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491、TRPGのシナリオはカオス奇天烈無茶苦茶な大乱闘へ

「俺のター君を返せぇッ!!」


ワンコ‥‥もといポチはター君と呼ばれたチンピラを掴んで持ち上げていた。


「首輪を持っていたチンピラなのだわ‥‥」


「もしかして重要NPCでしたの?」


「ヒトは見かけによりませんね。」


もしかして止めを刺さずに、低体力で敵のターンを迎えたら降参してイベントが進んだのかも。でも、これはTRPG!


「ビャクヤさん!ええと、説得をお願いします!」


どういう関係なのかとか聞き出して下さい!ビャクヤさんの技能は交渉系がメイン、成功率は高い筈。


「任せるのですわ。」


筋肉を隆起させてイキリ立つポチの前、ビャクヤさんは怯まずに向かい合う。次代の赤翼ホールディングスを牽引する令嬢、ビャクヤさんの交渉術は果たして。


「失礼しますが、ター様と貴方はどういったご関係で?私達もこの方々が倒れている所に気付きまして、お助けしようと思っていたのですわ。」


あっ、そうか。ポチには戦っている所を見られていないし、戦闘もこっちのターンだけで終わったから一切行動させていない。つまりポチはボク達とターさんが戦った事自体知らない筈。


ここでダイスが転がる。嘘を真にしてしまう、ペテンという技能のロール。交渉事の成功率を技能で大幅に上げていたビャクヤさんの前では、何でもサクサククリア出来ちゃう。


ポチは急に大人しくなって、聞く姿勢を取ってくれた。アリスさんも機転を効かせたペテンに感心した顔をしている。


「ター君は今まで俺を世話してくれたんだ。美味いものを食わせてくれて、その代わりにター君を困らせる奴らに拳をくれてやっていた。」


念の為に依頼人とターさんの関係を探りたいけど‥‥


ブランさんがハッキングロールで、さっきターさんのスマイルを覗いてくれていたみたいだった。


「ター君とやらは貴方の飼い主ではありません。良いように利用されていたのではないでしょうか。」


ブランさんの説得ロールのダイスは‥‥成功!出目が危ういけど、ポチは迷う素振りを見せた。


「利用されていた訳じゃねぇ‥‥!ただ、アイツは‥‥」


そこまで言った所で、急にゾロゾロと後ろから大勢の黒服が現れた。彼らを率いる男は、今回の依頼人であるカネモチさん!


「流石開拓者諸君、見事追い詰めてくれたようだ。さて、ポチよ。良い加減家出を止めようか。」


大きくイベントが進んだようで、急に吠えたポチが更に体を巨大化させて唸り声を上げる。


「お前は俺の主人じゃない!!どっか行けぇ!!」


圧倒的DEXから繰り出される問答無用の先制攻撃!


「きゃあっ?!」


「うわぁぁぁぁ?!」


巨体がボクの頭上を飛び越えて、カネモチさん達が纏めて吹っ飛ばされちゃった?!


「暴走しているの?!」


「そのようですわ。追い掛けましょう!」


アリスさんとビャクヤさんが突っ走る後ろ、ボクは慌ててカネモチさんを抱き起こしていた。


「ぐぐ‥‥ポチよ。やはりまだ“早かった”か。開拓者諸君‥‥奴を止めてくれ!このままではヤマノテシティが滅んでしまうぞ!」


ええっ?!


「いやいや大袈裟だろ。おっさん放って置いてとっとと行くぞ。」


「ラフィ様、今こそダイスの振り時に御座います。」


そうだ!応急処置のダイスロールに成功すれば、カネモチさんを復帰出来るかも。


「カネモチさん!一緒に戦いましょう!直ぐに治しますから!」


耐久値がもうミリ残りのカネモチさんに、応急処置っ!!出目が60以下で成功‥‥どうだ!


99。


99?!


ピィッ?!やっぱりダイスがおかしいよ!!ファンブル!!


「グハッ?!」


「カネモチさーん?!」


カネモチさんは息を引き取ってしまった。その姿がナノマシンに戻って消えて行く。医療ミスは初めての経験。あうう‥‥


「完全なランダムというのはそもそも存在し得ません。同じ結果を出そうとして、同じ結果を出せてしまう時点でそれを完全なランダムと果たして言えるのでしょうか。つまりはこの世の全ては必然によって成り立っている事の証左となるので御座います。」


哲学的なお話‥‥でもそれはそれ、これはこれ。


「野郎!ボスをやりやがった!!」


「応援を呼べ!!」


黒服達が騒ぎ始め、ピャーッ?!と逃げるボク達の後ろを何処からか現れた大勢が追ってくる!前にムキムキワンコ、後ろに黒服軍団!もう滅茶苦茶だよぉ!!


