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柔道着の代わりに、愛を着てみようか? 25 (season3)

朝の光がカーテンの隙間から差し込み、埃を照らす土曜日の午前。以前ならミンジェの笑い声とともにパンケーキを焼く匂いで始まっていた週末の朝は、今や全く異なる風景になっていた。時は流れ、高校生になったミンジェは、ひょろりと背が伸び、制服の代わりに楽なトレーニングウェア姿で食卓に座り、シリアルを牛乳に浸して食べながらスマートフォンの画面から目を離せずにいた。耳元には白いワイヤレスイヤホンが差し込まれ、何を考えているのか、どんな音楽を聴いているのか窺い知ることはできなかった。


「息子よ、食事中くらいスマホを置かないか?」


キッチンでコーヒーを淹れていたジンスが、柔らかいが断固とした声で言った。白髪がちらほらと増えたが、相変わらず知的で端正な姿の彼は、今や大学病院の外科で尊敬を集める中堅教授になっていた。


ミンジェは一瞬、イヤホンの片方を外して無造作に答えた。


「はい、もうすぐ食べ終わります」


そして再びスマートフォンに視線を戻した。短くなった返事、どこか距離を置くような態度。思春期というトンネルを通過している息子の変化は、時には自然に、時には少し寂しく、ヒョヌとジンスの心に響いた。


「今日の午後、父さんと一緒に運動でもするか? 久しぶりにキャッチボールとか」


ジョギングを終えて戻り、タオルで汗を拭いていたヒョヌが、冷蔵庫から水を取り出して飲みながら提案した。引退後、少年クラブを成功裏に運営し、地域社会でも信望の厚い指導者となった彼は、依然として運動で鍛えられた健康な体と肯定的なエネルギーを維持していた。しかし、ミンジェの返事はつれなかった。


「あー……今日は友達と約束があるんだ。ネットカフェに行くことにしたから」


ミンジェは父と目も合わせずに答えた。


「ネットカフェ?」


ヒョヌの眉間にわずかな皺が寄った。


「週末なのに……もっと活動的なことをしたほうが良くないか? 父さんのクラブに来て、練習してる弟たちの面倒を見てやるとか……」


「いいですよ。僕が柔道を面白くないと思ってるの、知ってるでしょ」


ミンジェは少し苛立ちの混じった声で答え、食べ終えたシリアルの器をシンクに置いて、さっさと自分の部屋に入ってしまった。「バタン」と閉まるドアの音が、リビングの静寂を切り裂いた。


ヒョヌはしばらく硬い表情で閉まったドアを見つめていたが、やがて溜息をついた。ジンスはそんなヒョヌの肩を軽く叩きながら言った。


「そんなに落ち込まないで。最近の子はみんなあんなものだよ。友達とつるみたい年頃なんだから」


「でも……息子と一緒に汗を流して運動するのが俺のロマンだったんだが……」


ヒョヌの声には未練が滲んでいた。


「ミンジェは俺とは全く違う道を行くつもりらしいな」


「違う道なら、それでいいじゃないか。ミンジェが幸せならそれで。僕たちがすべきことは、あの子が自分で道を見つけられるように信じて見守ってあげることじゃないかな? もちろん、たまには小言も言いながらね」


ジンスの慰めに、ヒョヌはふっと笑ってコーヒーを受け取った。そうだ、ジンスの言う通り、子どもは子どもの人生を歩まねばならない。自分たちの期待や願いを強要することはできない相談だった。


午後になり、友達に会いに出かけるミンジェの後ろ姿を見ながら、ヒョヌとジンスはしばし見つめ合った。すっかり大きくなった息子の背中を頼もしく思いながらも、どこか遠くに感じてしまうのは仕方のないことだった。


「ミンジェ……最近、学校では何事もないんだろうな?」


ヒョヌが心配そうに尋ねた。


「さあね……聞いても大丈夫としか言わないから。でも、表情がそれほど暗いわけじゃないし、大きく心配することはないと思うよ。もう少し信じて待ってみよう。必要になれば向こうから話してくるはずだ」


ジンスは努めて平然と言ったが、その瞳にも息子への懸念が宿っていた。


その日の午後、ヒョヌは柔道クラブで子どもたちを指導しながら、しばしミンジェへの心配を忘れようと努めた。しかし、マットの上で玉のような汗を流す子どもたちを見るたびに、自分とは違う道を行こうとする息子の姿が思い浮かび、心の片隅が空虚だった。ジンスは溜まっていた研究論文を検討しながら複雑な頭の中を整理しようとしたが、何度も閉ざされたミンジェの部屋のドアと、ヒョヌの寂しげな表情がちらついた。


