表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/53

【第1話:尊厳ある人間として生きたい】

気づけば、俺は空を見上げていた。

夜空を切り裂く流れ星がひとつ。


――金も地位も、もういらない。ただ、尊厳ある人間として生きたい。


思わずそう願っていた。


俺は富豪の家に生まれ、父も母も政治家とつながる人間だった。

豪華な屋敷、何不自由のない暮らし。

だが、その裏には、常に「権力」と「腐敗」がつきまとう。


金の力で人を支配し、尊厳を踏みにじる日々。

俺は、そんな世界に嫌気が差していた。


――だから願ったのだ。


翌朝、目を覚ますと、そこは見知らぬ石造りの天井だった。


「……どこだ、ここは?」


ベッドではなく、わらの上。高級家具もない。

窓から見えるのは、中世ヨーロッパのような街並み。

馬車が石畳を行き交い、露店の呼び込みの声が聞こえてくる。


――異世界、か。


驚きよりも、なぜか妙な清々しさがあった。

金も地位もない。だが俺は、ゼロからやり直せる。


ポケットを探ると、銅貨が数枚。

身なりは質素で、誰も俺を「御曹司」扱いはしない。


「いいじゃないか。ここでなら、本当に尊厳ある人間として生きられる」


そう思った瞬間、通りの露店が目に入った。

果物が積まれている。――だが、俺の目にはすぐにおかしな点が映る。


(仕入れ価格と売値がまるで合ってない。これじゃ赤字だろう?)


周囲の店をざっと見渡す。

……なるほど。価格競争に負けて、無理に値を下げているのだ。

だが別の街で仕入れれば、逆に利益を出せる。


「フッ……やはり、どこでも経済は同じか」


金はなくとも、俺には知識がある。

富豪の家で身につけた経済感覚と、現代世界の知恵。


ゼロからでもいい。

いや、ゼロだからこそ、尊厳を賭けて挑める。


俺は異世界で、初めての商売を始めることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