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523/523

500、300年先を見据える少年に掛けられた呪い

パレードの最中、あくまで賑やかし役のラズベリーは他の面々とスマイルで連絡を取り合っていた。



『ラズ』

ラフィくんすっごい辛そうだった

でも後でって。どうしよう!


『グミ』

ラフィの気持ちはラフィーズで伝わって来てたわ

頑張って隠してるつもりでしょうけど、私らなら分かるわよ


『アマネ』

それって結局ラフィが隠し切れなかった訳じゃないんじゃない?


『カラント』

そう言えばグミ、お前が大変だった時ラフィが助けてくれたのぅ


『グミ』

分かってるわよ!

私らに助けて欲しいって思ってたんでしょ


『ラズ』

でもどうしよう?持ち場を離れる訳にはいかないよね?

ああもう!仲間が困っているのに!


『カラント』

まぁまぁ

私からもうレイホウへ連絡を取っておる


『アマネ』

カラントの得意な魔法はコネ魔法ってやつ


『グミ』

よっ!大将!


『カラント』

コネほど便利で強力な魔法はないぞ?奇跡を起こしてやろう


『ラズ』

あっ!モモコさんから連絡が来た!



『モモコ』

話はレイホウから聞いたよ。今度僕直通の連絡先を君達に教えよう。毎回レイホウ越しだと文句を言われてしまう。

とは言えラフィの異変は看過できない。今起きている事を伝えよう。それと‥‥


ラフィを支えてやってくれないか?多分、僕じゃラフィを助けられない。

悔しいよ。

頼んだよ。



裏で話が通って、魔法少女達は一時的に持ち場を離れる許可が降りた。ラフィの居場所がシブサワから教えられる。


「行くよ皆っ!!」


ラズベリーは1番に飛び出して行った。



『ごめんなさい。後で‥‥今は知らない方が良いです。』



ラフィの気持ちが思い返される。少しの憤りがもっと速くと体を突き動かす。そして直ぐに大きなビルの屋上へ。駆け上がった先にラフィは居た。


足元に転がるテロリスト達は無惨な姿で転がる。ラフィの心情を表すかのような血の痕が、屋上の床に魔王のような絵を描き上げていた。


振り返る視線は紅い瞳。無表情なラフィへラズベリーは立ち向かう。


「ラフィくん!!」


「どうしましたか?持ち場を離れるのは‥‥」


「許可は取りました!!それよりも!」


ラフィへ言いたかった事を言い放つ。


「どうしてそんな顔をしているの?!」


R.A.F.I.S.Sから伝わってくるのは氷のような、正義を成す覚悟を決めた刃の気配。いつものふんわり暖かな心は無く、犯罪者を駆逐するディストピア発生装置の冷徹な氷塊。


「すみません、後で話しますから。」


開いたシャボン玉のゲートへ足を踏み出すラフィの姿が‥‥


「行かせぬぞ。」


ブラックカラントの相転移で吹き飛んだ!


R.A.F.I.S.Sへのし掛かる、どこか苛立ちのような重たい重圧。あのラフィが、睨んできていた。


「邪魔をするのですか?」


グミはラフィの顔をスマイルカメラで撮って、拡大して見せつけた。


「なんて顔してんのよ。辛いんなら言えば良いじゃない。」


「ボクが居る事を前提とした警備体制なんです!!ボクが戦わないと!」


そんなラフィの鼻っ面へアマネの声が刺さる。


「いやシブサワ舐めてるでしょ。ラフィが居れば確かに便利だけど、そんだけ。居なくてもチンピラの散発的な襲撃程度でどうこうならない。」


それはモモコのお墨付き。ラフィが警備から抜ける事をラズベリー達が交渉すれば、あっさり警備体制を組み直してしまった。万が一を考えて現地に待機していた予備警備隊、シブサワPMCの哨戒班、狙撃班がもう動員されている。本格的な狩りが、荒野の腕利き達を一方的に駆逐していっていた。


