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75、雪合戦の熱は積もる雪では冷めやらぬ

雪合戦中は小降りって感じだったけど、夕暮れになるとしんしんと雪が降りしきる。ドームの天井の穴から吹き込んだ雪が大通りに薄っすらと積もり、通りの両脇を賑やかす屋台村の熱気でのぼせないよう冷やしてくれる。


タマシティの彩色祭で出ていた屋台と違い、警戒区域内の隅っこならではの食材を使った料理が目を惹く。深未踏地の直ぐ側なだけあって、深い神秘の世界から漏れ込んだ濃厚な魔素が周辺の生態系に大きな影響を与えていた。


「ご主人様、雪合戦の配信を見ていましたよ。ええ、所詮モノでしかないバトロイドに参加権なんてありませんでしたから一人で寂しく、です。」


ブランさんがずっとボクを後ろから抱きすくめてくる。


「今日一日戦って思ったんですけど、やっぱりボク一人じゃ突進力というか。前衛が居ないと攻めきれない所が結構あって。ブランさんが居たらなって思う時が何度もありました。」


カネコさんと戦った時もブランさんが居ればエクエスを出さずに勝てたと思うし、アグニさんとも互角以上に戦えたかも。ボクの何気ない視線の先、タマさんは口から小さな爬虫類の揚がった足を覗かせつつ鼻歌を歌っている。


タマさんには‥まだ勝てないよね。何度か訓練用のシュミレーションルームで手合わせしたけど、いつも直ぐにボクが捕まっちゃって。抱き上げられて好きなだけ頬擦りくすぐりされて、惚けるまでおもちゃにされちゃう。ブランさんとミニフィーもボクが捕まってると攻撃しずらいし、ボク自身の自衛力をもっと上げないと。


「ラフィ〜、ほらアンタも串食べなさいよ。揚げトカゲ串。」


ツル状の植物に寄生され、体内に程よく根が張ったオオトカゲの揚げ串。ツルのほのかな苦味と、トカゲの肉厚で濃厚な肉の味がマッチしていて美味しい。もそっとボクが串を咥えたのと、ブランさんが串を頬張ったのは同時だった。双子みたいに動きがシンクロしてる。


「あっ、3人ッスか?こっちも休憩中ッスよ。」


「先輩は頻繁に何処かへ行って姿見えませんでしたけどね。」


組合警察の二人も合流してきた。アグニさんはルーフスさんの襲撃を受けた時にガガーランさんに抱えられて何処かへ行っちゃったし、リコリコさんも配信が終わったらボク達の時間を邪魔しないようにって別れた。ヒメコさんもナナフシさんに連れられて行っちゃった。


「ラフィ、ここに居たのか。」


あっ、イトウさんも来た。両手にビールと串を持ち、胸元で浮遊する食事台の上に焼きそばたこ焼きと定番の物を一揃え。


「満喫してますね。」


「偶にはな。胡蝶之夢での仕事は胡散臭い裏方仕事ばっかりで、君達と顔を合わす機会も無い。ルナも最近は随分と忙しそうにしていたぞ。」


ルナさんも最近ずっと見ていない。偶にスマイルでやり取りするけど、胡蝶之夢に居ないみたい。


「ラフィ助、あっちでビアガーデンやってるッスよ?」


「ラフィにはお酒は早いわよ。一人で行ってきなさいよ。」


誘い文句を黒い尻尾が跳ね除ける。


「ふん、祭りの屋台情報は把握済みだ。無駄なく回るべく祭りのしおりを作ったからデータを共有するぞ。」


ペポっと皆のスマイルにイトウさんからSmile形式のデータが送られてきた。スマイルの規格にぴったりなデータはアプリに取り込まれ、自動で祭りのしおりが展開する。って、50ページもあるの?!表紙も凝ったイラストだし。こんなに細部まで拘ったイラストを出力するのって相当大変そう。


前に脳波複写式のアプリ試してみたけど、頭の中で考えた通りのイラストがパッと出た時細部がぐちゃぐちゃで。結局一部分ずつ頭を捻って細かく複写するハメになって大変だったの覚えてる。AI修正試してもなんか思ったのと違う感じになるし、変にAI混ぜると余計に混乱して複写出来なくなっちゃう。


イトウさん、芸術家の才能があるのかも。凄いなぁ。


「じゃあこの30ページにある拘り陸ゲソ焼きを食べに行きたいッス。」


「私は45ページのホットチョコアイスが気になりますね。」


「当機は総当たりで全部。」


「アタシはオオオナガの卵焼きね。ラフィはどうすんの?」


「ボクはタマさんと同じものを。」


小さく口笛を吹いたタマさんの尻尾ねちっこくボクの首元を愛撫する。くすぐったいって。


「じゃあ一旦別れて好きな物を買い込んだら、胡蝶之夢前広場で落ち合いましょ。」


それぞれイトウさんのしおりを眺めながら、漂う匂いに食指を向けていく。イトウさんはビールを片手にグビグビ飲みながら回るつもりみたいだけど、しおりを作った本人は頭に全部内容が入っているからか足取りに迷いが無い。


