表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/7

EP1 彼女を名乗られた日

 わたしのクラスには美少女がいる。その名は蒼園(あおぞの)華那(かな)。その彼女と、わたしは見つめ合っている。

 何も告げない碧眼に引き出されるように口を開く。

 

「ど、どうしたの? 蒼園さん」


 しおりを挟む暇もなく文庫本を閉じた。

 蒼園さんは何度も確かめる様に、わたしをジロジロと見回す。わたし、なんかしちゃったかな。額から冷や汗が滲んでくる。


 蒼園さんはそんなわたしの様子は気にも止めず、その白く華奢な手でわたしの手を取る。

 そして、再度目を見つめ合い、蒼園さんは口を開く。


沙楽(さら)、今日からあなたは私の彼女よ」


「へ?」


 言い終えた蒼園さんは目を逸らし、頬を紅潮させる。

 わたしの手を握る力は弱くなるどころか少し強くなる。


 ――なんで、なんで!?


 ――遡ること、一ヶ月。


 初めての高校の教室。何もかもが新しい中、わたしは友達作りに励んでいた。

 みんなに声を掛けていく中、一人だけ声を掛けられなかった子がいた。

 透き通るような白髪に海より青い碧眼。

 明らかに空気の違う美少女。

 彼女の周りにはいつの間にか男女多くの人が集まっていて、到底話しかけられない雰囲気が出来ていた。

 まあ、後でいっかと思いながら、席についた。


 ――回想終わり!


 ……と、何一つ心辺りがないのだ。

 入学したてのときに挨拶することすらなく、蒼園さんとはそれ以外に大した接点もない。あ、わたしの名前知ってくれてたんだ、くらいの距離間だ。

 それがどうして、なぜ!?

『今日から私の彼女よ』?

 聞き間違えだろうか、そうだ、聞き間違えに違いない。わたしは蒼園さんに聞き返す。


「えーっと、ごめん、よく聞こえなかったっ。もう一回言ってくれる?」


 それを聞いた蒼園さんはハッと目を大きくした後、目を潤ませ更に頬を赤らめた。

 彼女は小声で告げる。


「あなたって、結構欲張りさんなのね……。でもいいわ、もう一回言ってあげる。沙楽、あなたは私の彼女よ。よろしくね」


 おっと、聞き間違えではなかったようだ。

 わたしは驚きによって、椅子からずり落ちる。

 しかし、わたしの体は床につくことはなかった。蒼園さんの両手にしっかりと支えられていたからだった。


「だ、大丈夫!? 沙楽、怪我はない?」


 蒼園さんは目の色を変えてわたしの体を引き起こす。体をじっくりと見回されながらわたしは棒立ちする。


「うん、とりあえずは怪我はなさそう。よかったわ」


 ふーとため息を吐く蒼園さん。

 蒼園さん、こんなに表情豊かだったんだ。

 わたしは蒼園さんの新たな一面を知れたような気がした。

 いつも凛としているところしか見た事がなかった。

 そんな蒼園さんは私に微笑みを向けてくる。


「じゃあ、これからよろしくね。彼女の沙楽!」

「ごめんなさい、付き合えません」


 即座に頭を下げる。

 わたしたちの間に確かな沈黙が広がった。


 前からは蒼園さんの声がする。


「……だいじょうぶ、だいじょうぶ……」


 その声はか細く、震えていた。

 

 

 

目指せ毎日投稿!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