シブサワの本気を前にしたら、結局犯罪者が出来る事は何もない。苦し紛れの悪足掻きの余地すらも無い、容赦の無い鉄槌が下されていた。


「ラフィくんはもう警備の任は解かれているから。だからもう、大丈夫だよ。」


R.A.F.I.S.Sがシン‥‥と静まりかえる。


それは嵐の前のような静けさ。


「‥‥ボクは大きな力を持っています。ボクが戦わなかったせいで、万が一があったら。絶対にボクを許せなくなってしまいます。」


「だから、邪魔をしないで下さい。あのヒト達はボクを恨んでいて、ボクは背を向けられないんです。ボクが立ち向かわないと!」


R.A.F.I.S.Sにハッキリと怒りが込められた。誰もが悲鳴を上げて怯むような、危険な杭が心へ飛ぶも───


「ラフィくん!!今からショーをやるよ!ラフィくんの次のお仕事は、私達と一戦交える事!ほら、闇堕ちした仲間をこう‥‥えいっ!って戦って仲直りする的なアレ!」


ラズベリーの明るい声にラフィは意外そうにする。グミ達も同調した。


「そうね。私達もあの映画の撮影の時、先輩開拓者の黒猫にはっ倒されてさ。確かに勝ち続きで緩んでた所あったし?そのお陰で一度初心に帰って色々見つめ直せたのよ。」


「そうだのぅ。勝ちが続いて思い上がってしまった魔法少女達の内、まだ洗礼を受けていない仲間が1人居るぞ?」


「そゆこと。ラフィ、悪いけど一回床を舐めて貰うよ。開拓者の通過儀礼的な?」


ラフィの目が泳ぐ。


「でも、その。」


グミの挑発的な声。


「何よ。アンタ自分で大きな力を持ってるとか言ってさ。強いんでしょ?勝ち負けはともかく、1戦やるのはもう決定事項なのよね。勿論、怖いんだったら収録を無しにしても良いけどさ。」


ラズベリーはトイ・ウェポンを構えた。


「ラフィくん。どれだけラフィくんが強くても、私達は負けないよ。強いからってそんなに突っ走らなくても、皆はラフィくんが思うよりもずっと強いんだから。それを教えたいの。」


目前でラフィの両手にスピードスターが握られた。ステラヴィアが駆動する。


「分かりました。ショーを終えたら警備に合流します。」


ブラックカラントは笑った。


「やって見ろ!カンフー映画じゃ負けたが、今回は負けんぞ。」





ラズベリーさん達がボクの邪魔をする。何で?ボクは頑張っているのに、どうして。警備から外されたって聞いて‥‥


すっごい悔しくて。すっごい頭に来て。


そう、ボクは怒っていた。R.A.F.I.S.Sは感情の爆発を抑えてくれる。それでも怒りで心が熱くも冷たくもなっていた。


直ぐに終わらせて警備に戻らなきゃ。パレードは絶対成功させる。皆がボクに期待していて、ボクは大きな力を持っているから応えないといけない。


300年先の未来で待つお母さん達が、もっと良い世界で生きていけるように。


ステラヴィアを一気に駆動させて広々としたビルの屋上を滑走。激しい銃撃が始まればラズベリーさん達は一斉に散開する。


「今回は負けないわよ!」


グミさんがナックルを構えて突っ込んで、


「言っとくけどウチは強いから。」


アマネさんもピンクネイルを構えて背後に回る。ステラヴィアの激しい駆動、両手のスピードスターを激しく撃ち放って2人の接近を妨害しながら3人で乱舞した。


ピンクネイルをジャンプで躱し、スピードスターが足元を通り抜けた鎌を撃ち抜く。振る方向へ追加で衝撃を与えれば大きく怯ませる事が出来るんだ。グミさんの足元にも1発、ラズベリーさんの射撃を伸ばしたイルシオンで弾いて、もう片方のイルシオンが執拗にブラックカラントさんを襲った。


アマネさんはスピードスターの勢いも利用して更に一回転、薙いだ鎌はステラヴィアで跳ね上がったボクに当たらない。


「ほれ、まだこれからだぞ。」


カラントさんの相転移がボクとグミさんの場所を入れ替える。飛来したラズベリーさんの1発に対し、ステラヴィアの片足駆動で錐揉むようボクの小さな体が跳ねて躱した。


「おりゃっ!」


グミさんの拳をスピードスターで受け止める。アマネさんのピンクネイルは姿が無くて、その手にショットガンが握られていた。


この体勢は‥‥マズイ!