ブランさんも屋台を全部回る勢いで行っちゃったし、タマさんと二人で混み合う大通りの端っこを歩いていた。と、ふと視界の隅に狐色のもふっが顔を出す。そして狐耳と尾を持つ和の着物姿の少女がボクを覗き込んできた。


「らふぃよ。久しぶりじゃのぉ。」


「ええと、タマモさん?」


そう。ノクターンでのタマさんの同僚。タマさんに付き添ってお仕事をしていたタマモさん。ボクよりちょっとだけ背丈が高い、可愛くもどこか妖艶な雰囲気の少女。少女と言っても姿見だけで、タマさんから聞いた話では相当長生きした年長者らしい。


「何よアンタ。」


「祭りの時くらい休業じゃ。妾もらふぃに癒されながら祭りを堪能したいのじゃ。」


愛嬌と気品を兼ね揃えた独特な声の抑揚、その言葉尻はそっと顔を寄せボクの耳元へ囁かれる。


「きゃあっ?!」


「んふふ、愛い反応じゃあ。」


そんなボクを片手で抱き寄せ、伸びた尻尾がタマモさんの額を突く。


「仕事は終わったんでしょうね?」


「もう終わっておるわ。というか、らふぃが来てから露骨に外回りの仕事増えたよなぁ。妾がらふぃに近付くのが嫌なんじゃろ?」


逸らされた視線をそのままに。さぁ?、と一言返されるとタマモさんはニタリと笑う。


「らふぃが妾に誘惑されて取られるかもって内心心配なんじゃろ?んん?貴様の心中などお見通しじゃて。」


やり取りの最中ふわふわ尻尾がボクの頬を撫で、そのあまりの柔らかさについついもふもふと触ってしまう。気持ちいい。柔らかでサラサラ、そしてほんのり甘い匂いがする。


と、タマさんの尻尾が間に割って入り、うにゃうにゃと動き回って絡みつかれちゃった。


「付いてくるのは勝手だけど、ラフィにセクハラしたらはっ倒すから。」


「せくはらなら貴様がよくしていよう。全く、自分の事を棚に上げおって。」


二人の尻尾でもちゃもちゃにされながらも目的の屋台に到着。体長2m程のオオオナガが産んだ卵を、たこ焼きのように衣で包んでソースとマヨネーズをかけた一品。この世界に来てから巨大化した生物は多く、祖先にあたるオナガと呼ばれる鳥も最初は1mにも満たない小鳥だったとか。


アングルスで家畜化されたオオオナガは羽毛、肉、卵どれも有用で。ドームの外の地下の飼育施設で飼われているんだって。


「ほら、三つ。」


タマさんが硬貨を指で弾き、器用にキャッチしたおじさんがその場で頑丈な草で出来た入れ物に詰めてくる。わぁ、美味しそう。おじさんとやり取りするタマさんの後ろ、タマモさんは共有モードのスマイルを開いてボクにハムハムの相互フォロー申請を送ってきた。他にもリコリコさんとの絡みで新しく開設したTUBEのチャンネル、ショート動画投稿サイトのcolorful pallet‥通称カラパレ、日記投稿SNSのjunction‥交差点なんてのも相互フォローを迫られる。


「なんじゃ、お主も色々やってるのぅ。妾もえすえぬえすには造詣が深いぞ?ふふふ、ひとの子も面白いものを作りおる。封印から目覚めるまでは、ひとなどずっと馬で野を駆け続けるものかと。」


「はいはい、買ったら籠に入れて放り込んでおきなさい。」


タマさんに手渡され、いそいそと籠の中に卵焼きを入れた。籠の中の時間は止まってるらしいし、傾けても中でひっくり返ったりもしない。いつまでも腐らずアツアツなまま。開拓者としての初期投資の一環で買うよう言われ、ちょっと高かったけど買った。


快・活・堂製、【彩波89年最新版】永久保温・時間凍結・人体工学設計・スマートデザイン・開拓者業務用・大容量・防臭・軽量・防虫・防弾加工


時間凍結式有機物収納BOX、お値段50万円。


ちょっと紹介が胡散臭かったけど、タマさんが勧めるだけあって性能は折り紙つき。沢山入るしすっごい便利!デザインもスマートで防弾性能まで付いてきちゃう!きゃーっ!!


