EP5 お誘い難易度が高すぎる!
今日も、わたしたちは同じように帰路に着いていた。
結局昨日は大して話せずにお別れになってしまった。
その轍を二度踏むような、愚か者ではないのは、この沙楽!
ちゃんと、仕込んできたのだ。
わたしはスマホを覗き込む。
画面の中にはマップ。
――前日、自分の部屋。
「あー、うまく話せなかった!」
わたしは勢いなくベッドに倒れ込む。
『友達』、になったんだからちゃんと話さないとじゃん。
現に楓とは普通に話せてるじゃん。
じゃあなんで蒼園さんとは話せないの?
ベッドの上で右往左往。
五分くらい転がっても、特に思い当たるようなことはなかった。
だとしても、この状況を打開しないと。
このままわたしと蒼園さんの間が無言だと、楓も気まずい思いをしちゃう。
打開策……うーん……。
そうだ。楓とは、なんで話せるようになったんだっけ?
ラインの履歴を遡ると、そこにはこんなやりとりがあった。
かえ『週末、駅前のパンケーキ屋さん行かない? 結構人気らしくて、あたし気になってるんだよねぇ〜』
下には可愛らしい、猫の『おねがいっ』『チラッチラッ』、二つのスタンプ。
わたし『いいね、行こっか』
……これだ!
確かあのパンケーキ屋が異常に美味しくて、そこから不思議と会話が弾んだはず……。
そっか、あのパンケーキ屋に行こう。
ベッドから立ち上がる。その姿は自由の女神より凛々しいこと間違いなし(?)
マップで何度か調べて場所も営業時間も完璧だ。
あとは、蒼園さんにラインで送るだけ。
なんだけど……。
「お、押せない……」
わたしの手は頑なに送信ボタンを押すことを拒否する。なぜだ、なぜなんだ沙楽!?
自由の女神こと片原沙楽は崩壊し、再びベッドに倒れ込んだ。
――そして、今に至る。
わたしたちの間には昨日と変わらない沈黙が流れる。
沈黙は金とか言った人誰だよ。ちょっと苦しいじゃないか。
ゆっくりとした歩調の中、話の切り出し方に困っている人、約一名。
スマホを出したりしまったりする動きは、わたしを不審者に相当させる。
これ、やばい。
どうやって話せばいいのか分からない。
蒼園さんの綺麗な横顔をチラチラと見るとたまに目が合ったり。
合うとお互い気まずくなっちゃうのか、自然と逸らしてしまう。
時間は無常にも過ぎ、いつの間にか駅に着いてしまった。
「じゃ、じゃあまた明日ね」
蒼園さんに向かって手を振る。蒼園さんは手を振り返し、わたしに背を向ける。
結局、言えなかったな。小さく拳を握る。
わたし、大事なところではいつもこう。
やろうとしたこと、全部中途半端になっちゃう。
「ね、ねぇ、沙楽」
「は、はい」
わたしはビックリして腕を大きく広げる。
目の前には蒼園さん。
頬を膨らまして、不満げ。
透き通るような白髪も今はどこか澱んでいるようにすら見える。
「どうしたの、蒼園さん」
「どうしたのって、こっちのセリフだよ。沙楽。何か言いたいことがあるん……でしょ?」
途中で不安になったのか、蒼園さんの声は尻すぼみに小さくなっていく。
でも、図星だ。
観念して、計画を伝える。
「はぁ、バレちゃってたか……。……実はね、蒼園さんとパンケーキ屋に行きたいなって」
そういうと、蒼園さんは固まった。
やばい、嫌だったかな。
「あ、嫌なら、断って、いいからね……」
間違えただろうか、変なこと、言っちゃっただろうか。
不安が過ぎる中、それは杞憂だと、蒼園さんは教えてくれた。
その顔は、満面の笑みで埋め尽くされていた。
「嫌なんかじゃ、ない。すっごく嬉しい」
わたしは、この時思った。蒼園さん、すっごい可愛い、と。
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