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【第7話:役人の嫌がらせ】

翌日。

市場に向かうと、俺の露店の前に兵士たちが立ちはだかっていた。


「本日より、この店は営業停止とする!」


突然の宣告に、リオが真っ青になる。

「ど、どうしてですか!? 兄さんは何も悪いことしてないのに!」


兵士は鼻で笑った。

「役所からの命令だ。理由は“安全上の問題”だとよ」



俺は静かに状況を観察した。

兵士の背後には、あの役人――ベルクと名乗った男の姿。

目が合った瞬間、奴は口の端を吊り上げる。


「小僧。お前のような無法商人を野放しにすれば、町の秩序が乱れる。

……だから、少し休んでもらう」


要するに、庶民の支持を削ぎ落とすための嫌がらせだ。



群衆がざわめき始める。

「なんでだ! この人は俺たちを助けてくれたのに!」

「役人が商売を潰すなんておかしいだろ!」


だが兵士たちが武器を構えると、庶民は押し黙った。

恐怖に勝てる者は少ない。


リオが震える声で俺に囁く。

「兄さん……どうするの?」


俺は深く息を吐き、笑みを浮かべた。

「……簡単な話だ。奴らの“穴”を突けばいい」



俺はベルクに向かって声を張った。

「営業停止だと? その命令書を見せてもらおうか」


ベルクの眉が動いた。

「な、何?」


「役所の正式な命令なら、必ず“署名と印章”があるはずだ。

まさか、口約束だけで兵を動かしたんじゃないだろうな?」


群衆がざわつく。

「そうだ! ちゃんとした命令書を見せろ!」

「法律を守るのはお前らの方だろ!」


ベルクの顔がみるみる赤くなる。

「ぐっ……!」



結局、命令書など存在しないことが露呈した。

兵士たちは困惑し、群衆の怒号が役人を包み込む。


「出て行け!」

「庶民を苦しめるな!」


ベルクは唇を噛みしめ、護衛とともに退散していった。



リオがぱあっと笑顔を見せる。

「兄さん、すごい! あんな人を言い負かしちゃうなんて!」


俺は肩をすくめた。

「権力に頼る奴は、必ずどこかに綻びがある。

……俺はただ、それを突いただけさ」


庶民たちの視線が、再び俺に集まる。

そこには畏敬と信頼の色が混じっていた。


こうして俺は、“役人の嫌がらせを退けた商人”として、さらに名を広めることとなった。


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