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柔道着の代わりに、愛を着てみようか? 13(Season2)

水曜日、木曜日の 連載。

柔道着の代わりに、愛を着てみようか? 13 (Season 2)



子どものはじけるような笑い声、忙しなく動き回る大人の足音、そして香ばしいトーストの匂い。早朝、ヒョヌとジンスの家は、いつもと変わらず活気と温かな空気に満ちていた。しかし、今日はいつもより少し特別な日だ。愛する息子、ミンジェがいよいよ小学校に入学する日なのだ。


「パパ!僕のカバン見なかった?青い恐竜の絵が描いてあるやつ!今日、絶対持っていかなきゃいけないのに!」


少し上気した顔のミンジェが、靴下を履きながらリビングを見渡した。いつの間にかすくすくと育ち、制服風の端正な紺色のジャケットとズボンに身を包んだ姿はどこか頼もしい。だが、その澄んだ瞳には、小学校という新しい世界へのときめきと、わずかな緊張が入り混じっていた。


「こらこら、昨日パパと一緒に準備したじゃないか。ほら、食卓の上にあるよ、息子よ。」


キッチンでミンジェのお弁当箱に丁寧に果物を詰めていたジンスが、食卓の上の青いカバンを指差して優しく言った。白いシャツにきっちりとネクタイを締めた彼の姿からは、今や外科専門医としての貫禄が漂っているが、ミンジェに向ける眼差しだけは、世界中の誰よりも優しい父親そのものだった。


「ほら、今日のお弁当はミンジェの大好きな稲荷寿司とミニトンカツだよ。水筒と筆箱もしっかり入れて。学校に行ったら先生のお話をよく聞いて、お友達と仲良くするんだよ?分かった?」


「うん!ジンスパパ!」


ミンジェは元気よく返事をすると、玄関へ走っていきカバンを背負った。しかし、鏡に映った自分の姿を見つめ、思わず唇をぎゅっと結んだ。やはり、まだ何もかもが慣れず、少し不安なのだろう。


「うちの息子、初日から緊張しすぎじゃないか?」


シャワーを浴び終えたばかりのヒョヌが、濡れた髪を大きなタオルで拭きながらミンジェに近づいてきた。現役時代の鋭くストイックな面影は年月とともに和らいだが、広い肩幅と鍛え上げられた体格は相変わらずだ。彼はミンジェの前に自然にしゃがみ込み、視線を合わせた。


「学校に行けば楽しいことがたくさんあるぞ。新しい友達もできるし、幼稚園より不思議なこともたくさん教わる。もし何かあったり、困ったことがあったら、遠慮しないでいつでもパパたちに電話するんだ。いいか?パパたちは、いつもミンジェの味方だってことを忘れるなよ。」


ヒョヌ特有の頼もしく確信に満ちた声、そして温かくもいたずらっぽい瞳に、ミンジェはようやく緊張が解けたのか、はにかみながら力強く頷いた。


「うん、ヒョヌパパ!僕、頑張れるよ!」


ジンスはそんな二人の姿を、リビングの片隅から微笑ましく見守っていた。慌ただしくも愛おしい、三人の朝の風景。毎日繰り返される何気ない日常だが、この大切な瞬間が積み重なって、自分たちが夢見てきた「家族」の形が完成していくのだと、改めて胸が熱くなるのを感じた。


ミンジェを校門まで送り届け、少し悲壮な覚悟を決めながらも勇ましく歩いていく小さな後ろ姿をしばらく見送った後、ヒョヌとジンスはそれぞれの職場へと向かった。ヒョヌは引退後、最近任されるようになった地域の少年柔道クラブのコーチとして。ジンスはいつものように、慌ただしく緊迫した大学病院の外科医長として。彼らの一日は、それぞれの場所で始まった。


ヒョヌが到着した道場は、すでに白い道着を着た子どもたちの活気ある掛け声で溢れていた。小学生から中学生まで、様々な年齢の子どもたちが畳の上で転がり、跳ね、ぎこちない動作で受け身の練習をしていた。ヒョヌは畳の真ん中に立ち、一人ひとりの姿勢を細かく正し、時には自ら手本を見せながら熱心に指導した。


選手時代、ただ己の勝利と記録のために孤独に汗を流していた頃とは、全く違う種類の責任感とやりがいだった。子どもたちの目線に立って技術を説明し、彼らの小さな成長を共に喜ぶ過程は、彼に新しい人生の意味を与えてくれた。だが、時には思うように動いてくれない子どもたちや、結果を急ぐ保護者の対応に疲れを感じることもあった。「やはり……教えるということは、自分が戦うよりもずっと難しくて複雑だな」。彼は思わず苦笑いを浮かべた。しかし、子どもたちが汗を流しながら目を輝かせ、「コーチ!今の、上手くできた気がします!」と駆け寄ってくるとき、胸の奥から温かな何かがこみ上げてくるのを感じた。これこそが、自分の進むべき新しい道になるのかもしれないという予感が、少しずつ確信に変わりつつあった。


