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EP3 翌日にも水溜りは心に残る

 衝撃の告白を受けた翌日、お昼を食べる手は鈍化していた。


「おーい、沙楽(さら)ぁー? 何急に固まっちゃってるのさ」


 (かえで)の手がわたしの視界を上下する。


「あ、ごめん。ぼーっとしちゃってた」

「もー、そのタコさんウインナー食べちゃうところだったよぉー」


 楓はいい子だ。わたしと一緒にご飯を食べてくれるし、ノートも写させてくれる。

 いい子といえば……わたしは蒼園(あおぞの)さんの方をチラッと見た。何人かでお昼を食べている中、蒼園さんの手は全くと言っていい程動いていなかった。そんな風に蒼園さんの様子をチラチラと見ていると、うっかり目があってしまった。


「あっ……」


 蒼園さんはサッと手で自らの顔を覆い、わたしからの視線を遮った。

 わたしは大して気にすることなく、楓の方を向き直した。


 ――嘘だ。


 めっちゃ気になる。なんでだろう。振ったのが心残りなのかなぁ、いやでもなぁ、結構強引で唐突だったし、蒼園さんが悪いよね。

 胸の奥の方にゾワゾワと感触の悪いものを感じる。


 ――蒼園さんのこと、気になってる?


 そうかもしれない、だけどそれは蒼園さんが美人だから。好きだから、とか。そういうのではない、断じてね!


 気づけばわたしは放課後、蒼園さんと校舎裏にいた。


 わたしの行動力は時に恐ろしい。自覚はあるが、動いてしまっては止まらないのだ。


「それで……どうかしたの」


 蒼園さんは手をモジモジさせながら、詰まる言葉を押し出していた。


「そうだね……これからの、わたしたちの関係について、話したいなって思って」


 わたしたちの間には沈黙が流れる。蒼園さんは俯いていながらも、顔を少しばかり紅潮させている。沈黙は肌を刺すように痛いが、それも長くは続かない。

 わたしは沈黙を割き、本題に移る。


「まずは、ごめんなさい。蒼園さんとは、付き合えません」


 蒼園さんは言葉を発さないものの、明らかに肩を落として落胆していた。ここまでは想定通り、次の言葉は彼女にどういう反応をされるか分からないが……ええい、ままよ!


「その上で、蒼園さんとの付き合いはしたいです。『お友達』として。どう、でしょうか?」


 咄嗟に蒼園さんから目を逸らしてしまった。ちょっと強欲だっただろうか。恐る恐る、蒼園さんの反応を伺うと……蒼園さんの目は輝いていた。キラッキラに。太陽と大差ないくらい、眩しい。

 だが、サッと心配そうな顔ぶりに変わり、口を開く。


「ほ、本当にいいの? 私、急にこ、告白なんてしちゃって、迷惑掛けちゃったけど……」

「いいんです、そうしたいなって。わたしが思ったんで」


 そういうと、蒼園さんは微笑み、こう言った。


「へへ、じゃあよろしくね。沙楽」

「よろしく、蒼園さん」

 

 

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