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EP9 防戦一方

 今日も空は変わらず青い。

 いつもと同じように、(かなで)と一緒に登校している。


「それでさー」

「うんうん」


 芯からたわいのない会話を打ち合いながら、校門に差し掛かった時。

 門の右側からサラサラの赤髪がひょこっと出てきて、栗色の目がわたしと合った。

 少女はいつものように口角を上げていた。


「や、片原(かたはら)さん。おはよう」

「あ、安房(あわ)さん!? お、おはよ」


 物陰から出てきた安房さんはすこぶる笑顔だった。

 安房さんはわたしの顔を見つめる。


「いやぁ、朝から可愛いね。片原さん」

「……へ?」


 下から覗き込むように見てくるせいで、わたしより背が高いはずの安房さんの上目遣いを真正面から食らう。

 くっそかわいい。

 少し垂れた目がわたしの視線を釘付けにして離してくれない。


「じゃあ、行こうか」


 安房さんはすっと背を伸ばした。やっぱりこうやってみると、背、高いな。

 その時、わたしの手がふいに暖かさを感じる。

 安房さんに手を握られていたのだ。


「あ、あの、安房さん?」

「ん? なに?」


 安房さんから返ってきたのは平然とした顔、微風でも吹いたのかとでも言わんばかり。

 わたしは手を外そうとして、指をこまねく。

 しかし、安房さんの指はわたしを逃がしてくれなかった。

 熱と熱が交わる。

 指先が熱くなってきた。

 激戦が繰り広げられていたが、急にぴたりと安房さんの手が止まる。

 安房さんが口を開く。


「片原さん、ワタシと手を繋ぐの、いや?」


 安房さんは俯いて、溢すように口を開く。

 つられて口を開く。


「いやじゃ、ないです」

「うんうん、そうだよね。嫌なわけないよね」

「……ん?」


 予想外の即答。動揺の最中、安房さんが顔を上げる。その顔は、満面の笑み。

 しまった、急いで手の方を見た。

 が、もう手遅れ。わたしの手は安房さんの手と繋がれていた。

 あろうことか、恋人繋ぎ。

 安房さんの少し大きめの手が、わたしの手を包み込む。


「さあ、行こうか」


 歩き出す。わたしは頷くことしかできなかった。




 ――放課後。


 教室のドアあたりがざわざわしてる。

 なにが起きたのか、わたしはざわつきに近づく。


「どうしたの?」


 ざわつきの中の一人の女子に話しかけた。


「あ、片原さん。ちょうどよかった、お客さんだよ」


 彼女はドアの先の来客を示す。

 そこにいたのは、安房さんだった。


「や、来たよ。片原さん」


 いつもの笑顔を浴びせてくる。

 やっぱ眩しい。

 少し目を逸らしながら、答える。


「安房さん、何か用?」

「いや、用はないよ。ただ、一緒に帰りたいだけだよ」


 手を取られる。


「さあ、一緒に帰ろう。片原さん」

「う、うん」


 その眩しさにわたしは黙って頷いた。

 

 

 

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