概念の終わり
全てが回転し、溶け、混ざり、消えていった。
時間は粉末状になり、空間は液体の膜となり、存在は「やや焦げたパン粉」のように崩れ落ちた。
ムーンフィッシュ博士は、もはや博士であることさえ忘れかけていた。
ケルベロス・オルガンの音は音であることをやめ、香りであり、光であり、感触であり、ただのため息のように漂っていた。
マカロニ大尉のパスタは液状化し、宇宙の隙間に滲み込んでいた。
「ここは……どこだ……?」
誰の声か分からない、声の概念が問いかけた。
だが、それを聞き取る耳の概念はすでに存在を終えていた。
目の前に、何かが浮かんでいた。
それは形を持たず、色もなく、匂いもなく、ただ「これが概念だ」と訴えかけてくる気配だけがあった。
ムーンフィッシュ博士は気づいた。
「……これが、概念そのものなのか?」
だが、ナマズ・オブ・ザ・デッドの声が空間の隙間から響いた。
「違う。それは概念ですらない。
概念はすでに終わった。
今ここにあるのは――
概念が終わったという事実の影、
その影が残した残響、
そして残響の消えかけた余韻の破片、
さらにその破片を包む霧の夢の名残、
そしてその名残が語りたがっていたかもしれない言葉の幻影だ。」
博士は目を閉じた。
頭蓋の中のハムスターたちはすでに溶け、液体の「記憶の泡」となって漂っていた。
ケルベロスは歌わない。
マカロニ大尉は泣かない。
何も残っていない。
博士は、全てが終わった場所で、小さな声を漏らした。
「じゃあ……俺は……何だ?」
すると、どこからともなく、バターの香りが微かに漂った。
そして最後に、「概念の終わり」がこう呟いた。
「君は、何でもない。
だが、何でもないという概念も、今、終わった。」
完全なる終焉、そして永遠の余韻
全てが消えた。
言葉は崩れ、音は散り、光は消え、時間は溶け、存在は粉砕された。
ただ、バターの淡い香りだけが、宇宙の果てに薄く漂っていた。
それが、意味だったのかもしれない。
それすらも、今となっては分からない。