一方、ジンスは病院で息つく暇もない午前中を過ごしていた。外科医長に昇進してからというもの、責任を負うべき患者の数も事務作業も、以前とは比較にならないほど増えていた。朝から続く手術のスケジュールを調整し、後輩医師たちのカンファレンスを主宰して鋭い助言を与え、押し寄せる外来患者を診察しながら彼らの不安に寄り添った。


そんな忙しさの中でも、頭の片隅には朝のミンジェの緊張した顔や、新しい挑戦を始めたヒョヌの姿があった。「みんな上手くやってるかな。ミンジェは馴染めてるだろうか。ヒョヌはまたコーチングで苦労してないかな」。ふと心配が押し寄せたが、すぐに首を振って目の前のカルテに神経を集中させた。今は、自分の場所で最善を尽くすべき時だった。


昼休み、熱いコーヒーを飲みながら一息ついている隙に、ヒョヌに短いメッセージを送った。


『ミンジェ、学校行けたかな?あなたもコーチング、ファイティン!夜は美味しいもの食べよう。僕が奢るよ。』


すぐにヒョヌから返信が来た。彼らしい絵文字を添えて。


『心配するなよ、キム課長 (-■ㅂ■-) 息子は凛々しく入っていったぞ。お前も手術頑張れ。夜のメニューは俺が決める!愛してるよ♡』


短いメッセージだったが、そこに込められた馴染み深い体温とユーモアが、ジンスの疲れた心に小さな癒やしと笑顔を運んでくれた。


夜になり、三人は再び温かな明かりの灯る食卓を囲んだ。ヒョヌが予告していたメニューは、やはりミンジェの大好物である厚切りの手作りトンカツと、最近疲れ気味のジンスのために特別に用意した「あわびのスープ(全羅道風)」だった。


「それで、初登校を終えたイ・ミンジェさん!学校はどうだった?楽しかったか?友達はできた?」


ヒョヌが湯気の立つトンカツをナイフで食べやすく切りながら尋ねた。その手つきは、柔道の技と同じくらい鮮やかだった。


「うん!隣の席の子と一緒に絵を描いたよ!名前はカン・ジフン君。あと、給食が幼稚園よりずっと美味しかった!チキンが出たんだよ!でも……」


ミンジェは少しフォークを置いて淀むと、さっきより小さな声で付け加えた。


「休み時間に……あるお兄ちゃんが来て……僕に『どうしてパパが二人なの?』って聞いたんだ。」


その瞬間、ヒョヌとジンスの間に見えない緊張が走った。いつかは向き合うべき問いだとは分かっていたが、予想より早く訪れた現実に、二人は一瞬言葉を失った。ジンスは努めて平静を装いながら、慎重に口を開いた。彼の声は最大限、落ち着いていた。


「……そうだったんだ。それで……ミンジェは何て答えたの?」


「うーん……」


ミンジェは少し首をかしげたが、すぐに何でもないという風に、むしろ少し自慢げな表情で言った。


「ただ……『僕のパパたちは、他のパパたちより二倍かっこよくて力も強いんだよ!それに、僕のことを愛してくれるのも二倍なんだ!』って言ったの。」


ヒョヌとジンスは互いに目を見合わせ、思わず安堵のため息とともに温かな笑みを浮かべた。子どもは彼らが心配していたよりも、ずっと強く、賢く育っていた。


「わあ、最高の答えじゃないか!すごいぞ、我が息子!」


ヒョヌがミンジェの頭をわしゃわしゃと撫でながら褒めちぎった。その声には心からの感嘆と誇らしさが溢れていた。


「そうだよ!パパたちはミンジェのことを二倍、いや、百倍、千倍も愛しているからな!そのお兄ちゃんに、次また聞かれたらそう言ってやれ!」


「それに、ミンジェ。」


ジンスが優しい声で続けた。彼はミンジェの瞳を温かく見つめて言った。


「世界には、本当にいろいろな形の家族があるんだ。パパとママがいる家族もあれば、おじいちゃんやおばあちゃんと暮らしている家族もいるし、パパかママのどちらかと住んでいる家族もいる。そして僕たちのように、パパが二人いる家族もね。どんな形であれ、お互いを大切に想い、愛し合っていれば、それが世界で一番幸せな家族なんだ。だからミンジェは何も心配しなくていいし、恥ずかしがることもない。ミンジェは、世界で一番愛されている子なんだから。」