ステラヴィアの激しい駆動で無茶苦茶にボクの体は吹き飛んで、お陰でショットガンを擦りヒットに止める事が出来た。けれどグミさんの回し蹴りがボクを蹴り飛ばしてしまった。


バリア装甲を傾斜させて受け流したけど、思ったよりもダメージが入っている。アマネさんのショットガンの狙いはかなり正確だった。それにグミさんもボクの挙動を読んだかのように動いていて。


ラズベリーさんの銃撃を躱そうと‥‥相転移!


カラントさんの居場所と入れ替わり、その場に残されていたトイ・ボムがボクを吹き飛ばした!!


数回バウンドするよう転がって、思わずR.A.F.I.S.Sに敵意が混じる。


こんな事をしている場合じゃないのに!


アクアマリンが展開、アニマトロニクスがボクに猫耳を生やしてもっと俊敏に動けるようにした。


「ラフィくん!もっとギアを上げて行こうよ!!」


「邪魔です。」


イルシオンが激しく動いて皆を襲う。だけど全員が退かずに前へ!突き進んで来た。


「本気で来なさいよ!舐めプで負けましたなんて言い訳聞かないわよ!!」


グミさんの体捌きはイルシオンをギリギリ躱して、アクアマリンから発射された水流レーザーの雨にも怯まない。収納から取り出したミスリルシールドで全部を防いで、ステラヴィアで動くボクを牽制し続ける。


アクアマリンが大きな水球を頭上に作って、破裂すると同時に全方位へ水のダガーを発射!ラズベリーさんの鋭い射撃が直撃コースの数本を消し去って、更に迫ったグミさんがボクへ肉薄する。


拳をスピードスターで受け流す。タックルをステラヴィアの急加速で避け、肘がボクの胸元に叩きつけられた!


「あぐっ?!」


避けられなかった?!何で?!


それにこの動き。どこまでも洗練された連携で‥‥


「どんだけ普段から鍛えてると思ってんのよ!!」


拳を水の盾で防いで、そのまま盾の爆発に巻き込んで大ダメージを与える。相転移で直撃は避けたんだ。もぅっ!


ステラヴィアを一気に駆動!皆の頭上までひとっ飛び!イルシオンに水の刃を纏って、激しく回転しながら頭上から全部を薙ぎ払う!!


ブラックカラントさんが躱せずに吹き飛ばされ、着地間際のボクへ迫ったアマネさんの蹴りがボクを吹き飛ばす。アマネさんもバリア装甲で無理やりイルシオンの大波を突破して来ていた。


グミさんとカラントさんはもう戦えないかな?アマネさんのインファイトは激しくて、ピンクネイルを振るっては別の武器に持ち替えて銃を撃ち放つ。アクアマリンの水剣で鎌を弾いて、スピードスターを撃ってもミスリルシールドで防がれた。


「ラフィもそろそろボロボロじゃん。ショーでこんなに被弾したの初めてでしょ。」


「もぅ!!何で?!何で邪魔を!!」


「邪魔じゃないから。ただ、ちょっと不器用な気遣い的な。」


ステラヴィアの蹴りとアマネさんの蹴りがかち合う。ラビットT-60A5に換装して駆動しようとすれば、ピンクネイルの柄でボクの足元を穿って動作を潰された。


ラズベリーさんの銃撃がボクの動きをずっと妨害し続ける。


「ボクにはやらなければいけない事があるんです!!」


「ラフィはさ、真面目過ぎ。全部背負ってんじゃねーよ。」


ピンクネイルとスピードスターがかち合う。アクアマリンから伸びた水の棘が、至近距離からアマネさんのバリア装甲に突き刺さった!


