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49、ブレイクダンスが機巧軍団を薙ぐ、青い薔薇が戦場に刺さった

ボクの展開した天使の羽が二つに分かれたタマさんを包み込む。意識はしっかりしていて、悔しげに歯軋りをしていた。


「あんにゃろ。よくもやってくれたわね。」


黒い光を発するビームシュナイダーは一撃でタマさんを切り裂いてしまった。タマさんの着る黒パーカーもれっきとした強化外装なのに、全然防げてなかった。


「複数のビームシュナイダーでバリア装甲を破壊したのよ。一点集中で直撃させれば抗光学装甲も貫けるわ。」


タマさんの着込む強化外装は一般的なタイプで、戦闘システムをONにすると全身をバリア装甲で包み込むというもの。衝撃を受けた場合、バリアの厚みに差を付け衝撃を受け流す事で最低限のダメージで身を守る。その反面直撃を受けるのに弱く、受け流せない角度の正面からの攻撃を受けると大きくバリアのエネルギーを消耗してしまう。


因みのボクのこの白セーラー服一式も同じタイプの強化外装だった。直撃を受けないよう戦闘中は常に動き回って戦えば大丈夫。


「あ〜あ、ったく。今のが噂のアングルスの影法師か。マフィアの幹部を殺し回ってる謎の殺し屋ってか。倉庫街をシマにすんにゃあ俺が直接ヤブシキをブッコロしておきたかったが、ケチが付いちまった。」


チャガマさんも倒れたヤブシキさんを見下ろして溜息を吐いている。突然現れ、無駄無く仕事をこなして消えて行く。この街の陰に潜む脅威を目の当たりにして、内心震え上がっていた。


「ラフィ様。ぷるぷるあざと可愛く震えている所恐縮ですが、あまりここに長居しない方が宜しいかと。所属不明のバトロイドの集団を検知致しました。」


ふぇっ?!何か来てるの?!急いでタマさんを治さないと!


「パッチワークで適当にするくらいでも大丈夫でしょう。頑丈さだけが売りの雌猫ですから。」


「治ったら頭を蹴飛ばしてやるから覚悟しておきなさい。」


ああ、もう!喧嘩しないで!タマさんも動かないで!変な角度で斬れた胃が千切れちゃう!


内容物が軒並み流出してしまった胃に、スポイトで消化の良いカロリーゼリーを注入しておく。こうしないと治っても空っぽになった胃のせいで力が出ないから。


「それ太るから嫌いなのに。てか食べてないのに自然と腹八分目ってめっちゃ気持ち悪いわよ。」


「文句言っちゃヤです。この後も戦う事になりそうなんですから。」


天使の羽のお陰で傷は直ぐに治り、急いでタマさんが起き上がった。と、同時に閉めていたドアをけたたましい銃撃音がノックしてきた。防弾加工されたお洒落な木製っぽい見た目のドアは瞬く間に凸凹になって蝶番が粉砕される。そしてぐらりと傾いた所をブランさんが蹴り飛ばし、廊下にいた銃声の主人を纏めて吹き飛ばした。


六腕の銃撃と、廊下の襲撃者の短い応酬の末一旦の勝利を得る事が出来た。


「この感じ、バトロイドだな。黒塗りの型番不明の量産機‥‥間違いねぇ、機巧卿だ!」


機巧卿?!凄そうな名前が飛び出てきた!


「所謂賞金稼ぎよ。まぁアイツの場合金さえ出せば何でもする傭兵っぽいイメージの方が強いけど。理由は兎も角狙われた以上一発ぶん殴って止めなきゃ。」


短時間とはいえ大ダメージを負って体力を大きく消耗したタマさんにあまり負担を掛けたくない。ボクが頑張らなきゃ。R.A.F.I.S.Sを起動し、ブランさんと同調する。恐怖や焦りで揺れていた心が冷たくなり、純粋に状況の把握だけに全神経を集中出来る様になった。


部屋を一瞬薙いだイルシオンが壁を切り裂き、ブランさんの銃撃が壁を打ち壊す。同時にもう一度薙がれたイルシオンが収納のマギアーツに瓦礫を取り込み、外で待ち伏せていたバトロイドの集団目掛けて瓦礫片を発射した。


くるりとボクが体を一回転する間、豪速球で降り注ぐ瓦礫が的確にバトロイドの頭部を撃ち抜き衝撃で転がっていく。機先を制する一撃に、一瞬チャガマさんが変な声を出して動揺したもののため息一つで戦闘体勢に入った。


「タマさん、無理しないで下さい。ボクがやります。」


飛び出そうとするボクの腰をぐぃぃっ!と絡んだ尻尾が引き戻す。きゃあっ?!


