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いつまでも隣に

作者: オウル

前作に登場したテネリアのお話です

設定はゆるっとしてます


 私はグレースビット王国の王弟の娘でただ今15歳。この国の貴族の子女のほとんどが通う学園の中等部3年生。もうすぐ高等部に進学し、半年後には16歳になる。そろそろ婚約話があってもおかしくないお年頃なんだけど、両親からも伯父様からも何も言われていないのでもしかして婚約の打診すらないのかしら…とちょっと落ち込んでる今日この頃。

 一応、周辺国に嫁ぐにしても国内に嫁ぐにしても恥ずかしくない程度の教養は身につけていると思う。明るいブロンドの髪も、青みの強い紫の瞳もお母様に似ていると言われる顔立ちも自分では気に入っているし、そう悪くはないと思うんだけどね…


 王家に生まれたからには政略で縁を結ぶ事もあるという事は理解している。そういう風に教育された訳ではないけど、お祖母様は帝国から輿入れされたし、大叔母様や叔母様は他国に嫁いでいるのを考えるといずれ私も他国に嫁ぐんだろうなぁと思っている。

 ただ一緒にいたいと思える方、思いを返していただける方がいいな…政略結婚だって幸せになりたいし。


 そんな事を考えていたら週末の王家全員での晩餐の時に伯父様から

「昨年までウチの学園に留学していたミリダスのローレン公子の事は覚えているかい?」

と聞かれた。ローレン様…第3王子のシリウス殿下と同学年だったから王城によく遊びに来ていたし、何回かお茶をご一緒したり、ミリダス国の事を教えていただいたりしたのでよく覚えていると答える。高等部に進学する時に帝国の学院に戻られたのよね…

「ローレン公子からテネリアに婚約の打診があった。他にもいくつかの国から打診はあるんだよ。でも実際に交流のあった公子がいいと思うんだがテネリアはどうだ?」

えーっ、婚約の打診があるなんて聞いておりませんでしたけど?

「打診だけなら生まれた時からあるよ。国内からも他国からもね」

そ、そうよね…一応王族の姫だもの。

「僕達が学院に留学している時も各国の人からテネリアの事聞かれたよ。ローレンはどっちかと言うとリーマスが買い物に付き合わせて知った感じだけど」

「ミリダスは青系の貴石の産地だから詳しいんだよ。テネリアの瞳の色はなかなか難しいから探すのに手伝ってもらったんだ」

お兄様がご迷惑をおかけしていたのね…だからなのかローレン様がプレゼントしてくれた物は私の瞳の色が多かった気がする…

「帝国の学院の休みに合わせて公子が訪問したいと言うから許可を出した。テネリアとの面会も希望されている。とりあえず会ってみるだけ会ってみなさい」

伯父様…いえ国王陛下から言われたらお会いするしかないですね。


 その夜自室で寝支度を終え、マアサの入れてくれたハーブティーを飲んでいるとお母様がいらした。

「夜遅くにごめんなさいね。少しいいかしら?」

なんだろう、さっきのお話の事?

「陛下はおっしゃらなかったけど、ローレン公子からの打診は1年前にもあったのよ。ただねぇ…お父様がまだ早いってゴネてしまって…テネリアには話してなかったの」

あらお父様ったら…行き遅れたらどうしてくれるのかしら?でも、ローレン様、キチンと考えてくださっていたのね。

「テネリアは今回のお話どう思っているの?確かに国としては良いご縁と思うんだけど、私達家族はテネリアが幸せである事を願っているの」

顔も知らない方に嫁ぐより、ローレン様がいいと思うので前向きに考えます、と答えるとお母様はふんわりと笑った。

「テネリアがいいと言ったらお父様は私がなんとかするわね」


 そして半月後、ローレン様がいらっしゃった。

 

 到着した日はシリウス殿下や学園の同窓生とお会いする予定があり、私との面会は翌日になった。

 王城の中庭に面したサロンでローレン様を待つ。今日はお気に入りの薄紫のドレスに、髪飾りはローレン様から頂いたものをつけるている。銀の花と葉の意匠に所々青と青みがかった紫の貴石が散りばめられたもの。

