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511、支配する気のない支配者同士、仲良く手を取り合って

パーティーは大好評に終わり、ボクの展開した大きなエンジェルウイングが街を覆って最後に癒しを撒いた。ロゼさんから色んなヒトが自主的に警備に当たってくれていたってお話を聞いたんだ。


「治外街とは思えない様子でした。」


「びっくりしたッスよ。」


「ああ、まさか暇するなんてな。」


「凄い落ち着いていて‥‥皆ラフィさんの事を褒めていました。」


クリハラさんの髪先が、三つ編みにおさげにマックスペガサス盛りに。暇な時間で作ったヘアスタイルがボリューミーな髪を賑やかにしている。髪を自在に操れると髪型を整えるのが楽そう。


「クリハラは遊び過ぎッス。」


「だってぇ‥‥」


お仕事が終わった皆にも、取り置きしていた料理を用意した。片付けが始まった公民館の片隅、テーブルに皆さんへ!とご馳走が。


「帰りはワープゲートで送りますから、時間いっぱいゆっくりして大丈夫です。日頃から組合警察の方にもお世話になっています。」


「ふふふ‥‥ラフィさん!それではお言葉に甘えて。」


そんなロゼさんにキンジさんは驚いた顔をする。


「以前のお前を知ってるとよ‥‥こういう機会は絶対断って無碍にする奴だと思ってたのに。業務中に市民から個人的なプレゼントを受け取るのはどうなんだ?」


「ラフィさんの好意を無駄にするのはそれも間違った対応です。それとも組合警察はシブサワに恥をかかせる対応を推奨するとでも?」


ロゼさんは早速タレで口元を汚しながらも、その舌はよく回る。ぐっ‥‥と言い返せないキンジさんの肩をメリーさんが叩いた。


「ほらほら、こんなご馳走ウチらの手取りじゃそうそう口に出来ないッスよ。ただでさえ面倒とストレス多い警察人生、企業からの接待で良い思いをする機会あっても良いッスよね。」


企業の接待って言うと何だか違うけど、でもその方が受け入れ易いのならそれで良いです。タマさん達がフレアさん、タマモさんと今後のお話をする間。ボクは今回協力してくれた皆をもてなすんだ。


「へへへ‥‥美味しいです。いつもカロリーバーばっかり齧ってますから。」


クリハラさんの髪が器用に食器を操って、取った小皿の上へ料理をよそっていく。衛生的に何か言いたげなキンジさんも見ないフリをして、ボクの差し出した骨付き肉もお皿を受け取った。


「なんか悪いな。この仕事やってて俺らを煙たがらない開拓者なんてのは余りにレアでよ。こんなもてなしされんのはこそばゆいって言うか。慣れてねぇんだ。」


「大丈夫です。ボクが犯罪を阻止した時によくお世話になっていますし。」


キャプチャーネットで捕まった悪いヒト達を、現場に急行して逮捕してくれていた。


「こんだけ派手に自警活動して何の法にも触れない器用さはスゲェと思う。普通こういう義賊っぽい活動する奴ってドンドンエスカレートして最後には自身が逮捕されんのよ。ラフィはしっかり法の一線だけは完璧に守ってるのがな。」


毎回法のスペシャリストのブランさんに全部確認しているからね。敵の武装でどのレベルの攻撃までが許されるのかも毎回判断してるし、状況による対応の違いもブランさんがシュミレートして答えを出してくれた。


「ラフィ助が組合警察に来たら、ヤマノテの警察組織の組織構造がガッツリ変わりそうッスね。」


「自警の範疇だから良いってのもあるな。これで本格的な法の番人としての捜査権握って、超技術であらゆる犯罪を暴きまくったら‥‥」


「犯罪や悪事に免疫の無い超平和ボケした街が出来そうッスね。揺籠の中で暮らすのは良いッスけど、一歩でも外に出たら暮らしていけなさそうッス。」


犯罪で不幸な目に遭うヒトを減らしたいなって気持ちが強くてやっていたけど‥‥そう言われるとボクに都市が依存しそうな。


依存‥‥



ゾクリとした。



ホロウインドウの中でフィクサーさんが囁く。


『ラフィさま、お気付きで?魔王としての本質的な、本能的な部分があるのだと思います。ラフィさまは正にヒトを統べる魔王。その可愛さ、癒し、自警活動、引っ張って行く求心力に大勢を魅了する言葉遣い。』


『ヒトを魅了し靡かせる事にラフィさまはあまりにも特化しています。R.A.F.I.S.Sは大勢を束ねて、ヒトを群れとしてラフィさまと繋ぎます。より好かれて誰もがラフィさまへ寄れば、R.A.F.I.S.Sの影響下に入るヒトはもっと増えます。強烈な影響力で社会の中心にまで躍り出て、R.A.F.I.S.Sで人類社会全体を影響下に置いてしまう。』


