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「皆さんにはいつもご苦労をお掛けして、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです……ごめんなさい」
不安げな表情で成り行きを傍観していたリリスが謝罪の言葉を述べ、頭を下げた。先程までの明るさは消え失せていた。
「姫様、お顔をお上げになってください。私達はおろか、この国の者達全て、姫様に絶対の忠誠を誓っております。故に謝罪の言葉など必要有りません」
堅苦しい言葉を述べるも、ナスターシャの顔は優しく微笑む。そう、まるで可愛い妹に接するかのように。
「ナスターシャ……ですが」
「ですが、は無ーし! 俺達を信じな」
ガイナは明るい笑顔を作る。それは落ち込む妹を元気付けようとする兄のような笑顔。
「ガイナ……」
リリスの目が潤む。アルベセウスが微笑む。
「姫様は十分すぎるほど頑張っております。まだお若いのに。それこそ、我々が姫様に頭を下げなければならないほどに。だから、我々はもっともっと頑張らなければ。でなければ、それこそ我々リーンハルス王国将軍の名が廃れるってものです」
先程までのクールな表情を一変させたアルベセウスは、先の二人と同様に優しい兄のような顔を見せた。
若干一四歳の幼き女王。不幸にして両親を亡くし、王位を継いだリリスはまだまだ親の愛に飢えていた。
そんな幼いリリスをいつも優しく支えてくれるのは、アルベセウス、ガイナ、ナスターシャの三人。リリスの親になることは出来ないが、せめて兄、姉として。
その思い、語らずともリリスには伝わっていた。
スカートをキュッと掴んだリリスは、肩を震わせて泣いた。
一度流れ始めると止まらない。ボロボロ、ボロボロと涙は零れる。手で何度も何度も拭っても流れる、止まってはくれない。あれ? おかしいなぁ、とみんなに笑ってみせる。これ以上、みんなに心配を掛けさせたくないのに。涙は止まらない。リリスは小さく震える声で「ごめんなさい」と言うと、また泣いた。
ナスターシャはリリスに近づく、気付いたリリスはナスターシャの体に抱きついた。ナスターシャはリリスの震える体をそっと優しく抱きしめる。
「大丈夫。大丈夫ですよ、姫様……」
リリスは小さく、うん、うん、と頷き、泣き続けた。
よしよし、と優しく頭を撫でるナスターシャ。
ガイナとアルベセウスは微笑む。重たかった空気も、いつのまにか穏やかに和んだ空気に変わっていた。しかし、三人それぞれの内に秘めたる思いは、より強固なものへとなっていた。
その光景を、隼人も優しそうな笑顔で見守り「うんうん」と頷いていたが、内心ものすごく居づらいと思っていた。




