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闘者達の舞台。『舞台』などと聞こえの良い言葉を使ってはいるが、実際は何もない。隼人のいた世界で言うリングやマットなどは当然無い。あるのは『土』。ただの地面だ。
隼人は思った。こりゃストリートファイトみたいなもんだな、と。
部外者の出現に闘技場内が俄にざわつき始める。マウロノとリレイアの二人も隼人の存在に気付いた。
「誰だ? てめぇ」
マウロノが隼人を睨む。
「乱入者だよ」
隼人はマウロノのそんな威圧的な視線も全く意に介さずに短くそう言葉を返すと、トコトコとマウロノの横を通り過ぎる。
「あのさ? お前さ? やりすぎだろ?」
「はぁ?」
隼人はリレイアの前に来ると腰を下ろす。
両腕を折られたリレイアはマウロノに殴られた顔を、大きく陥没した鼻から止めどなく吹き出るようにして垂れ流す鼻血もどうすることも出来ずに隼人に晒す。元は相当に可愛かったと思われるリレイアの今の顔は、ただ一言、酷かった。
こんなの痛いってもんじゃねーだろ……オレでも涙流すぞ、と。しかもそれを女相手に平気でするか、と。隼人は自分の着ていた服を脱ぐと丸めてリレイアの陥没した鼻をそーっと優しく押さえると直ぐさま受付役の男性を呼んだ。呼ばれた男性はどうしようかと、戸惑い泣きそうな顔で隼人の元へとやってくる。
「後はオレに任せとけ」
隼人は柔らかい声で言った。
「何勝手なことしてやがる。こいつはオレの奴隷になるんだよ」
マウロノが隼人の背後から肩を掴む。隼人は払い除ける。
「いいからちょっと待ってろ。お前は後回しだ」
ブチーン。瞬間、マウロノ渾身の蹴りが隼人の脇腹に炸裂する。
が、隼人は全くと言っていいほど微動だにしない。
「誰に向かってそんな口聞いてやがんだゴルァァァ! ルァァ! ルァァ! ルァァァ!」
マウロノは怒髪天と言う言葉がピッタリな形相で猛吠え、隼人を一方的に攻撃する。
が、隼人は全くと言っていいほど微動だにしない。
「……うっせぇな。コッチに来たばかりのオレが、んなもん知るはずねぇだろ」
隼人は何事もなかったかのように立ち上がる。平静を装っているが隼人は驚いていた。痛みを一切感じない。本当に何ともない。
『へえ、これがねぇ』と一人納得し感心した隼人だったが、今はそんな場合じゃないと、リレイアを支えるようにして立たせると男性に預けた。
男性は慌ててリレイアを連れてその場を離れる。リレイアは何かを言いたげ。
「……て、てめぇ、何者だ」
「だから乱入者だって言ってんだろ」
マウロノと対峙する隼人の背中に、これが今の精一杯なのだろうリレイアの小さく震える「ありがとうございます」の声が届いた。隼人は手を挙げて応える。
隼人は前傾姿勢のファイティングポーズを取ると、自信満々の口調で言った。
「オレ、マジで強いから覚悟しとけよ」




