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68、アングルス雪祭りを生配信でお届け!ひねコメ¥3000以上で配信応援リコ&ラフィグッズプレゼント!

そして当日。都市警戒区域のその先、深未踏地の手前にある隅っこの街アングルス。そこで年に一度開かれる街を上げての雪祭り。その日はマフィアも開拓者も色街のお嬢達も、蜘蛛の巣街のスラムの一画の子ども達でさえ平等に雪を投げ合い童心に身を任せる。


大通りを無数の屋台が賑やかし、どの開拓者が雪合戦を制するか恒例の賭け事が行われた。


朝昼晩関係なく飲めや唄えや騒いだもん勝ち、怪物蔓延る世界の隅っこにも楽しむ時間は必要さぁ。


朝一番から既に酒気を漂わしたおじさんが路地裏で歌っていた。


雪が降ろうがアングルスはドームの中。ドームの隙間から降り込んだ雪が大通りに積もるものの、街の大半は雪とは無縁。しかしドームの外は銀世界。街の住人はドームの外で、大通りで既に雪玉を丸めて遊んでいる。


外で雪玉を沢山補充してきたボクも雪合戦の開始時間までリコリコさん、ヒメコさんと合流して朝ごはんを楽しんでいた。タマさんとブランさんも隣の樽の上に並んだベーコンエッグトーストを齧っている。


「てかアンタいちいち飯食わなくていいでしょ。」


「当機の味覚センサーは食の楽しみを満たして下さいます。スライニウム分泌腺によって唾液も出るんですよ。」


二人のやりとりを背景に、挨拶を済ませたボク達は早速配信の準備をを進めていた。


「ウチの事はヒメ様って呼んでや。ほら、偽名ってやつ。」


そうは言いつつもバサラなる派手な格好に、顔も隠さず堂々としている。


「わ、わかりましたぁ。ヒメ様!えーと、動画に映しちゃってもいいんですよね?」


「そんなん気にするな。ウチはアングルスじゃ有名人だし?」


特に偽名を使う意味は考えていないみたい。ヒメコ様だと長いからとか?一文字分だし変わらないと思うけど‥‥


そう言う間もいつの間にヒメコさんは何処からか用意した紅茶を手にしている。そして飲み終わるなりポイっと後ろに投げ捨てた!


わわっ?!割れちゃう?!


って驚いてイルシオンで受け止めようとするも宙を掴み、ティーカップは何処かへ消えてしまっていた。収納のマギアーツじゃないよね?何のマギアーツを使ったの?


「すぐに分かるさ。ラフィは好奇心旺盛だね。」


ポチの追従先をボクに登録するリコリコさんは、早速ボクの周囲をぐるぐる回るポチの様子に頷き配信開始の時刻まで後5分と伝えてきた。


いつもの事だけどやっぱり全国配信で生配信だなんて緊張するなぁ。


「今日はラフィに護衛を頼んだのよね?アタシも一緒に行ってもいいけど。」


「いらんて。ウチは天使のような美少年に守って欲しいのよ。それとメイドさんも悪いけどルール上バトロイドは参加出来ないからね。」


しっ、しっ、と片手でタマさんとブランさんを追い払うヒメコさんは撮影を前にちょっと髪を気にしてるようだった。


「ラフィ、一応言っとくけどピクルスの娘だからって身構える必要ないわよ。事情が悪くなったらアタシが纏めてぶっ飛ばして終いにするから。」


「そうですね。当機も田舎マフィア撲滅モードを起動しましょう。」


「いやいや、それ護衛の依頼人の前で言う?胡蝶之夢の奴らは破天荒なもんばっか。まぁラフィは気安く話してくれよ。ウチの恩人なんだしさ。」


そう言う事なら。ヒメコ、さんでいいんですよね?


「呼び捨てでいいって。」


ちょっとジト目なヒメコさんの後ろでタマさんがニヤッと笑う。


「無駄よ。ラフィは誰でもさん付けで呼ぶタイプなの。親密度が上がれば甘えるような声色で呼んでくれるけど。」


甘えるような?そんな声出してないよ!うう、でもタマさんは気兼ねなく呼び合える仲って感じだし。甘えたいって思う時もあるけど。


「あっ!来てくれた皆!リコっちだよ〜!おはリコっ!」


配信が始まるといつも通りにリコリコさんが軽快な挨拶を飛ばし、頭に被ったツノ帽子を尻尾で持ち上げウインクを送る。


「ほら、ラフィきゅんも!」


「ええと、お、おはリコっ‥‥です!」


いつもながら恥ずかしくて。指先の出ない長袖で口元を隠し、控えめに挨拶をしてしまう。可愛い‥‥だなんて後ろからタマさんの声が。み、見ないでよ。


ーおはリコっ! ーおはリコっ!! ーおっはー! ーリコの時間! ーきゃー!ラフィきゅんこっち見て! ーいいかブラン映せや! ーおはおはー! ーリコっちサキュバスドレインしてくれー! ーおはよー ー働き蟻達の蜜の時間


わっ!配信共有モードに設定されたボクのスマイルの方にも、動画の上部と下部に流れるコメントの嵐が表示される。中でも配信者にとって重要なコメントは自動でピックアップされてボクの目に止まった。


➖ラフィきゅんが今回メイン配信って聞いて生産区のお仕事有給取っちゃった!雪祭りでの活躍期待してるっ!¥10000円


特におひねりコメントはよく目に止まる。そうやって反応するとよりコメント欄が活気付くのだ。今回はリコリコさんがひねコメ3000円以上で、リコリコさんとボクのツーショットなキーホルダーとサイリウムセットをプレゼント企画もやっていた。