「何ナマ言ってんのよ。アンタの方が下がってなさい。アコライトはそもそも前線に出しゃばる職業じゃ無いから。」


通りすがりにボクのほっぺにキスを一つ残して一陣の風が吹き抜ける。頭を守るバリア装甲が軽い感触を伝えてきた。足元に青い軌跡を纏った風は、両手に破壊の権化を携え狂乱の嵐を巻き起こす。


銃を構えた人型のバトロイドは高精度な銃撃をタマさんに集中させる。しかし踊るような動きで、その場から大して動かず銃弾をいなすタマさんの足元に弾痕を増やすばかり。数倍の大きさの弾丸が風を裂いて交差すれば、あっという間に1小隊程のバトロイドが機械片となって転がった。


戦場を青い軌跡が縦横無尽に駆け回り、集中したヘイトを置き去りにする程の高機動を以て戦うタマさんは圧倒的で。ボクも少しでも追いつけるよう、その背中を守るべく動き出した。


壁を這う蜘蛛型のバトロイドの群れがボクに向けて、口腔から覗いた機銃をばら撒いて来る。四方の壁から降り注ぐ立体的な銃撃の雨。一瞬イルシオンからブランさんが突き出したビームシュナイダーを踏み込み、雨とすれ違うようにボクの体は上空へ大きく吹き飛ぶ。


宙で背面飛びの姿勢のまま伸ばしたイルシオンを体ごと回転させ、壁面の蜘蛛達が光のプロペラに巻き込まれて砕けていった。宙のボクを狙おうとする人型のバトロイドの照準が合う前に、腰の本とイルシオンから銃身を覗かせた6丁のフェンリルが光線を照射する。ピタリと手の銃器を撃ち抜かれ無力化された。


そして先に飛び出して着地したブランさんがボクの体を受け止める。その姿は直ぐに掻き消え、落下する前にボクの頭のあった辺りを銃弾が突き抜けていった。


ブランさんの腕の中から落ちると、そのまま地面の上でブレイクダンスの要領でぐるぐると回転!ブレードランナーで宙を蹴って、バリア装甲で体を滑らせて地面を滑走!

伸ばしたイルシオンが複雑な挙動で広範囲を高速で薙ぎ払う。地面の上で回るボクに狙いを定めようと銃を忙しくしていたバトロイド達は、銃火を立てる前に薄くスライスされ側転するように半回転して吹き飛ばされた。


更に腰の本から出た2丁のフェンリルが、光線を照射しながらダンスに合わせて広範囲を灼き払う。動き回るタマさんの動きと完全に同期していて、光線を飛び越えて銃撃で薙いでいた。


起き上がり際の隙を潰すべく、姿を現したブランさんがボクの体を抱いて勢いよく飛び上がる。そして丁度タマさんの背中を狙っていたバトロイド数体をイルシオンで斬り飛ばして着地した。


「ラフィったらやるじゃない。」


「はい。ですがどんどん敵が湧いて来ます。」


ハッとして見渡せばいつの間にかチャガマさんが居ない。もしかして逃げた?!


「アイツはターゲットされて無かったんじゃないの?それか優先順位が低いか。アタシ達狙いって事ね。」


うう、無事に逃げてくれれば良いんだけど。でも次々敵が湧いて来てキリが無い。もう少し手数があれば攻勢に出れるのに。チラリと見ればタマさんも判断に迷っている目をしていた。もしかしてノクターンのあの紅の燕尾服、テロリスト扱いされている強化外装を使うか考えているのかも。だけどここじゃ何処から見られてるか分からないし、タマさんがノクターンの一員だとバレれば動き辛くなる。


タマさんが迷わないよう、ボクがもっと戦えば!


再びイルシオンを翻して飛び出すボクの前、銃口を此方に突き付けていたバトロイドの一体が突然砕けて吹き飛んだ。


「きゃっ?!」


驚いて銃声の方を見やれば短いツインテールを靡かせる、青髪で黒スーツなお姉さんが駆けて来ていた!目先のバトロイドを斬り捨て、勢いよく突っ込む動きに迷いが無い。


「ラフィさんですね?!お怪我は?!」


「へっ?!大丈夫です!」


「組合から貴方の護衛の為に来ました!組合警察のロゼです。自己紹介はともかく切り抜けましょう!」


その手に携えられていた、青いラインレーザーで縁取られた長剣が突然姿を変える。魅惑的な機械音と共に刀身が折り畳まれ、あっという間に銃に変身したのだ。


ななな、何それ?!かかか、カッコいい!!


思わず目をキラキラさせるボクを他所に、ロゼさんが銃弾をばら撒く。それは比喩なくそのままの意味で、集弾性のカケラも無いメチャクチャな狙いで広範囲を無造作に弾幕が薙ぐ。一発一発のダメージは薄そうだけど、正面の敵の攻撃が緩み強い牽制になったみたいだった。


その一瞬の隙にロゼさんはボクの前を走り、半光学長剣に変形させた武器で包囲を無理やり突破した。


横目でタマさんの方を見やれば、波立った地面がバトロイド達を打ち上げ纏めて吹き飛ばしていた所だった。あれはもしかしてメリーさんのマギアーツ?!来てくれたんだ!ならタマさんは大丈夫そう。まずは心配掛けないようにボクがロゼさんに追い付かなきゃ。


一度タマさんと別れたボクは、ロゼさんと背中を守り合いながら倉庫街を脱したのだった。

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