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492、令嬢も守護天使も皆で食べる!遊ぶ!識る!!!

「あーっ!楽しかったわ!」


ドアを潜って出て来たボク達は、そのまま上空から見下ろせる喫食エリアでお昼ご飯。皆口々にTRPGの感想を言い合って、どうすれば良かったとかこんな展開があったかもと意見を卓上に並べ合う。


「結局終始ポチが暴走しっぱなしでしたわね。それを解除する方法があったと思うのですわ。」


「スマイルで依頼人にDMを送ってみても良かったかもしれません。」


「ちょっと進行を急ぎ気味にしてしまいましたわね。」


アイデアの凝った料理をアリスさんは注視しながら食べて行き、写真を撮って実食レビューをスマイルで纏めていた。


「お料理のアイデアは素晴らしいものですわ。通常の商品にするには生産コストが高すぎますが、工夫次第では参考に出来そうなものもありますわね。後程シェフを伺っても?」


「はい。作った学生さんも喜ぶと思います。」


食べて、休憩して、次行く場所を確認する。ホロウインドウの中でフィクサーさんが現地の混み具合を教えてくれて、ブランさんがブースのヒトにアポを取ってくれた。


『マックス兄弟の展示に大勢流れているお陰で、他のブースは少し空いていますね。にゃは、今日から土日ですから激混みすると思いましたが。それだけマックス兄弟の影響は大きいのでしょう。』


ボク達はアリスさんに連れられて、そのままグルメエリアを回す学生さん達へ挨拶を。


「貴方達のお料理、とっても美味しかったわよ。もし良かったら、ここに連絡してくれるかしら?その時は有意義なお話が出来ると思いますわ。」


「ありがとうございます!!」


シブサワから声が先に掛かったら仕方ないけど、そうじゃなかったらアリスさんが新作メニューを買い上げてくれる。将来の就職先の選択肢が増えるのは、この場を盛り上げる皆にとって大事な事だった。


「アリスさんったら積極的ですわね。」


ビャクヤさんはスカウト目的というより、純粋に遊びに来た感じみたい。敢えて言うなら夜の部の企業祭が目的で、こっちは赤翼の利益にならないと思っているのかな?


「そういうお仕事は外交官と人事部が対応しますの。学生さんに声を掛けても、必ずしも赤翼の期待に応えられる人材か保証出来ませんし。不足していたら、余計な混乱の元にしかなりません。」


難しい問題。でもアリスさんの攻めの姿勢は見ていて頼もしかった。そんなアリスさんをビャクヤさんは静かに見つめていた。


「ごめんなさい、付き合わせてしまって。」


「いえ、大事なお話でしたし学生さん達の未来が開ける事は大切です。」


綺麗な有料路を歩いて行き、EXPOを堪能する為にボク達の行進は忙しない。


ズンズン進んだ先、コントローラーを使って脳波操作じゃないARゲームを楽しめるブース。


「このっ!このっ!ああっ?!‥‥!!ウキーッ!!」


アリスさんの操る配管工のドワーフさんが奈落へ消えた。宙を舞ったコントローラーはお猿さんが投げた木の実のよう。


「何よコレ!ムキーッ!!」


ビャクヤさんの渾身のコントローラー投擲、快音を鳴らして吹き飛ぶも無傷だった。


「クッソ‥‥!ストレス耐久テスト会場かよ。」


チズルさんもガチャガチャやって、歩くキノコ頭の敵の体当たりが残機を減らした。


「あう‥‥!難しいです。」


脳波操作じゃないって本当に大変!如何に日頃から脳波操作に助けられているか、改めて意識させられる面白い体験だった。期間中、1人だけ一度もゲームオーバーにならずにクリア出来た猛者が居るらしい。凄いなって思った。


コントローラーを手放せば、令嬢な2人は清楚で気品溢れる花のよう。和かに笑い合いながらゲームの話に花を咲かせる。

ドンドン移動して、次の会場へ。


ボク達は並んで風船ガムをクッチャクッチャ、セバスチャンさんが「はしたないですよ‥‥」と小声で言うもビャクヤさんは聞こえないフリ。


ブランさんがスマイルカメラを構えた前で、皆でプクーッ!とガムを膨らませた。可愛い動物さんの見た目にガムが膨らんで、ウサギとカメが隣り合う。


甘くて美味しい形状記憶ガムは、見た目の楽しいパーティーグッズ。話せないままにボク達は互いのガムを指差して笑い合った。お口から動物さんが生える様子が面白おかしい!


