14
「――さて、では次の話に進むとしようか……時間的にはもう来る頃だと思うのだが……」
「ガイナ、ですか?」
リリスの言葉にアルベセウスが頷く。
「そうです。ガイナの所の諜報隊が遠征先から戻ってきたようで、その報告のまとめが完了次第この部屋に来る手筈に――」
アルベセウスの言葉が終わらぬ途中、部屋のドアが開く。
「来たようです」
「うーす。姫様おつかれー!」
陽気な挨拶と共に部屋に入ってきたのは赤髪の青年。手には数枚の紙。
赤髪の青年はそのままアルベセウスの隣の席にドカッと着席した。
「ふぅ」
赤髪の青年は席に着くなり大きく息を吐いた。
「ご苦労だったな。どうだった?」
「ん」
アルベセウスの問いに、赤髪の青年は難しそうな表情で手に持った数枚の紙から何枚かを抜くとアルベセウスに渡した。渡された紙に無言で目を通すアルベセウスの表情には固さが浮かび上がる。
「ほら、お前も」
そう言って残った紙を折りたたみ円卓の上を滑らせるようにしてナスターシャへと渡す。
やはりアルベセウスと同様に、渡された用紙に視線を走らせるほどにナスターシャの表情が曇る。
隼人は赤髪の青年を観察する。
赤髪の青年はアルベセウス達と同じく、地位の高い人間だけに着ることが許される黒を基調としたコートを羽織る。違うとすればライン色だけ。こちらは紫色だ。
「あんたがクロサワ ハヤトか?」
いきなりフルネームを言われて、隼人は驚く。
「そうだけど、なんでオレの名前を――」
「何でもなにも、城中あんたの話題で持ちきりだっての。伝説の『竜神』の紋章憑きがこの国に来た。ってな」
「そうなの?」
「そうなんだよ。おっと、紹介がまだだったな。オレはガイナ。ガイナ・アックスフォードだ。『聖神スグラド』の『紋章憑き』で、まあ一応将軍ってのを任されてる」
「何が『一応』だ。『れっきとした』だ」
「そうだっけ?」
アルベセウスは紙をテーブルの上に置くと小さく溜め息を吐いた。
「姫様、どうぞ」
ナスターシャは読み終わった紙をリリスへと渡す。
リリスが読む間、部屋の中は静寂に包まれた。どことなく重い空気を隼人は感じた。
隼人は横のナスターシャに紙には何が書いてあったのかを聞いてみた。返ってきた言葉は、
「まあ待て」だった。