「うん!」


ミンジェはすっかり安心したようで、再び明るく笑って頷くと、トンカツを頬張り始めた。


夜が更け、パジャマに着替えたミンジェがうとうとしながら自分の部屋で眠りについた後、ヒョヌとジンスは久しぶりにリビングのソファで二人だけの時間を過ごした。ヒョヌは自然にジンスの肩に腕を回し、ジンスは待っていたかのように彼の広く逞しい胸に頭を預けた。窓の外には都市の夜景が宝石のように輝き、家の中には昼間の活気の代わりに、静かで穏やかな静寂が流れていた。


「今日のミンジェの答え……正直驚いたよ。心配してたけど、あんなに堂々としているなんてな。」


ヒョヌが低く、感心したような声で言った。


「本当だね。僕たちが先回りして心配しすぎていたのかも。」


ジンスも安堵のため息をつきながら同意した。


「でも……これから学校生活を送る中で、ああいう問いや視線にさらされることは増えるだろうね。僕たちがもっとしっかり支えて、傷つかないように育てていかなきゃ。」


「ああ、もちろんだ。そのためには俺たちがもっと強くならないとな。ミンジェがいつでも頼れる、世界一かっこいいパパたちでいようぜ。」


ヒョヌはジンスの肩を優しく抱き寄せた。その声には深い責任感と決意がこもっていた。


「お前も今日、大変だったろ?医長になってからさらに忙しそうだ。顔が少しやつれたんじゃないか?」


「少し……疲れたかな。」


ジンスは素直に打ち明けた。ヒョヌの前でだけは、強いふりをする必要はなかった。


「背負わなきゃいけないことも、気を使うことも増えて……まだ少し余裕がないんだ。でも……自分で選んだ道だし、その分やりがいもあるから。あなたのコーチングはどう?子どもたちを教えるの、想像以上にエネルギーを使うでしょう?」


「ああ、もう参ったよ。」


ヒョヌがわざとらしく溜息をついた。まるで愚痴のようだったが、本音だった。


「自分の体だけを管理して記録を気にしていた頃とは、次元が違う。子どもたちの心を掴むのが一番難しいんだ。でも……あいつらが目を輝かせて何かを学ぼうとしている姿や、『コーチのおかげで柔道が好きになりました!』なんて言われると……胸の奥から熱いものがこみ上げてくる。まだ手探りだけど、本気でやってみたいと思ってる。」


二人は互いの肩に寄り添い、それぞれの場所で抱えている新しい挑戦や悩み、そしてその中で感じる小さなやりがいを静かに分かった。派手なアドバイスや明確な解決策を提示し合うわけではなかったが、ただ互いの話に耳を傾け、頷き、温かな眼差しを交わすだけで、それは十分な癒やしと力になった。


「それでも僕たち……ちゃんとやれてるよね?」


ジンスがふと、少し不安げに尋ねた。父親として、夫として、医師として……完璧でありたいと願う心と、ままならない現実の狭間で感じる、拭いきれない疲れのせいだろう。


ヒョヌはジンスの心を見透かしたように、彼の手を自らの大きく温かな手で包み込んだ。


「ああ。俺たちは最高に上手くやってるさ。」


その声は低く落ち着いていたが、そこに含まれる確信は何よりも力強かった。


「完璧である必要はない。たまに失敗したっていいし、足りないところがあったっていい。大切なのは、俺たちがどれだけ互いを想い合っているか、そしてミンジェと一緒に今この瞬間を幸せにしようと努力し続けていることだろ?それだけで十分なんだよ、ジンス。俺の目には、お前が世界で一番かっこいいパパで、最高の医者で、そして……今でも俺をときめかせる、たった一人のパートナーだ。」


ヒョヌの心からの言葉に、ジンスはそっと目を閉じた。彼の言う通り、完璧でなくてもよかった。互いの欠点を責める代わりに温かく補い合い、肩を寄せて共に歩んでいくこと。それこそが、彼らが慈しんできた「家族」の真の姿だった。


新しい季節は、そうしてこの家族にも訪れていた。小学生になった息子、新しい挑戦を始めた夫、そしてより大きな責任を背負った自分。これからどんな風が吹き、どんな困難が待ち受けているかは分からなかったが、ジンスはもう怖くはなかった。そばには世界で一番頼もしく愛おしい二人の男、ヒョヌとミンジェがいるのだから。


その馴染み深くも常に新しい温もりの中で、彼は明日を生きる勇気を得ていた。彼らの物語は、今まさに、新しい一ページをめくろうとしていた。


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