「ちょっ?!ラフィ?!何で敵が増えてるの?!」


「すみません!医療ミスしちゃいました!!」


「とにかくディープネオンを出るぞ!」


目前で凄い破壊音が鳴って、ポチの剛腕が唸りを上げて地下街の天井を殴り壊してしまっていた。崩落させながらも、上へ駆けるポチを皆でわちゃわちゃと追い掛ける。


そして地上、カネモチさんの黒服達が乗った戦闘ヘリがポチと殴り合っていた!あっという間にセキュアポッドが沢山やって来て、道路を戦車が駆け抜ける!


「何よこのカオス展開!」


「どこで間違ったのかしら?!」


「そもそも初手ファンブルの結果、組合アプリで依頼の詳細を何も確認出来ていませんので。当てずっぽう場当たり的な立ち回りをした結果、何らかの地雷を踏み抜いていたようで御座います。」


もしかしたらあのチンピラさん達は話せば分かるタイプだったり?1ターンキルしちゃったせいでまともにお話も出来なかったけど!それとも絶対に会わないといけなかった重要NPCがどこかに居た?うう、確かにサクサクお話が進んでもう終わり?だなんて内心思ってたけど。やっぱり重要なイベントを何個か逃してたかもしれない。


本来準備してからラストダンジョンの門を潜る所を、始まりの街から直行しちゃったような。


「まぁこれもTRPGの醍醐味よ!まだ失敗扱いじゃないんでしょ?つまり何かしら解決ルートがあるって事!」


走りながらアリスさんは、アプリで呼び出したタクポとの合流地点へ急ぐ。


「チズルさん!」


「はいはい!」


R.A.F.I.S.Sで意思を伝え合い、時間を稼ぐように2人でグレネードを投擲した。戦闘モードになってなければ、DEX順の縛りもないみたい。えい!最短距離で突っ込んだら爆発に巻き込まれるよ!


2つの爆発音で数人が吹き飛び、チズルさんがついでに投げていた消化器が白煙を噴き上げる。煙幕の中から出てくる瞬間が1番無防備になるんだから。警戒してなかなか白煙の中から出てこなかった。さっきのディープネオンで拾って来た煙幕が、追手の追撃を緩めたのだった。


「やるじゃない!」


「よくある撹乱方法だよ。」


「ラフィ様には通用しませんが。」


R.A.F.I.S.Sがあれば強力なジャミングとセットで使われても煙幕の外まで丸見えだからね。


ボク達はそのままタクポの中へ飛び込んで、窮屈な車内で作戦会議。どうやってあのワンコを捕まえようか。‥‥そもそも捕まえたとして何処へ報告すればいいの?


「カネモチって野郎くたばったよな?依頼人不在でもシナリオ進むのか?」


あっ!そうだ!今回の任務目標は確か‥‥


『カネモチ兄弟の脱走したペットを捕まえろ!!』


「カネモチさんには兄弟が居ます!どちらがお兄さんか分かりませんが‥‥」


分からない事があったらダイスに訊いてみよう!


「当機が‥‥」


「いえ、私も情報精査系の技能を取得しております。どうぞお任せ下さい。」


あまり前へ出なかったセバスチャンさんが、そっと主張する。ボク以外の満場一致でブランさんのダイスは転がらず。確かに2回もファンブルしちゃったけど。


そして回ったセバスチャンさんのダイスは‥‥5の出目を出した。あっ!クリティカルですよね?良い結果になるやつ。


「5〜1の出目はクリティカル、成功が担保された上でプラスで良い結果に繋がるわ。今回のシナリオは随分ダイスが荒ぶりますこと。」


アリスさんの説明に頷く間、クリティカル判定で得られた情報をセバスチャンさんが共有してくれた。ちょっと得意げなビャクヤさんと一緒にお話を聞く。


「先程倒れられた方は弟の方で御座います。どうもポチへ違法な生物実験を行い異形の姿へ変えた張本人のようでした。兄はその事を存じないようですが‥‥それとポチはペットという扱いですが、れっきとした獣人族の方のようです。」


