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第4話 スキルの獲得、そして異世界へ

「セラちゃん! 着替え終わったよ」


「…………へぇ~、朝霧くんってスラっとしてるから似合うんじゃないかと思ってたけど、なかなか様になってるわね」


「あざっす。その言葉生まれ変わっても忘れません」


「いやいや大げさすぎでしょ。それよりもサイズとかは大丈夫?」


「装備は問題ないんだけど、こいつの長さをもう少し長くできるかな?」


「えーっとこれでどう?」


「おお! ありがてぇ! これでジャストサイズだよ」


 俺のそんな細かな要望通りに、セラちゃんは武器の長さを調節してくれた。

 こいつはこれから一週間お世話になるであろう大事な相棒だ。できる限り万全な状態にして望みたかったので助かった。


「ほんとにこの武器でいいのね? 初心者にはかなり扱いづらいと思うけど……」


「セラちゃんは心配性だな。むしろこいつじゃなきゃダメなんだよ」


「ふ~ん、何か考えがあるならいいけど。じゃあ次は『スキル』ね」


 そう言って彼女は空間魔法を使って、二つの小瓶を取り出す。

 瓶の形状はそれぞれ違うがどちらも綺麗な装飾がほどこされていて、見た目からかなりの高級感をかもしし出している。

 そして小瓶の中には片方は発色の良いオレンジ色、もう片方は少し濁った黄緑色の液体が入っていた。


「スキルは資料の説明にある通り、魔法とはまた違った特殊な能力のことなの」


「魔法よりも基本的には強力なんだっけ?」


「そうよ。スキルは魔法みたいに魔力を必要とはしないし、回数制限のないものなら無制限に使用することもできる。けど――」


 セラちゃんはそこでまで話した後、俺の気を引き締めさせるように真剣な表情に切り替えて説明を続ける。


「スキルには習得できる量と質に上限があるの。質の低いスキルならある程度の量を手に入れることができるし、質の高い強力なスキルの場合はそもそも人によっては習得すること自体が不可能よ」


「ちなみに俺のスキルの許容量って低いの?」


「いいえ。朝霧くんのスキルの許容量は極めて高いわ」


「そうなんだ。二つのスキルで限界みたいだったから少ないのかと思ってたよ」


「スキルの許容量はその存在の魂の強さとも言われていて、転移者は基本的に通常の人よりもそれが高いの。けど、あなたの場合はその中でも特別ね」


「じゃあその俺の魂でも二つが上限ってことは、この二つのスキルはかなり強力ってことか」


 そう説明を聞き終えた俺は、目の前に浮いていた小瓶の片方――オレンジ色の液体が入っている方を手に取った。

 そして、その中身を軽く揺らしながらゆっくりとふたを外していく。

 どうやらこれを飲み干すことでスキルが手に入るみたいだけど、ちょっと味が心配だ……。

 おっ! でも意外に香りはフルーツみたいで悪くないな。


「フフッ大丈夫。味も悪くないはず」


「うんっ! 確かに美味い。これ結構イケるよ!」


「でしょ。それにこれで朝霧くんはスキル――『神速充電しんそくじゅうでん』を獲得したはずよ」


 スキル――『神速充電しんそくじゅうでん』。

 それは俺が選択した一つ目のスキルだ。

 主な効果はシンプルで、体力などの回復スピードを極限まで高めるというもの。

 その回復スピードの速さから並大抵の行動では疲労感自体を感じなくなり、睡眠もほぼ必要なくなるらしい。


 つまり、このスキルがあればタイムリミットまでの七日間を休みなくフルで魔王攻略にてることができる。

 それは、時間に限りがある俺にとって重要な要素になると思ったからこのスキルを選んだ。


「次はこっちだな」


 続けて、もう片方の黄緑色の液体が入った小瓶の蓋も開ける。

 先ほどとは違い少し中身がドロッとしているが、今度は躊躇ちゅうちょなく喉に流し込む。


「う~んいい感じの苦み。こっちは抹茶に近い感じかな」


「そっちはスキル――『屠龍絶技とりゅうのぜつぎ』ね」


 そして、二つ目に選んだのがスキル――『屠龍絶技とりゅうのぜつぎ』。

 このスキルの効果は、あらゆる【技】を決めるごとにその熟練度に応じて【技】を大幅に強化、さらにはそれ自体を【進化】させていくことができるというものだ。


 要するに刀を使った技――居合斬りを例にした場合。

 居合斬りを決めるたびにその熟練度に応じて威力や速度が強化される。

 そして一定の経験値を超えるとその技自体が進化し、より強力な攻撃が可能になるといった感じだ。


 当たり前だけど異世界に行って魔王を倒す以上、戦いは絶対に避けられない。

 そこで俺が戦闘を行う上でメインスキルとして選んだのが、この『屠龍絶技』だった。


「――よし。ぱっと見の変化はないけど、これでスキルの方も大丈夫かな」


「うんうん。しっかりスキルは獲得してるわね」


「セラちゃん! そんな熱い眼差しで俺を――」


「いや、鑑定系のスキルで朝霧くんのスキルを見てるだけだから勘違いしないでよ」



 そのあとも俺はセラちゃんから言語や転移先の説明を受ける。

 言語は『大天使の加護』のおかげで、全て自動翻訳してもらえるらしいので非常に助かった。

 何年も授業を受けてる英語ですらまともに会話ができないのだ。

 そんな普通の学生の俺にとって異世界語なんてハードルが高過ぎるからな。


「じゃあさっきも言ったけど、まずは王国の王城に転移するはずだから」


「世界が滅亡の危機に瀕するとき、神の使いによって異界の勇者が召喚される――みたいな設定なんだっけ?」


「まあだいたいそんな感じね」


 そしていよいよ異世界へ行くための準備が整った。

 相変わらず目の前の天使様は心配げな表情だ。

 さっきも言ったけど、セラちゃんはかなりの心配性っぽいな。

 異世界に行くとはいっても最長で七日間だけなのに、何をそんなに心配しているのか……。

 いや、なるほど。やっぱり口では幼馴染契約が嫌とは言いつつも、俺が魔王を制限時間内に倒してちゃんと条件を達成できるかを心配して――


「――全くそんなことないから安心して!」


「う~ん残念。それにしてもセラちゃんだけが思考を読めるってのはフェアじゃないよな~」


「ほんとに人が心配してるのに最後まで軽い調子で……ほら、転移の準備ができたわよ」


「えっ……もしかしてこの中に入る感じ?」


「そうよ。私の華麗な空間魔法で一瞬なんだから」


「え~でもこれ便器みたいじゃ――」


「――はい! 行ってらっしゃい!!」


 そうしてセラちゃんに無理やり押し込まれる形で、俺は勇者として異世界に転移したのだった。

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