「チズルもやりなさいよ。」


「あー、あー、護衛が忙しいんで。」


チズルさんはアリスさんの様子をヘラヘラしながら眺め、ポカポカと背中を叩かれていた。


「こほん、貴方達の研究を私はとても評価致しますわ。もし機会が御座いましたらこの私に連絡をお願いね。」


喜ぶ学生さん達を後に、ボク達はまだまだ前進。


「それじゃあ新曲、行きますよー!!皆、盛り上がっていこーう!!」


学生バンドのライブ会場、よく見える特別席でボク達は演奏を応援する。学生さん達はボクの顔を見ると一層気合が入った顔になって、更なる熱気が会場を覆った。


「憤りにまみーれたー!電子に支配されたせかーいでー!」


手に持ったマイクが勢いの良い声をボク達にぶつける。サイリウムを振って応援するのは楽しい!いつも応援される側だけど、こうやってライブを見るのも楽しいな。


「イエイ、この世界に君臨する俺達!進む前は暗がり、けれど怯まないぜ行こうぜyoyo!後ろから見てるだけじゃ冷めるぜhuu!俯瞰冷笑傍観諦観、それじゃモブだろ鏡見ようぜ!!」


ちょっとラップ調になればボクも縦ノリ気味にフリフリ、ふと気付けばビャクヤさんは静かにライブを見守っていた。


「このせかーいに、産まれた俺ーらー!!前見るーのは怖いけーどー!!それでも!行こーうぜー!!前見てあーるーけー!!」


前向きに、希望に溢れた歌。


『良いですよねぇ、モラトリアムは正しく希望と絶望が交差する時期。将来への期待、自分が主人公だっていう万能感、目を逸らしたくなる現実。成績、単位、論文、就活、独禁法への焦り!にゃはは、前へ突っ走って行きたくなりますよ。前だけを見ていたくなるんですよ。』


「ふむ、冷笑系悪魔がここに1人。正しくモブで御座いますね。」


『にゃはぁ、彼らの人生にとってワタシはモブで結構。ラフィさまの人生を隣で歩んで行ければ満足ですので。』


前は陰ながらボクの冒険を齧り付きで覗いていたいって。隣を歩きたいだなんて、フィクサーさんとの距離が縮まった感じがする。


『それだけラフィさまが魅力的って事ですよ。』


「恥ずかしいですけど‥‥ボクもフィクサーさんの事は大切に想っています。」


言葉にしてちゃんと伝えないと。フィクサーさんは嬉しそうに、ホロウインドウの中からにゅっと現れてボクの片腕を抱いてライブステージを見上げた。


いつの間にかアリスさんがジト目をボクへ向けていた。伸びた手がボクの腕をぎゅっと。護衛中だから両手を塞ぐのは‥‥会場を遠巻きに囲んで護るミニフィーがちょっと警戒を強めていた。


ライブの熱気冷めやらぬボク達は、それでももっと!楽しいをかき集めたくてマップを舐め回すように見て進んで行く。いつの間にチズルさんもちょっとテンション高めに意見を飛ばしていた。そんなボク達を後ろからセバスチャンさんとブランさんが見守ってくれた。


食べる!アイス、プリン、シュークリーム、パフェにベイクドモチョチョ!!


「今川焼き美味しいじゃない。」


「新作大判焼き、香り高くて最高ね。」


「回転焼き‥‥」


「チズル?今川焼き、でしょ?」


「ベイクドモチョチョじゃないんですか?」


「大判焼きが正統な呼び方よ。」


「お嬢様、それ以上は不毛かと。」


少し熱を帯びたベイクドモチョチョのお名前論議へ、セバスチャンさんのストップが掛かる。因みにセバスチャンさんはどう呼ぶんですか?


「今川焼き‥‥コホン、いえ。お好きに呼ぶべきでしょう。」


ビャクヤさんの裏切り者っ!って糾弾する視線が刺さっていた。


ベイクドモチョチョ、可愛い響きで好きなのに。ブランさんが言うにはベイクドモチョチョは遥か太古の時代、とある掲示板に書き込まれた一文が発端となって生まれた名前らしい。


今川焼き‥‥という名前が出てこなくてベイクドモチョチョって呼んだんだって。歴史の授業じゃやらない雑学。その呼び名は何百年も先の未来へ続いていた。


遊ぶ!反重力大縄跳び、B-B-A12ガンで撃ち合い、占いの館水晶玉投げ大会、JET紙飛行機!