怖くなってホロウインドウを見る。にゅるん、と出て来たフィクサーさんがボクを抱いた。


「ですがだから何なのでしょうか?影響下に置くラフィさまと違い、ワタシは支配者です。全ての空間はワタシの支配下、かつては魔界の王として統べていた時期もあります。」


耳元で励ますよう、その声は優しく。


「ラフィさまはご自身の事を沢山識っていくべきです。ワタシはラフィさまと似ている所もあり、分かり合える所も多いと思うのですよ。」


ボクの手を取って笑い掛けた。


「互いに支配する気のない支配者同士、気楽に世界を楽しんで行きましょう!」


ボクが悩みに思って、悲観的になっちゃいそうになった部分に光を当てる。力を自覚する必要はあるけど、それに縛られない生き方をフィクサーさんは分かっているみたいだった。


そうか、だから。


「ワタシは世の有象無象をエンタメとして見下ろす立場ですが、ラフィさまだけは対等な存在として見ています。にゃは、何せ同類がそうそう存在しない立場ですので!ですから、」


フィクサーさんはボクの腰に手を当てて、顔が急接近!きゃっ?!


「愛おしく思っていますよ、ラフィさま。」


「えっと、えっと!ううっ。」


フィクサーさんはボクに惹かれて付いて来たような感じだったけど、あの時は1人の応援してくれるファンだと考えていた。それでもその上位者のような力を知って、その好きの根底に何があるのか分からないでいた。こんな凄い存在に見上げられるような存在じゃないよ、って思ってた。


ボクと同じだったんだ。


急に強い親近感を覚えて、熱くなった顔を誤魔化すようフィクサーさんに抱き付いてぎゅうっと顔を隠す。


「恥ずかしいです‥‥」


胸元に顔を隠すボクの頭を手が優しく撫でた。そしてしゅるりとスマイルの中へ戻って、ジト目で見やるロゼさん達を指したのだった。


「ラフィさん。急にどうしたんですか。」


「あの!何でもないです!」


皆と一緒にお食事をして、お腹が膨れた面々は幸せそうな顔でワープゲートの向こうへ帰って行く。


「お疲れ様でした!」


ボクは手を振って見送った。





パンタシアの露天風呂、今日は大勢やって来た。温泉権なるものを取得したヒト達が、タオル一枚巻いてゾロリ。タマさんに体を洗われるボクの隣でわちゃわちゃと騒がしく。


「ラフィ、前は私が洗っても良いかしら?」


伸びたフレアさんの手をブランさんが払い除ける。


「ん。(後でスーパーセルのお話聞かせて。)」


セツナさんに良いですよ、とR.A.F.I.S.Sでお返事を。


「サキュバスの女王様まで招いたのか。一層華やかになるな。」


クニークルスさんは早速休憩スペースから徳利を持ち出していた。


「お酒もあるの?本当に豪華なお風呂ね。」


フレアさんも欲しがって、タマさんもついでに持ってくるよう催促した。


「あー、ラフィとの寛ぎ空間が。」


「賑やかなお風呂は好きです。ちょっと目のやり場に困りますけど‥‥」


「アンタはアタシを見てなさいよ。」


振り向くボクを急に抱きしめて、柔らかい感触におでこを預けちゃう。あうっ。この感触は落ち着くし好きだけど‥‥ムズムズするから。ぐ〜、と押し退ければ離してくれた。


「2人っきりなら皆に見られないわよ?」


「もぅ。いつもベッドの上で散々抱き締められてるんです。」


「裸でくっ付くと癒し効果が凄いのよね〜。心臓に近い部分だともっとさ。」


‥‥R.A.F.I.S.Sが微量の嘘を感知する。それって口実にしているだけですよね。タマさんったら。


「シャワーが屋根から降るの?便利ー。タマってマジ何者よ?メガコーポのお偉いさんクラスでしょこんなの。」


ヤミヨさんはタオルを肩に掛けて巻いてくれない。視線をやると見せつけるようウインクして胸元を寄せ上げる。パッと逸らすボクをニヤニヤしながら見ていた。


「そうは言っても下までおっ広げは見苦しいですねー。にゃは、流石に腰にぐらい巻いたらどうです?」


「私はそっちも拘ってるタイプだから。髪の毛拘るのにこっちがおざなりな子ってどんな神経してんだろーねー。」


「ラフィ様のお耳汚しになるクソ下品な会話はお止めやがって下さいませ。」


皆を温泉に招待するのは隔日。日によっては結構混むんだよね。因みに男性陣にもタマさん達が入らない時間だったら、有料で貸し出していた。錦鯉さんとか、シライシさんにシュラウドさんとか。エンベリ関係で知り合ったお仲間にはタマさんも甘いんだ。


