であるダンダーク、お前がしっかりと考えておけ。内容次第では……分からぬお前ではないであろう」
アルベセウスにダンダークと呼ばれる男。『土の紋章憑き』として、世界にその名を馳せる者の一人。
その男が芝居がかったように、大袈裟に身を震わせる。
「おぉ……恐いのう。恐いのう。実に恐いぞアルベセウスよ。で、もし我が『分からぬ』と言ったら、お主はもっと恐くなるやもしれぬな? いや、なるわな? のう? アルベセウスよ。正直我はの? やっても構わんのだがの?」
ダンダークが不気味に笑う。
「……なんだと?」
アルベセウスがダンダークを睨む。その肩をダンダークがポンポンと叩いた。
「冗談。冗談よ。そう恐い顔をするでない。安心しろ、マウロノにはお主が納得する厳しい罰を与えるからの」
アルベセウスは不快感を含んだ息を吐くとダンダークに向けた目を前へと戻した
「そうそう。そんなことよりもまずはこの『神撃』を楽しもうぞ」
ガハハと笑ったダンダークも闘技場の二人へ目を向ける。
「……だがの? これだけは言っておく。お主がどれだけ怒ろうが喚こうが猛ろうが、我には勝てんぞ」
ダンダークの明かな挑発にアルベセウスが再びダンダークを睨み付ける。
今度はダンダークも、まるで格下を見るかのような蔑ました視線でアルベセウスを見る。交差する視線。そしてダンダークが言う。
「お主の『太陽監獄(グーヴェンギーニフ オウ ゾンネ)』と我の『カタストロフィー』、どちらが優れてるか、いつかハッキリとさせぬとな」
「望むところだ」
そのやりとりを最後に、二人は無言になると再び闘技場の舞台へ目を戻した。




