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紋章憑き~世界最強の男がやって来た世界は、キスもエッチも無い世界のようです  作者: 琴崎大寿
第一章 ワケも分からぬまま、この世界で最強を目指すことになりました
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新作『魔王を名乗るアッシュ・バ・クラヴェリードは世界を守護する者だそうですよ?』のプロローグを掲載しました。更新スピードはそれほど早くないと思いますがこちらも応援よろしくお願いします!


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「へ? ここ、どこだ?」


それが、隼人がこの世界に来て初めて口にした言葉だった。


「え? なにこれ? マジで恐いんですが。え? オレどうなってんの? え? え?」


隼人が振り返る。そこには見渡す限り草原の大地が広がるだけで、何も無い。何というか、まず日本では到底お目に掛かることが出来ないくらい、ネットの画像でしか見たことがないファンタジー感溢れる景色が隼人の目の前にあった。


「え? オレ、控え室から出たよな? なあ?」


隼人の問い掛けに答え返すものはいなかった。

無意識の内に独り言を続ける隼人は自分の手を見た。両手には格闘家が装着するオープンフィンガーグローブ。上半身は裸で、下はハーフパンツに裸足。ハーフパンツには誰もが知っているくらい超有名なエンターテインメント会社のロゴマーク。極めつけに、口元を除いて顔をスッポリと隠すように、ハヤブサをモチーフにした覆面を着けていた。


そう。隼人は格闘家なのである。しかも最強の一人でもある。


黒澤隼人。二〇歳。格闘技団体『怪童』現世界スーパーライト級王者。

格闘センスがずば抜けており、センスだけで王者まで上り詰めたと言ってもいいほどである。負けず嫌いな性格をしているが、努力するのだけは大大大大嫌い。


そんな隼人は今日一二月三一日の大晦日、格闘技の聖地と呼ばれる埼玉スーパーアリーナで八回目の防衛戦を行う。はずであった。


相手は『怪童』現世界ウェルター級王者である白崎拓人。

相手である白崎拓人、彼もまた格闘センスのみだけで王者まで上り詰めた男であり、性格も隼人と同じく負けず嫌いで努力が大大大大嫌い。


そんな隼人と拓人、二人は互いに強くライバル視する関係で、戦績は三戦して〇勝〇敗三分。今日の試合は判定無しの完全決着マッチとなっていた。


そして今日の主役の一人である隼人は先程までトレーナー達と一緒に控え室にいたのだ。試合開始の時間が迫り、トレーナー達に続いて最後に控え室から出たところ、いきなり『此処』だった、と言うわけである。


「いや、マジこれは参った……っつーか、どう考えてもヤバイだろ……」


あてもなく一〇分程、周りをウロウロとしてみた隼人であったが、見事に何もない。雲一つ無く気持ちの良いくらい清々しい青空に、心地良い日差しをサンサンに浴びる隼人であったが、隼人の気持ちは絶望という深く深ーい闇に包まれたままであった。


力無く項垂れ腰を落とす隼人。さて、どうしよう。と、落ちていた小枝で地面をイジイジする隼人。本当なら今頃オレはアイツをぶっ飛ばしてる頃だよなぁ、と小枝で地面をイジイジする隼人。「ふはぁ」と、何とも言いようのない溜め息が漏れた。


ふとここで隼人が自分の体に起きてる異変に気付いた。


「なんだコレ」


左胸に、まるでタトゥーみたいな模様が浮かび上がっていた。

その模様はまるで、


「ドラゴン?」


体を丸め込み眠りに付く竜のように見えた。何でこんなものがオレの体に?