「お待たせしてしまったようですね。先程までシリウスとリーマスに捕まってしまっていて…」

ローレン様は銀髪が映える紺色のジャケット、薄紫のクラバット、カフスは私がお返しに贈った青い貴石がついたものをつけてくださっている。あら、なんだか色味が被っているような…

 2人とも着席するとマアサがお茶を入れてくれる。

「それ、着けて下さっているのですね」

ローレン様の視線が髪飾りを捉えている。

「はい、姫様のお気に入りで普段からよく着けていらっしゃいますよ」

マアサったら!可愛らしいけど少し大人っぽい意匠と色味でお気に入りなのは確かなんだけど、それを贈ってくれたお相手に伝えるのは…恥ずかしいじゃない!

ローレン様は思わず赤くなってしまった私に

「気に入って頂けたなら嬉しいです」

と微笑まれた。そして、後ろに控えている従者から包みを受け取りマアサに渡す。

「そちらは今の髪飾りに意匠を合わせてみたのです。気に入って頂けたなら嬉しいです」

マアサが開けてくれたビロードの箱には青い貴石のお花と銀の葉に雫のように青みの紫の貴石が添えられた豪奢な髪飾りがあった。

「ミリダスは小国ですが、帝国の庇護下にあり長閑で安心して暮らせる国です。留学中の交流でテネリア姫を好ましく思い、帰国の際に王弟殿下に婚約を申し入れました。その時は1年経っても気持ちが変わらなければ、国を通して正式な話を持ってくるように…とまぁお断りされてしまいました」

苦笑されながらローレン様が続ける。

「今回は父からも帝国の皇帝陛下からも許可を得て正式に申し入れさせていただきました。国王陛下と王弟殿下からは姫様のお気持ち次第と言われています。他に心を寄せる方が居なければ、私の隣に立つ事を考えてはもらえませんか?」

私のどこが良いのでしょう…ローレン様なら帝国の皇女様の降嫁も可能だと思うのですが…

「テネリア姫は王子殿下方と並び立つ将来を考えた事はありますか?」

ない、ですね。近過ぎて兄様としか思えません。殿下方も妹としかみてないと思います…

「私も同じです。幼馴染としては好ましく思いますが、並び立つ事は考えられませんでした。姫の事は学院に留学していたシリウス殿下やリーマス殿から聞いていて、お会いしてみたいと思いこちらの学園に留学する事にしました」

お兄様達、いったい何をローレン様に言ってたのかしら…

「大変お可愛いらしいエピソードをいくつか…実際お会いしてお話ししてみたら、聡明でお優しい素敵な女の子で…」

うぅ、褒めすぎです…

「貴女が隣に並び立ってくれたなら、これからの人生を幸多く過ごせるのではないかと思いました」

緊張されているのか、先程より固い表情のローレン様がなんだか可愛らしく思えて頬が緩む。両親と相談してからになるけれど、私は貴方の隣に立つ事ができたら嬉しく思いますと伝えると、ローレン様はパァっと破顔した。


 その夜、お父様とお母様にこのお話をお受けしたいと言うと、お父様は寂しそうに

「そうか…」

と言って眼を潤ませ、お母様にヨシヨシと頭を撫でられている。婚約してもすぐ嫁ぐ訳でもないのにね…


 翌日、両親と一緒にローレン様にお会いして正式にお受けする事をお伝えし、そのまま国王陛下と面会して婚約の書面を交わした。正式な発表は私の16歳を迎えてから、婚姻はローレン様が20歳になる年の初夏と決まった。

 ローレン様が帰国されるまでの間、王都の劇場にお芝居を見に行ったり、郊外の公園でピクニックをしたりと一緒の時間を過ごした。いろいろとお話してローレン様の為人を知り、ぼんやりとしていた並び立つ姿がはっきりとしてきた。ローレン様はいつもニコニコとされていて、シリウス殿下やお兄様に揶揄われても「婚約が決まったんだから嬉しいに決まっている」