「妖術の如き籠よ。仕組みのわからん便利ぐっずが溢れる世の中は奇奇怪怪じゃ。」


タマモさんは好意を隠そうとせず隙あらばずいぃっと覗き込んできて、思わず照れ恥ずかしいボクは一歩後ずさって顔を熱くする。そしてタマさんの手に抱き寄せられ、腕を抱かれながら引っ張られて行くことに。


タマモさんの妖艶な気配は目があっただけでドキリとしちゃう。二人に挟まれて道を行く間落ち着かずにもじもじしていた。


「ラフィ。やっと来た。」


待ち合わせ場所の広場に着くと、合流していたウィッチワークス旅団のルーフスさんと旅団長のセルペンスさんが居た。他の皆も既に屋台料理を机に広げ、宴会のような雰囲気でお酒を片手に賑わっている。


「お、やってるやってる。」


ととっ、とモモコさんも胡蝶之夢の中から出てきて参加してきた。お祭りの間も配信は見ていたみたいだけど、流石にあまり外を出歩きたくないらしい。


「セルペンスさん!久しぶりです!」


「あら、久しぶり。随分強くなったそうじゃなイ。それにそこの狐は‥ふぅん。面白い子ネ。」


白磁色の肌のメデューサの睨む先、タマモさんもニタリと目を細める。


「妾は大妖ぞ。貴様が推し量れる存在ではないわ。」


しかしカッコつけたセリフは、タマさんの尻尾が頬を突いたせいで言葉尻がもにょり。タマモさんの尻尾にどつかれたタマさんは思わずよろよろ、ヘラヘラ笑って指差しながら酒気を漂わす席の方へ行ってしまった。


「ラフィ。このヒト誰?」


本名言っていいんだっけ?


【別に妾の名はのくたーんと結び付かぬ。表向きは、たまも商会の会長じゃ。まぁ、珍品を扱うこれくたぁな上級国民向けのしがない会社でのぉ。】


頭の中に直接タマモさんの声が響く。わっ?!これも妖術の類いなのかな?


「タマモさんです。珍しい物を売ってる商会の会長さんですよ。」


「それだけかしラ?」


見抜くようなセルペンスさんの瞳を前に、思わずそっぽを向いてタマモさんの尻尾の影に隠れてしまう。


「悪いわネ。ワタシに嘘はつけないノ。まぁ、ラフィが懐いてるのなら悪い子じゃなさそうネ。」


セルペンスさんとタマモさんは互いに測り合うよう睨み合い、その間もルーフスさんはやり取りに興味なさげにボクに歩み寄る。


「カッコよかった。配信。ね、もっと仲良くなろ。」


「は、はい。でもどうしてボクなんですか?」


初めて会った時からルーフスさんは距離感がすっごい近い。そんなに好かれるような切っ掛けは無かったような。好かれるのは嬉しいけど、理由が分からないとちょっと怖い。


少し黙った後、ルーフスさんはボクを手招きして近くの屋根を指す。


「そこで話そ。」


ボクは誘われるままについて行ったのだった。

快・活・堂製、【彩波89年最新版】永久保温・時間凍結・人体工学設計・スマートデザイン・開拓者業務用・大容量・防臭・軽量・防虫・防弾加工 時間凍結式有機物収納BOX

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¥500000(税込)

色 スケルトンピュアホワイト 選べるサイズ 中 型式 時間凍結式 

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この商品について

・深未踏地で採取した貴重な食材の持ち運びに、楽しいレジャーでのお弁当入れに、お祭りを全力で楽しみたい時に。業界内初、時間凍結式保存技術により半永久的な“出来立て・新鮮”維持を可能にした最高の有機収納BOX。

・業務用からプライベートまで幅広く活躍し、お部屋のインテリアにも馴染むデザイン性。AR投影技術により中身を分かりやすく表示。また、使い方次第でオシャレなインテリアにも。

・持ち運びの負担を最低限に抑える人体工学に基づいた設計。通常の持ち手と比べ40%の負担減が実現。

・防弾加工によっていざという時の弾除けに。アナタをヘッドショットからも守ってくれます。

・ホロメッセシステム内蔵。枕元に置けばアラームを鳴らし、天気予報もお伝えします。睡眠を導入する多様なコマーシャル自動再生機能搭載。睡眠学習にも。


レビュー ★4.7


上位レビュー


ラフィ

★★★★★ カッコいいお弁当箱買っちゃいました!

色 スケルトンピュアホワイト 購入済み

見た目キラキラで綺麗でカッコいいです!持った感じも驚く程軽くて使いやすい!

他のレビューでも言われている自動コマーシャル再生機能はOFFに出来ますので安心して下さい

今日のお祭りで使ったんですけど、中身が本当にホカホカなままでビックリしちゃいました!

お値段ちょっと高いけど購入して良かったです!> <


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