「奇怪な――貴様何者だ? 一体こんな所で一人何をしてる?」


ワケも分からぬことの連続で頭を悩ませる隼人に、突然どこからともなく声が聞こえた。

隼人は慌てて周りを見回すがどこにも声の主らしき人の姿は見あたらない。


『ヤバイ!?』


突如隼人を、全身の毛が逆立つような寒気が襲った。

無意識に近い形で体が反応しその場から跳びずさる。


その瞬間。さっきまで隼人がいた場所に、上空からまるでレーザー光線みたいな一撃が突き刺さった。レーザー光線の正体は眩く輝く一本の長大な槍だった。


「は? は? は? は? はあ!?」


目を点にして滝汗を流す隼人が見上げる。


「ほう、私の一撃をかわしたか。やはり貴様か? 突如現れた原因分からぬ異質な魔力の正体は」


口をポカンとさせる隼人。視線の先には空に浮かぶ女性の姿。


「う、浮いてる?」


「どうした? なぜ何も仕掛けてこない? まさか余裕を見せているのか? ふっ、面白い」


はてなマークの連続で思考が追いつかない隼人をよそに、女性は一人勝手に納得し意味不明の言葉を呟く。

刹那、空一面に無数の光の槍が表れ、全ての矛先が隼人に向けられる。


「ふふふ。次の攻撃に、貴様はどう対応するのかな?」


顔面引きつった隼人の口から乾いた笑いが漏れる。


「……冗談。オレ死ぬぞ」


『――いや、主は死なんぞ』


「!? 誰よ?」


『無駄だ。主に我の姿は見えぬ。主の意識に直接話しかけているからな。主も声に出さずとも言葉を思い浮かべるだけでよい、そうだな、心の声というヤツか? やってみろ』


「直接? 心の声? 喋らなくてもいいのか? てかさっきからホント何なんだよ……たく……えっと……」


『こ、こうか?』


『そうだ』


『お、おおお、な、なんかすげーぞ! なんか感動した!』


『話し始め早速で悪いが、もう時間がない。今すぐ我が力を受け継ぐがよい』


『力を受け継ぐ?』


『そうだ。そしてこの世界で『最強』になってみせろ』


『最強?』


『そうだ。最強だ。それによってこの『プリマヴェーラ』の地は救われ、そして主も救われることになるだろう』


『プリマヴェ? 救われる? いきなりどういうこっちゃ、ワケ分からんぞ……。ん? あんたもしかしてオレが此処に来た原因知ってんのか?』


『知るも何も、主をこの世界に呼んだのは我なのだからな』


『は? あんたがオレを?』


『そうだ』


『なんで?』


『『最強』になってもらうためだ』


『……は? いやいやいやいや。それ理由になってないからね? だからなんでオレなの?』


『すまぬ。詳しく説明するだけの時間が残っておらぬ』


謎の声との会話の途中に、

ゾワワッ! またもや死を予感させる超絶にヤバイ寒気が隼人を襲う。


「とおっ!」


瞬時にその場から飛び退く。

と、同時に光の槍が地に突き刺さる。因みに彼女の一撃は体感速度で言うと軽く音速の域である。隼人本日二度目の『九死に一生を得る』であった。


「ふぅ、あぶねあぶね」


『呼び出しておいてアレだが……主、本当に人間か?』


「どうした? 何故何もしてこない? 貴様、私を舐めてるのか?」


この言葉に少しムカッときた隼人。


「あぁん? 『何故何もしてこない』だぁ? んなもん何も出来るわけねーだろが! 『何か』してほしいんなら、まずはてめーが降りてきやがれ!」


『やめておけ! 今の主では全くと言っていいほど相手にならぬ! 本当に死ぬぞ』


「なんだ? 貴様、空を飛ぶことが出来ないのか?」


「当たり前じゃねーか! 飛べるわけねーだろ!」


女性は隼人の言葉に疑問符を浮かばせる。


『私の勘違いか? もしやこの男、ただの民間人か? しかし……ただの民間人が私の攻撃を偶然二度もかわすなんてあり得ぬ話……いや、もし本当に民間人であるのならば、それはそれで私はとんでも無い間違いを起こしていたことになるのだがな……少し急きすぎたか』


苦笑した女性は召喚した無数の光の槍を解除、消し去ると無言で隼人の前に降り立った。


『時間が来たようだ。主よ、強制的になってしまうが我の力を受け継いでもらうぞ』


『は? え? おい? 受け継ぐって、オレ何も説明受けてないぞ!』


『もう無理だ余裕がない。大丈夫だ。お主が『最強』になったとき全てが分かる――それでは任せたぞ――我が名は竜神ラルファが力を受け継ぎ果敢な勇者よ!』


『竜神ラルファだと? え? おい、コラ! 一人勝手に話し進めてんじゃ……オイ! コラ! コラ! 聞いてんのか! コラ! え? これって居なくね? え、ウソ? マジで? 冗談だろ? ねぇ? ねぇ? は? は? はぁぁ? ふ、ふ、ふ、ふっざけんなよ! ……勝手に話し終わらせて消えてんじゃねーよぉぉぉぉぉぉ!』


心の中で大いに叫んだ隼人だった。


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