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【第6話:役人の影】

庶民の信頼を得た俺の小さな商会は、日ごとに繁盛していた。

リオもエリーも笑顔を取り戻し、仲間たちはやる気に満ちている。


だが――。

その裏で、ひとつの“視線”が俺に注がれていた。



「おい、お前……あの若造を知っているか?」

「ええ、塩の相場をひっくり返した商人ですね」


路地裏の酒場。

役人風の男たちがひそひそと話している。


「庶民の支持を集めている……面白くないな」

「商会連合からも苦情が来ています。

“あの小僧を放置すれば、既存の秩序が崩れる”と」


その目は、完全に“処分対象”を見るものだった。



数日後。

俺の露店の前に、豪奢な服を着た男が現れた。

護衛を連れ、威圧的な態度で言い放つ。


「貴様が最近噂の小僧か。役所に届け出もせず勝手に商いをするとは、大胆だな」


リオが慌てて口を開く。

「ちょ、ちょっと待ってください! 兄さんは何も悪いことしてません!」


だが役人は冷たく笑った。

「悪いかどうかを決めるのは、我々だ」



俺は一歩前に出て、男をまっすぐに見据えた。

「……なるほど。庶民を救うのがそんなに都合が悪いか」


男の顔が歪む。

「身の程を知れ! お前のような無名の商人が、我らの秩序を乱すなど――」


その言葉を遮り、俺は静かに告げた。

「秩序じゃない。腐敗だろう?」


周囲で立ち聞きしていた庶民たちが、ざわめき始める。

「そうだ! あの人は俺たちを助けてくれたんだ!」

「役人こそ、私腹を肥やしてるじゃないか!」


群衆の声に押され、役人は一瞬たじろぐ。


だが、その目にはまだ余裕があった。

「……よかろう。ならば正式に調べさせてもらう。お前の商いが本当に正しいのかどうか、な」


そう言い残し、役人は護衛を従えて立ち去った。



リオが不安げに俺を見上げる。

「兄さん……どうするんです? 本当に調べられたら……」


俺はニヤリと笑った。

「いいさ。正々堂々と受けて立つ。

……俺が本当に“尊厳ある商人”かどうか、奴らに思い知らせてやろう」


こうして――俺と役人との、最初の対立が幕を開けた。


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