『こちらEXPOコントロール、赤翼700便、1000フィートまで降下して下さい。そのままEXPOポイントへ直行して下さい。』


管制塔から通信が聞こえた!


『こちら赤翼700便了解しました!降下を維持します。』


順調な空の旅、お手製紙飛行機の着陸準備をそろそろ‥‥


『ラフィ?!ねぇ、今ランディングギア出てる?!』


『あれ?あっ!計器がおかしいです!ギア出てません!』


『おい?!こっち地上管制塔!!ランディングギアのパーツ余ってたぞ?!こっちの手元にあるんだよ!!』


『ええっ?!』


そんな?!紙飛行機が着陸する為に必要なタイヤが無いよ!!そうか!飛ばす時は普通に投げて飛ばしたから気付かなかったんだ!キャーッ?!もう滑走路は目前?!


『胴体着陸を試すわ!』


ビャクヤさんがボクに変わって操縦桿を握った!ボク達の紙飛行機は果たして‥‥!滑走路に火花を散らしながら侵入!720°ぐらい回転しつつも機体が軽かったせいか倒れず止まれた。


きゃーっ!!とハイタッチをするボク達の前、向こう離れた管制塔に居るチズルさんは疲れた顔で見て来ていた。


「これで着陸出来んなら最初からタイヤいらねぇじゃねぇか‥‥」


リアルな操作体験がウリのラジコン紙飛行機は、かつて地球にニホンコクがあった頃の飛行機体験が出来る。今はお空は危険だから航空技術もだいぶ廃れちゃったけど、昔はビュンビュン飛び回っていたんだって。


「実際に飛ばすのは紙じゃなくて、鉄の塊なんですよね。マギアーツも無しにどうやったんだろう。」


不思議な世界を垣間見た気分でブースを去った。


識る!!深未踏地の神秘性に魔素が与える影響、ニホンコクの出現による異界地独自言語の変化の歴史、知ってるようで意外と知らない獣尾族の解体新書、魔力量の違いによる魔素力学的変遷‥‥


勿論こういった研究結果報告的なブースも手厚い。ただ資料を展示するだけじゃなくて、ホロウインドウ内でアニメーションがちょこまか動いて分かりやすく説明してくれる。対象年齢小学生から、を意識した丁寧な解説はついつい眺めていってしまう。


TUBEでも解説動画をよく見ちゃうけど、知識が増える感じは楽しくて皆の視線は好奇心に振り回されるように忙しなかった。


「フィクサーさん、もしかして。」


魔力量の違いによる魔素力学的変遷。ざっくり言うなら魔素内に蓄えられた魔力が濃い程、魔素の重量が増加する‥‥そんなお話。質量は変わらないけど、重力の影響を受けた魔力に引っ張られて結果重量が増加するらしい。重量とは重力を受ける力の大きさの事。


この現象に覚えがあった。


『にゃは、ご明察。ワタシの魔法“空気を鉛に”は正にこの原理で発動しています。』


チョウリさんがフィクサーさんと契約を交わした時、空気が急に重くなってすっごい動き辛く感じた。空気が重い。まるでローションの中を歩いているような、そんな感覚。バリア装甲が無いと呼吸するだけでも大変なようだった。


「ふぅん、魔力が重力の影響を受けるって話は私も小耳に挟んだ事がありましたけど、魔素の重量にそんな影響を与えていたなんて。タクポの飛行実験でも想定外の重量になって計算が狂う事が多いのよ。」


ビャクヤさんは特に興味津々だった。今までは魔素の重量について色んな説を提唱する論文が沢山あって、コレっていう定説は曖昧だった。

でも多くの論文は魔素の重量は魔力量によって変化しない。何故なら魔力は所詮エネルギーでしかなく、質量を持たないから。という説を推していた。

でもここで発表された説は、つい最近学会に論文が提出されて大きく学説を揺るがしたものなんだって。専用に開発された精密な機材を使って計測を繰り返した結果、魔力が重力の影響を受けている事が判明したんだ。


『ヒトが魔力の秘奥を識る日はまだ遠そうですね。まぁ発展する様を眺めていますよ。』


フィクサーさんは楽しげに展示を眺めていたのだった。

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