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【第8話:権力の影】

ベルク――あの役人は、俺に一度恥をかかされた。

だが、そんな小物が簡単に引き下がるはずもない。



役所の会議室。

豪奢な机の上で、ベルクは顔を真っ赤にして叫んでいた。


「許せん! あの小僧、私を公衆の面前で愚弄した!

……庶民どもまで調子づいているではないか!」


同席していた別の役人が肩をすくめる。

「だが証拠もなく処罰するのは難しいぞ。かえって反発を招く」


すると、部屋の奥に座っていた初老の男が口を開いた。

低い声は、まるで蛇が這うようだった。


「……では、証拠を作ればいい」


ベルクが振り返る。

「課長……!」


「どうせ庶民の支持など、一過性のものだ。

小僧が“悪事を働いた”と噂を流し、帳簿を偽造し、証人を買収すればいい。

権力とはそういうものだ」


ベルクの目に陰険な光が宿る。

「……なるほど。ならば、奴を“犯罪者”にしてやりましょう」



その夜。

市場の倉庫で、俺の商会の物資に紛れて“密輸品”が仕込まれた。

酒に溺れた商人たちに金を渡し、「あの小僧がやっていた」と証言させる手筈も整えられる。


翌朝――。


「不正の証拠を見つけた!」

「この商会は密輸に関与している!」


ベルク率いる兵士たちが、俺の露店を包囲した。

庶民たちは驚愕の声を上げる。

「そんなはずない! あの人が悪いことをするはずが!」


だが兵士たちは冷酷に物資を取り上げ、証拠として突きつけた。



リオが絶望の表情を浮かべる。

「兄さん……! こんなの、罠だよ!」


俺は目を細め、落ち着いた声で答える。

「ああ、分かっている。奴らは“証拠を作った”……ならば、俺は“真実を暴く”だけだ」


ベルクが勝ち誇った笑みを浮かべる。

「ははは! 今度は逃げられんぞ、小僧!

お前は今日から、“密輸商人”として牢に入ってもらう!」



俺はゆっくりと周囲を見渡した。

集まった庶民の顔。仲間の不安。

そして、自分の中に燃え上がる怒りと冷静さ。


「いいだろう……ベルク。

お前の腐敗を、この町の誰もが分かる形で暴いてやる」


静かにそう告げた瞬間、群衆の中でざわめきが広がった。

戦いは、もう後戻りできない。

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