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不在届:302号室 郵便物集積記録  作者: ちぱ


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第4話 記録資料:〇〇県立図書館 所蔵・地域史調査メモ

【資料概要】

本資料は、藤代氏が失踪の3日前に図書館で複写したと思われる、郷土資料のコピーと彼の自筆メモである。


郷土資料:『〇〇市・災厄の記憶』(198X年刊)より

「19XX年、土砂崩れによる郵便局〇〇分室の崩壊について」

当時、山間部にあった〇〇分室には、配達困難な「宛先不明」の郵便物が集められていた。

民間伝承によれば、この土地には古くから「届かなかった想い」を土に還す儀式があったという。

分室が崩壊した際、局員5名と共に、約10万通の「未配送の郵便物」が地中に埋まった。

当時の生存者の証言によれば、崩壊の直前、局内では「手紙が泣いている」という奇妙な音が響いていたという。


【藤代氏による手書きの付箋】

佐藤幸男は、この分室の元局員名簿に名前があった。


しかし、名簿上の佐藤幸男は、土砂崩れの時点で当時25歳。


もし生きていたら、今は60歳を越えているはず。


でも、アパートの管理人は「佐藤さんは30代くらいの、物静かな男だった」と言っていた。


時間が、手紙の中だけ止まっている?


202X年4月15日(月) 藤代の手記より

図書館から帰る途中、妙なことに気づいた。

街中のポストが、全部「私の方を向いている」気がする。


いや、そんなはずはない。ポストは固定されている。

でも、角を曲がるたびに、あの赤い箱の「投函口」が、大きな口を開けて私を待っているように見えるんだ。


耐えられなくなって、大学の友人、和也のアパートに泊めてもらうことにした。

自分のアパートには、もう二度と戻らない。

着替えも教科書も全部置いてきた。

これで、あの郵便物からは逃げられるはずだ。


和也のアパートに着いて、ドアを開ける前。

ふと、彼の部屋のドアに付いている郵便受けを見た。


そこから、「私の健康保険証」が、半分だけ顔を出していた。


私は、自分の財布を確認した。

保険証はある。ここにある。

じゃあ、あそこに刺さっている「保険証」は、なんだ?


震える手でそれを引き抜くと、裏側に赤いインクでハンコが押してあった。


『検印:佐藤幸男』


同時に、和也の部屋の中から、ガサガサと大量の紙をかき回すような音が聞こえてきた。

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