脳内銀河崩壊 (挿絵有り)
「脳内銀河が崩壊を始めた……!」
ムーンフィッシュ博士は叫んだ。
彼の頭蓋の中、ハムスターたちが金属の鍵盤を叩きながら、何かの合唱を始めていた。
「酸素は裏切り者!酸素は裏切り者!」
壁一面に赤い文字が走り、意味のない詩が雪のように降り積もる。
「博士、冷静に!」
マカロニ大尉が手を伸ばす。だがその手はスパゲッティでできていて、触れるとアルデンテの弾力で弾かれてしまう。
「我々にはケルベロス・オルガンがいる!」
遠く、三つの口で不協和音を奏でるヤギ型の兵器が、青白い光を放って震えていた。
「未来は回転寿司のレーンに乗ってくる」
ケルベロスの声が響き、博士は一瞬立ち止まった。
「……それだ!」
ムーンフィッシュ博士は閃く。
「私たちは未来を回転させなければならない!」
彼はバスの運転席に飛び乗り、車内にいた全員に叫んだ。
「跳躍するぞ!シートベルトは意味がない!意味は味噌汁の中に沈んでいる!」
そしてアクセルを踏み込み、思考でできた銀河の回転寿司に飛び込んだ。
寿司の皿が回る中、博士たちは「意味の断片」を集めていく。
一皿目:「影は光の裏切りだ」
二皿目:「昨日の夢は他人のもの」
三皿目:「左耳で聞いた音は右足で歩く」
だが、寿司レーンの終着点には、ナマズ・オブ・ザ・デッドが待ち受けていた。
巨大なコーヒーサーバーの上に鎮座し、目を開けずにこう呟く。
「君たちは誰だ?」
「ここにいる理由は?」
「オムレツは真実の象徴だ。」
その言葉に、ケルベロスが震え、マカロニ大尉のパスタが茹であがり始める。
ムーンフィッシュ博士は震える手で、自分の頭蓋のハムスターたちを見つめた。
「……俺たちは誰だ?」
そのとき、脳内のハムスターが全員で叫んだ。
「意味は意味を持たないとき、もっとも意味を持つ!」
博士は大きく息を吸い込み、ナマズに向かって叫んだ。
「そうだ!俺たちは誰でもないし、どこにもいない!ただ、意味を探すために回転し続ける存在なんだ!」
ナマズは目を開き、にやりと笑った。
そして銀河は再び回り始めた。