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マウロノが隼人の胸の紋章を見た。
「てめぇ、『紋章憑き』か」
「そうよ? なによ、もしかして紋章見て怖じ気づいたとか?」
「怖じ気づくだと? このマウロノがか? バカかてめぇは。逆だ。アルベセウスに、そしててめぇ。二人の『紋章憑き』とやれるなんて超最高じゃねーか!」
「あそ。そんじゃ、お前の了解は取ったと言うことでやらせてもらうわ」
地を蹴る隼人。蹴られた地面が発破を掛けたみたいに抉れ飛び散った。
一瞬にしてマウロノとの距離を詰めた隼人はマウロノの腰に組み付き抱え上げると、流れるよう腰を捻り、自分の体ごとマウロノを投げ倒す。
「かはっ!」
背中からモロに落ちたマウロノの呼吸が一瞬止まる。悶絶。
苦しみもがき無抵抗状態になったマウロノ。隼人は楽々と馬乗りの体勢を取った。俗に言うマウントポジションだ。
先程、隼人は自分で自分のことを『強い』とは言ったが、あまりにも、本当にあまりにも簡単すぎる展開に拍子抜けした。え、もう?
とりあえず、マウロノの呼吸が整うまで隼人は待った。待ってあげた。
そして、どよめく観衆。違うだろ、ここは盛り上がるところだろ? いつもと違う空気に少ししっくりと来ない隼人だった。
「――落ち着いたか?」
「て、めぇ……何乗っかってやが、る。ど……きやがれっ!」
回復したマウロノが腰を浮かせたりして逃れようとするが全くビクともしない。感覚的にまるで地面と同化してしまったみたいだった。
「無理無理」
下からマウロノの拳が飛んでくるが軽く背中を反らし空を切らせる。
隼人はその手を掴む。
マウロノは残った方の手で、同じように攻撃するが、それも隼人に難無く掴まれてしまった。
あえなく攻撃の手段を摘まれたマウロノ。
隼人の気持ち的に、まるで子供を相手しているようだった。
「ちょっと聞くけど。お前ってさ、この世界ではどのくらいの強さなのよ。並の『紋章憑き』レベルってことを聞かされたけど、それってかなりなの?」
歯をギリギリとするだけで何も言わないマウロノ。
「んでな、ナスターシャってやつによ? お前に全く歯が立たないってこと言われたのよ、オレ。な、それがこれだよ。もしかして『紋章憑き』って呼ばれるヤツってみんな似たようなレベルなのか?」
笑うマウロノ。
「てめぇ、俄の『紋章憑き』か? 『紋章憑き』を舐めんじゃねーよボケが。てめぇなんざダンダーク様の足元にも及ばねぇよ」