と受け流している。そんな私達を見てため息をつくお父様…

「兄上は娘がいないから、私の気持ちはきっとわからないよ」

と陛下にまで八つ当たりして、とうとうお祖父様に

「私は2人の娘を嫁に出したんだ。もう決まった事でグズグズいつまでも言ってるんじゃない」

と叱られまたお母様に慰めてもらっている。

お母様と王妃様は婚約披露の準備を進めなきゃと慌しいけど楽しそう。

 10日ほど滞在してローレン様は帰国された。

「また長期休暇の時にこちらに参ります。それまでは手紙を書きます。姫も日常の些細な事でいいので手紙を下さい」

 

 それから手紙のやり取りをしたり、休暇の度に来てくれるローレン様とお出かけやお茶をして交流をはかった。帝国への留学はお父様の反対で断念したけど、代わりに何度かミリダスに赴き、お義父様・お義母様やお屋敷にお勤めしている使用人の方々とも交流する事ができた。お義母様からは

「そのまま嫁いでいらしても大丈夫よ。こちらの事も充分に学ばれているご様子。家内の事は嫁いでいらしてからゆっくりと、ね」

と言われて、ローレン様やお義母様にあちらこちらへ連れて行ってくださった。

 そうして過ごすうちにローレン様が隣にいる事にもすっかり慣れて、お互いの国に帰る時にはいつまでも一緒に居られたらいいのにとも思うようになった。ローレン様にそう伝えると

「私は最初から離れがたかったです。リアの気持ちも私に追いついてきたと考えても?」

と返された。ローレン様のお気持ちに追いついているかはわからないけど…そう言ってくれる事が嬉しかった。


 輿入れ前の春、幼馴染の2人の縁が結ばれた。外交官の娘として各国の慣習にも詳しいジュリアを連れて行く事は叶わなかったけど、従兄弟に一生恨まれるのは嫌だったから仕方ない。ジュリアにはお互いの人柄をよく知る相手から望まれて嫁ぐのは幸せな事よと言ったら

「姉様も幸せになる為に嫁ぐんですよね?」

そうね、私はもちろん幸せだし、ローレン様の事も幸せにして差し上げたいの。


 最後の夜会、タイトなスケジュールの中少しだけ幼馴染達へプレゼントを渡す時間を捻出した。みんなには結婚式で使う真珠のアクセサリーを用意しておいた。ジュリア達もプレゼントを用意してくれていたけど、それぞれにお礼と感謝の言葉を交わす時間はなかった。みんなも幸せにね…と言うのが精一杯で、慌しく会場に戻る。ご挨拶やお祝いをいただいたり、久しぶりに会う友人や幼馴染達と話したりしているうちに夜会も終盤となった。

 ラストダンスはお父様と。最後くらいは笑顔で送り出して下さいねと言ったおいたので、お互いようやく笑顔に見えるかなという顔で踊る。

「テネリアとのダンスもこれで最後と思うと寂しいものだね…」

ダンスの最中にそんな事言われたら…泣いてしまうじゃないですか…後半はとても見られたダンスではなかったけど、この国最後のご挨拶はなんとか笑顔で締めくくった。


 翌日はお祖父様お祖母様や陛下のご家族に最後のご挨拶をし、午後からは家族でゆっくり過ごす。

 幼馴染達からのプレゼントは刺繍の得意なルナベルからは見事な刺繍のストールとお揃いのタイ、おしゃれ好きなフローラからは揃いの意匠のイヤリングとタイピン、ジュリアからは青い布貼りの文箱と色とりどりのレターセット…あぁ手紙書けって事ね。

 翌朝、王城で家族とお別れしミリダスへと向かう。半月後の結婚式までしばしのお別れ。お母様とお兄様は笑顔で、お父様はやっぱり泣いていた…


 結婚式を終えて公城のバルコニーで集まった公国の人々に手を振る。ようやく2人並び立つ事ができましたねとローレン様を見上げると、そこにはいつもの笑顔があった。

 これからいろいろな事があると思う。それでも、これからもずっと、いつまでも貴方の隣にいられますように…


 


 

 





 




 

最初は初恋は叶わず政略結婚する事になったけど幸せになってみせる〜みたいな感じを考えていたのですが、なぜかこうなりました。


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