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ナスターシャは憮然とした表情を見せるが、すぐに戻り、逆に余裕の笑みを浮かべる。
「――なるほど、そうか。よし分かった。なら私もお前と同じ条件でやるとしようか」
「は? それじゃあ意味がねーだろよ」
ナスターシャに背を向け入念に屈伸運動を繰り返す隼人が振り向く。
その顔には不満が見て取れた。もう本当に、この目の前の女に舐められている感が有りすぎてイライラする。しかし、こういう勘違い女をギャフンと言わせたい自分もいる。絶対スッキリすることだろう、と。
そして隼人は思いついた。
にやつく隼人。この笑顔、なんともゲス感溢れる醜い笑顔である。
「あのよ? さっきのやつ。『隷属戦』だっけ?勝者が敗者を好きに出来るみたいなルールのやつ。それさ、オレもお前に要求しても良いか?」
何とも言えぬイヤらしさ満点の表情を作る隼人はナスターシャに、そう要求した。
闘技場内が大きくどよめく。
場所が変わって闘技場内の特別観覧席。そのドアが開く。
部屋に入ってきたのはアルベセウスだった。
既に部屋にいた巨体の男が椅子に座ったまま振り向くと小さくニヤリと笑ってみせた。
「アルベセウス。お主も中々面白い余興を用意してくれるな」
要領を得ぬ顔を見せるアルベセウスに巨体の男が話を続ける。
「『隷属戦』よ。先程うちのマウロノを熨した男がナスターシャに要求しおったわ」
これにはさすがにアルベセウスも驚いた。
「いや知らぬ。恐らくナスターシャも知らぬだろう」
アルベセウスが男の隣に腰を下ろすと足を組んだ。
「ほほぉ。と言うことはあの男の独断ということか。で? あの男は何者ぞ? うちのマウロノを軽くあしらうほどだ。かなりの男と見るぞ」
「実はあの男とは、私も今日初めてあったばかりでな。詳しいことは分かっておらぬ。ただ一つ確かなことは、彼は『紋章憑き』だ」
「やはりか。胸のアレを見て、もしやと思っておったが……で? その属性はなんぞ? それが一番重要ぞ」
「あの男が手にする力は『竜』だ」
『竜』と聞いた途端に男は目を大きくした。
「……それは誠ぞ? 嘘ではないな?」
「本当だ」
男は「ぬぅ」と短く唸るとポロッと言葉を零す。
「……そりゃマウロノの持つ陳腐な紋章では太刀打ち出来ぬはずぞ」




