【第4話:仲間との出会い】
市場での勝利から数日後。
俺は小さな露店を構え、安定した利益を出し始めていた。
ある日のこと。
「す、すみません! お金は必ず返しますから!」
悲鳴のような声に振り向くと、路地の片隅で、ひとりの少年が大柄な男に襟首をつかまれていた。
年の頃は十二、三。痩せこけ、服はボロボロ。
「ガキのくせに借金なんざするんじゃねえ!」
男は拳を振り上げる。
俺は思わず声を張った。
「待て!」
◇
事情を聞けば、少年は妹の薬代のために借金をしたらしい。
だが高額な利息をつけられ、返せるはずもなく追い込まれていた。
「金を持っていないやつは人間じゃねえんだよ!」
男は吐き捨てる。
俺の胸に、過去の記憶がよみがえる。
――富豪の屋敷で見てきた、金と権力で人の尊厳を踏みにじる光景。
「……違うな」
俺は一歩前に出て、男を睨んだ。
「金がなくても、人間の尊厳は奪えない。
だが、お前みたいな腐った商売人は……金を持っていても人間ですらない」
「な、にぃ!?」
◇
結局、俺は帳簿を見せつけ、男の貸付が法外であることを群衆に暴き出した。
周りから非難の声が上がり、男は慌てて逃げていった。
残された少年は、涙をこぼしながら頭を下げる。
「ありがとう……お兄さん。俺、リオって言います!」
そのとき、少女が駆け寄ってきた。
まだ小さな妹だ。病弱そうな顔に、それでも必死な笑みを浮かべている。
「お兄ちゃんを助けてくれて……ありがとうございます」
俺はふたりに微笑んだ。
「いいんだ。俺は、尊厳を大事にしたいだけだ」
こうして――俺は初めて、この異世界で仲間を得た。
リオと妹のエリー。
彼らはやがて、俺の商会の最初の仲間となる。