夕食の時間、三人は再び食卓に向かい合って座った。気まずい沈黙を破り、先に口を開いたのはジンスだった。


「ミンジェ、来週末……久しぶりにパパたちとキャンプに行かないか? 前に行ったあの湖畔のキャンプ場を予約しておいたんだ」


ミンジェは少し躊躇っているようだった。


「うーん……友達と約束がなければ……」


「友達が大事なのは分かるが、たまにはパパたちとも遊んでくれよ、息子よ」


ヒョヌがいたずらっぽく咎めた。


「分かりました。友達に一度聞いてみます」


ミンジェは気乗りしない返事だったが、表情はそれほど嫌がっていないようだった。


食事を終えてそれぞれの時間を過ごしていた時、ミンジェがリビングのソファに座っているヒョヌとジンスに歩み寄ってきた。手にはくしゃくしゃになった一枚の紙が握られていた。


「あの……パパたち……」


ミンジェが躊躇いながら紙を差し出した。


「学校の美術の時間に描いたんだけど……別に、大したものじゃ……」


ヒョヌとジンスが受け取った紙には、かなり繊細な筆致で描かれた風景画があった。夕焼けに染まる川辺を背景に、三人が並んで座り、互いに寄り添っている後ろ姿だった。絵の中には顔の表情は描かれていなかったが、温かく平和な雰囲気がそのまま伝わってきた。


「わあ……ミンジェ、これお前が描いたのか?」


ヒョヌが感嘆して尋ねた。


「本当に上手だね、ミンジェ! 色使いもすごく綺麗だし……雰囲気が本当に温かいよ」


ジンスも心から褒めた。


ミンジェはパパたちの称賛に、頬を少し赤らめた。


「……美術の先生が……僕に絵の素質があるみたいだって……描き続けてみなさいって言われたんです」


「本当に?」


ヒョヌとジンスは驚いて顔を見合わせた。ミンジェが絵に才能があるとは、思いもよらなかった部分だった。


「それで……僕……美術の塾とか、通ってみてもいいですか?」


ミンジェが勇気を出して尋ねた。


その瞬間、ヒョヌとジンスは悟った。息子は自分たちの知らない間に、自分なりの夢と関心事を育んでいたのだということを。柔道でも勉強でもなく、絵という新しい世界に心を寄せていたのだということを。


「もちろんだ! 当たり前じゃないか!」


ヒョヌが迷いなく答えた。彼の声には、息子への支持と応援が溢れていた。


「息子がやりたいことなら、パパたちは何だって応援するよ! 早速明日からでも調べてみようか?」


「本当? いいの?」


ミンジェの顔に活気が戻った。


「ああ。その代わり……絵を一生懸命習う分、学校の勉強も疎かにしちゃダメだぞ? それから時々、父さんとキャッチボールもしてくれよ?」


ジンスが笑いながら条件を出した。


「はい! 約束します!」


ミンジェは晴れやかに笑い、二人のパパをぎゅっと抱きしめた。


その夜、眠りについたミンジェの部屋を出て、ヒョヌとジンスはリビングに座り静かに語り合った。


「ミンジェに絵の素質があるなんて、本当に知らなかったよ」


ヒョヌが言った。


「俺が自分の考えばかり押し付けようとしていたんじゃないかと思って……申し訳なくなるな」


「いいや。あなたが寂しく思う気持ちも当然のことだよ」


ジンスがヒョヌの手を握りながら言った。


「大切なのは、今からでも僕たちがミンジェの気持ちを知ることができたし、あの子の夢を支えてあげられるようになったということじゃないか。これからミンジェが絵を通じてどんなに素敵な世界を広げていくか……楽しみじゃないか?」


「ああ、楽しみだ」


ヒョヌは心から微笑んだ。息子が自分とは違う道を歩むことが、もはや寂しくは感じられなかった。むしろ、息子が自ら好きなものを見つけ、夢に向かって進もうとする姿が頼もしく、誇らしかった。


17歳。ミンジェにとっても、そしてヒョヌとジンスにとっても、新しい風が吹き始めていた。思春期の混乱やコミュニケーションの難しさの中でも、互いへの変わらぬ愛と信頼は、依然として彼ら家族の最も強固な根幹となっていた。彼らはこれからまたどんな新しい変化や挑戦に向き合うことになるか分からなかったが、互いの手を携えて共に歩む限り、どんな風にも揺らぐことなく、彼らだけの美しい風景を描き続けていくことができるはずだった。


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