「終わりです!」


「ハンッ、ラフィの負け。」


えっ?!


アマネさんの居場所が、ラズベリーさんと入れ替わった!カラントさんが倒れたまま、悪い笑みを浮かべてこっちを指している。


ステラヴィアで後退しようとしたボクの背中へ、トイ・ボムが投げつけられていた。グミさんもヒビ割れたバリア装甲を纏いながら起き上がっていた。


バリア装甲の破損を偽装した死んだフリ。ヒーローショーで使われる事はそうそう無いけど、同じようなプロレス競技だと偶に使われる悪役レスラー向けの技術。知識では知っていたけど、頭から完全に抜け落ちていた。


「ラフィくん!!EXPOは子供達の為のものって散々言ってたじゃん!!」


ラズベリーさんはボクへ抱き付いていた。


「ラフィくんが1番楽しんでなくて!!どうするの!!」


R.A.F.I.S.Sに想いが交差する。


『何で‥‥?!ボクが負けるの?』


『うん。ラフィくんはすっごい強い。でも、無敵じゃない。』


『やだよ!だって‥‥!ボクが負けたら‥‥!パレードが‥‥!未来が‥‥!』


『ううん。違うよ。ラフィくんは責任をとっても大事にしていて。でもその大きな力は皆と繋がって初めて意味のあるものになるんだと思う。』


『分かってるよ!!だから皆を守る為に‥‥!期待に応える為に‥‥!』


『1人で突き進んじゃダメ。大きな力の使命なんてものを勝手に作っちゃダメ。皆だってすっごい強いんだよ。分かったでしょ?これでさ。えへへっ、4人掛かりじゃ説得力無いかな?ごめんね。でも、ラフィくんは負けました!これは事実だよ!』


『きゃう‥‥!でも!ボクは多くのヒトの正義を塗り潰して戦って来たんです!ボクを恨むヒト達から逃げるなんて‥‥!!』


『あはは‥‥ラフィくんは本当に優しいんだね。でも逃げても良いんじゃない?』


『そんな!』


『ラフィくんはこの先も沢山の事件を解決して、そして悪いヒト達からもっと恨まれると思う。その全部とこうやって戦うの?シブサワはスポンサーなんだよね?守って!って言うのは何で悪い事なの?』


ラズベリーさんの心がボクの心へ手を差し出した。


『ええと、私はカラント程口が上手くないし。気持ちを伝えるのって難しいな。でも、これだけは言わせて欲しい。私はラフィくんの笑顔が大好き!今の笑顔は曇ってて、それじゃ悲しいし勿体無いよ!』


トイ・ボムが爆発した。


バリア装甲を喪失したボクは、そのままころんと転がって動けなかった。


負けた。


セツナさんの時の相打ちじゃなくて、完全に負けちゃった。


色んな想いが胸の中でせめぎ合って、R.A.F.I.S.Sが解除されて、気持ちが抑えきれない!!


「わあああ‥‥っ!!!」


声を上げて泣いた。


皆に背中を押して貰っている。皆が照らしてくれた道を歩く。


違う。


皆と肩を並べて進んで行く。皆と一緒に道を照らしてその先を見る。


ボクの気持ちはどこか孤独だった。


未来からやって来て、大きな力を持っていて、特別な存在で、使命を帯びていて、ずっと負けなくて。


タマさん達が応援してくれて、モモコさんがスポンサーになってくれて、その先をボクが1人で歩いているような。どこまでも突っ走って行くのが‥‥寂しかった。


だから沢山甘えたくなって、べったりで、一緒に居たいなって。それでもボクは強いから。ボクが戦えば皆が傷付かずに済む。タマシティの戦いで大勢が亡くなるのをR.A.F.I.S.Sが記録した。銃撃戦であっさりヒトが死ぬのをR.A.F.I.S.Sが記録した。


寂しいけど、それでも強いボクが前を歩くだけで皆がいつまでも笑顔で居られるのなら。


それがボクの責任だって。


でも、ボクは負けちゃった。もうどうして良いか分からない。


ただ、悔しかった。


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