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「ダンダーク? ああ、お前んとこの将軍ってやつ?」
「ダンダーク様を呼び捨てにすんじゃねーよ! 『様』を付けろ! 『様』を!」
「アホか。なんで誰だか知らねーヤツなんかに『様』付けせにゃならんのよ」
「ダンダーク様を『ヤツ』呼ばわりしてんじゃねーよ! ボケが!」
騒ぎ喚くマウロノを無視するような形で隼人は喋る。
「そうだな……おっし。次やるやつはそいつにしよう。ダンダークってヤツに決定だ。少なくともこんなヤツよりもレベルが測れるだろ」
「はぁ!? お前如きがダンダーク様の相手が務まると思ってやがんのか! 身の程を知りやがれクソが!」
隼人が大きく溜め息を吐く。
「あのよ、知ってるか?」
「何がだ!」
「オレな? 今すっげー普通に喋ってるだろ?」
「それがどうした!」
どことなく柔和な表情を見せる隼人。
「でもな、違うんだなコレが」
「な、何が違うってんだボケ!」
隼人は右手から、掴んでいたマウロノの手を放すと拳をちらつかせた。
「――ぶちギレたまんまだ――」
そう言って、隼人は冷徹な……まるで能面のような表情で拳を振り下ろした。
「ひっ……!」
格闘中の二人から少し離れた場所で、リレイアは傷の応急処置を受けながら戦況を見つめる。
その頭に何者かの手がポンと置かれる。振り向くリレイア。
「あ……」
「来るのが遅れた。すまなかったな」
その手の正体はリレイアの上官であるアルベセウスだった。
安堵からか、リレイアの止まっていた涙が再び溢れ頬を伝う。
「少しだけ我慢してくれ。もうじきガイナが来る」
リレイアが小さく頷く。言葉を発するのも苦痛と言った感じで、リレイアがか細い声で辿々しく言う。
「……か、彼は……? もしかして……彼、が」
闘技場内が初めて大きな歓声で包まれた。リレイアは慌てて隼人達の方へと視線を戻す。
「ふむ……やはり強いな」
そこには高々と右手を挙げ歓声に応える隼人の姿があった。
「そう、彼の名はクロサワ ハヤト。『竜の紋章』を受け継ぐ者だ」
この歓声でアルベセウスの言葉が耳に届いたのか届いていないのか分からないが、リレイアはただ無言で隼人をずっと見つめていた。