おひねりをポン、と投下すればポン、と自動で郵便受けに転送されてくるみたい。タマシティ限定、先着200名分だけだけど。うーん、というより200人も本当におひねりくれるのかな?くれたら嬉しいな。頑張らなきゃ。


「おっ?!始まったのか?おはリコだっけか?面白いなぁこれ!配信なんて初めて見るよ。」


と、リコリコさんとボクの間にヒメコさんが割って入る。共有モードにしたボクのスマイルを覗き込んで大はしゃぎ。


ー新キャラ?! ー誰そいつ ー和服派手美少女登場キター ーなんだ貧の者か、帰れ ーあれ?この顔何処かで


「ウチはヒメ様って言うのよ。今回は宜しくなぁ!」


自分で様を付けるんだ。なんて思うボクの肩をパシパシ叩いて画面の向こうの皆とおしゃべりしてる。


「ええっと。取り敢えず今日はアングルス雪祭り!開拓者入り乱れる雪合戦をラフィきゅん視点で大公開!あっ、俯瞰(ふかん)視点だから大丈夫だと思うけど酔わないよう注意ね!」


画面の向こうを指すリコリコさんにコメント達は了解の意を示し、そんな間にもボクは雪合戦の為に持ち場へ移動する。雪合戦のフィールドは前線基地周辺の住宅地の遺跡群。2階建ての住宅の廃屋の並ぶエリア、幾つかの傾いた大きなビルが並ぶエリア、朽ちた高速道路の残骸が残るエリアで雪玉を撃ち合うんだ。


廃屋の並ぶエリアの一室にそっと忍び込み待機する事に。動画で配信してる以上隠れてもあまり意味なさそうだけどね。室内は荒れ果てていて、二つ並びのベッドの寝室と傾いたテーブルのリビングが原型の無い壁越しに繋がっていた。


「最終確認だけど、駆動魔具の使用はOK。怪我させなければ駆動魔具での格闘もセーフ!その他直接的な攻撃力の無いマギアーツの類は使用可。だけどそれによって負傷者を出した場合は失格。武器はスノーワールド製の雪合戦専用魔具のみ。あ、一応知らない視聴者に説明するとスノーワールド社はウインタースポーツ専門魔具を取り扱う大手企業だよ!」


アングルス雪合戦のスポンサーっていうわけじゃ無いけど、勝手にそんなルールが決められたらしい。同業他社の製品は使っちゃダメなんだって。他社のものには雪が詰まった誘導ミサイルなんてものもあって、それで怪我人を出したことがあるのだとか。


ボクはタマさんが用意してくれたオートマチック雪玉ピストルを5丁。ユリシス自体は攻撃力無いし、使っても良いよね。綺麗な縁の黒い真っ青な蝶々の大きい羽が展開し、中からミニフィーがぴょこりと顔を出す。


「わっ?!蝶々の羽?!すっごい綺麗‥‥!ちっちゃいラフィきゅんの動画は見た事あるけど、その羽から出てたの?!」


そういえばリコリコさんがユリシスを見るの初めてだっけ。詳細は教えられないけど‥‥えへへ。綺麗でしょ?褒められて素直に嬉しいボクは羽をパタパタさせてアピールしちゃう。


ー何その魔具?! ー何処製? ーどっかの新商品? ー天使だと思ったら妖精さんだった ーマジで綺麗 ー見てると吸い込まれそうになる真っ青 ーきゃわわ ーてかちっちゃいラフィきゅん可愛すぎでしょ! 


ミニフィー達もボクの嬉しい気分を感じ取り、その場でパタパタをはしゃぎ回ってしまう。


「‥‥っ!‥‥っ!」


声は出せないけど楽しそうにぴょこぴょこ。


「おーっ。ラフィは見てて飽きないねぇ。これは何だい?」


「ユリシスっていう魔具です。武器じゃありませんけど、ミニフィー達を呼べるんです。」


ボクの脳波で動くミニフィー達はカメラにきゃっきゃと手を振った。そしてそれぞれピストルを手に取りバーンっ!なんてポーズを取る。


ーガタンッ!(ハートを撃ち抜かれて倒れる音) ー五人一組で戦うとかヤバくない? ー絶対強いやつ ーんっ!(尊死) ーこれは切り抜き動画の再生数エグい事になりそう 


「きゃーっ!ラフィきゅん!ほら!ぎゅ〜っ!!」


きゃあっ?!いきなりリコリコさんが飛びついてきて思わずジタバタ。と、同時に開始のベルが廃墟に鳴り響く。そして窓を粉砕して四方八方から大量の雪玉が家に撃ち込まれたのだった。

ースノーワールドー

シブサワグループに名を連ねるシブサワエンターテイメント。その子会社の一つスノーワールド社。

年中ウインタースポーツを楽しめる、「ホワイトリゾート・エビスタウン」等有名なレジャー施設の運営に携わっている。勿論、レジャーを盛り上げるグッズ開発にも力を入れており、雪上開拓者シリーズはウインタースポーツブームを巻き起こした。

そんな売れ筋トイ・ウェポンは隅っこの街アングルスでも愛されていたのだった。


ーリコ&ラフィキーホルダーー

配信者がおひねりコメントの返礼品を用意する企画は度々行われており、自動配送サービスを利用する事でライブ感全開な買い物配信をする事が出来た。通販系のチャンネルがやり始めた事をキッカケに、段々と多くの配信者が企画するようになり今に至る。

まさかこの時のリコ&ラフィキーホルダーがとんでもないプレミアが付いて、100万円を超す金額で取り引きされるようになるとは‥この時は誰もが思いもしなかった。

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