‥‥イシダさん達もたまになら貸していた。


装備のメンテ費用を経費でノクターンにお任せ出来る分、浮いたお金はパンタシアへドンドン注ぎ込む。タマさんはお風呂もしょっちゅう改造していた。


壁面に並んだ打たせ湯。灯籠に挟まれた場所にたっぷたっぷと細い滝が流れ落ちる。温まりながらものぼせずに、肩に当てたりして寛げた。


寝湯。浅い湯に足を伸ばして寝転がれるスベスベなお風呂。普通に入るよりも寛ぎ度合い高いけど、お酒が入ってるとそのまま寝落ちしちゃう。


立ち湯。立ったまま入るお風呂でちょっと深め。血行促進効果が高いのだとか。中で歩いたりしていつもと違う入浴体験。


5種類の薬湯。美肌効果からインプラント整調まで効果は様々。入る時はタマさんも最後に浸かるようにしていた。


サウナに水風呂もあるし、休憩スペースももっと拡張。前は紅い布の掛けられた長椅子と和傘セットだったけど、今は床に座って寛げるよう柔らかい砂場が追加。純白の砂場の中央にARの桜の木が立っていた。舞い散る花弁が光っていて美しい。


よくのぼせたらここでお酒を入れながら談笑して、軽いツマミを噛みつつ女子会をしているんだ。


「成金開拓者らしい金の使い方で御座います。まぁ、上流階級の本格的な金遊びと比べたら規模は庶民的ですが。」


お風呂体験を盛り上げる為に混浴するエキストラを雇ったりはしていないし、お風呂場に呼ばれた歌手が1曲披露する為のステージも無い。お風呂場を社交場にする為のラウンジ施設が付属もしていないし、聞いた話だとお風呂場で打ちっぱなしゴルフなんかも出来るって。ゴルフして軽く体を動かしながら色々政治や取引の話をしたり。


「そういう施設が付属しない限り幾ら豪華にしようが庶民的なんですよ。つまり寛ぎ空間で終わらせず、接待する場として整えられてこそです。裸のお付き合いって案外重要なんですよ?強化外装も武器も無しに交渉する姿勢が話を上手く運ぶ事もあるんです。」


そんな2人のお話をタマさんは聞こえていないフリ。だってボクもタマさんも庶民だし。メガコーポの重役じゃないから、ラウンジなんてあっても持て余しちゃう。


ボクは背中を押されるよう、打たせ湯に。セツナさんとヤミヨさんに挟まれて。


「セツナさんはここ好きですよね。」


「ん。何となく。」


「まぁ新鮮味あるしねー。それにぃ‥‥ラフィくんの体もよく見えるし?」


ボクの体を見ても面白くないですよ。筋肉質でもないし。


「ん。(太ってないけど何だか線が丸っこくて可愛い。)」


「お姉さんの体も見て良いんだよ?あはは、冗談だって。」


軽い談笑から入って、お話はやっぱり冒険の話題へ。モモコさん達から機密って程に口止めもされていないし‥‥折角のお付き合いだし良いかな?


スーパーセルの冒険話をすれば2人とも興味津々。ここだけの話ですよ?と口止めをしながら、色々とお話をした。


「カテンさんのお陰ですっごい風に飛ばされずに真っ暗な積乱雲へ突入出来たんです。ほら、写真もありますよ。」


共有モードのホロウインドウに映された、真っ暗な空に走った稲妻の紫光。本当に真近をピシャリと雲を斬り裂いている。


「凄い。こんな場所、私も冒険してみたい。」


「お姉さんは流石に怖いな。音もヤバいんでしょ?」


お腹の底にゴロゴロと響く雷鳴、とんでも無い豪雨が叩き付ける雨音、そして止まない猛風が空を駆ける音。


「ここで鳴らすとうるさ過ぎますけど、2人にだけ聞こえるように流しますか?」


音のサンプルは幾らでも。興味本位に2人は頷いて、ビックリした顔でひっくり返るまで僅か数秒。慌てて音量を下げたようだった。


「んっ!驚いた!」


「ひゃあ!あはは!凄い、タマー、こんな場所を冒険してんの?ヒトが入る場所じゃ無いって。」


タマさんの調子の良い返事、でも他のヒト達も気になったようで‥‥結局皆驚いてひっくり返っちゃった。いきなり聴いたらビックリだよね。立体感抜群のサウンドは、裸のあの嵐に巻き込まれたかのような錯覚を覚えさせていた。


皆の視線にどこか敬意のようなものを感じる。ボク達の冒険を素直に凄いって認めてくれたようだった。


皆で色んなお風呂に浸かりながら飲めるヒト達は酒宴を開いて、ボクとセツナさんは立ち湯でちょっと泳いだり。成人サイズだからボク達の身長だと結構深い。プールのような感覚でお風呂を楽しんだ。


程よくお酒が入って酔った風な皆に癒しを求められる。ちょっとだけ嫌な予感がするけど、癒しを欲しいって言われたら癒したい。撫でられ、お膝の上に乗せられて、ほっぺをくすぐられて、むぎゅうっ!と抱き締められて。


ブランさんに守られてながらも、お肌の触れ合う距離で好きなだけ可愛がられたのだった。

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