獣人族、キャウルンさんと同じく等身大の猫や犬‥‥獣の姿をした亜人さん。確かに喋っていたし、思えば人語を介す獣人族の特徴ぴったり。見た目じゃ簡単には分からないんだよね。顔つきがどこかヒトっぽい方から、完全に獣の方まで幅広いから。


獣人族の人気職業は確かにお金持ちのペット‥‥もとい使用人。


「だったら手はあるわ。セバスチャンはハッキング系の技能を持っていますの。」


「良い方法があるの。ふふん、やっぱりTRPGはステータスのゴリ押しじゃなく、スマートにリアル知識を活かして戦ってこそよね。」


多分ここでポチさんをノックアウトすれば解決かな?方法自体は沢山あると思う。すっごい強いけど、お助けNPCとして都市警察が居るから数の暴力でも勝てはする筈。敵の攻撃に巻き込まれてボク達にもそれなりに被害が出そうだし、泥試合になりそうだからやりたくはないけど。


他にも全員で別々のタクポに乗り込んで、質量任せに突撃!とか。これも撃墜されたらやられちゃうかもしれないけど、最高速度で何回か衝突出来れば流石に倒せると思う。


でももっとスマートに。被害なく一方的に倒す方法がタクポの中で議論された。


二足で歩く巨大化したポチさんの身長は、おおよそ15m。ちょっとしたビルが歩いているようなサイズ感で、やや小柄な大怪獣みたいな感じ。


昔‥‥アングルスで似たような大怪獣と戦った事がある。その時の戦法を使えば‥‥!


ボク達の乗るタクポは2つ。もう1台用意して、通販で仕入れた頑丈なロープで2台を繋ぐ。そしてポチさんがビルの谷間を通った瞬間、全速力で飛び上がったタクポがロープで足を絡め取った!


「オウッ?!」


ポチさんが両手をバンザイした格好で思わず転倒、近くのビルにおでこをぶつけながらも地面に顔面を強打してしまう。


「今よ!」


セバスチャンさんのハッキングダイスロール!!


振られた100面ダイスが示した出目は78、セバスチャンさんの成功判定は‥‥85以下!やった!


ハッキングが飛んだ先、それはポチさんの装着しているスマイルだった。ポチさんが獣人族という事は、スマイルを必ず付けている筈。もし本当の獣だったらスマイルは要らないけど、獣人族さんなら電子決済に必須のスマイルが無ければお給料を貰っても口座にアクセス出来ない!


‥‥本当はスマイルアプリを経由しない、電子決済機能だけ付いた機器もあるけど。でもアレはスマイルを持っていない、都市へ訪問した亜人さんや特殊な事情を抱えたヒト向け。都市インフォメーションセンターで仮口座を作る際に貸されるんだよね。


勿論お金持ちのペットの職に就いたポチさんが、そんなものを使っているとは思えない。弟の実験に使われていても、兄が知らない以上は表向きの体裁は保っていただろうし。スマイルが無かったら明らかに不自然で直ぐにバレちゃうと思う。連絡も取れないんだから。


スマイルに侵入してやる事は?動画再生アプリを開き、犬の躾動画を音量全開で再生!!


内容はモスキート音!!ヒトの可聴域を超えた、普通の生活じゃ聞かない不慣れな音で脳を揺らす!!


動揺激しいポチさんは大パニックを起こし、起き上がる事も出来ずにジタバタしてしまう。高速で迫った2台のタクポが───顎に激突した!!


ポチさんのダイスロール音が鳴る。けれど直前の頭部の強打にパニックが合わさって、デバフにデバフが重なった状態。そんな状態で脳を追加で揺らす大ダメージを受けたら‥‥


ポチさんは沈黙してしまい。その姿が元のワンコサイズへ急速に縮んでいった。どんな体の構造なんだろう?ボクの腕の中でぐったりするポチさん。都市警察がやってくる前に混乱に乗じてとっとと離脱したのだった。


場所は変わってカネモチさんの邸宅の応接室。キャリーバックの中で大人しくするポチさんが突き出された。


「しっかし結局銃をあんまし使わなかったな。」


「ですね。戦いはロールプレイで何とかしちゃいました。」


「そういう事が出来るのがTRPGの醍醐味よ?殴り合いだなんて普通のRPGみたいじゃない。」


「初めてでしたけど、なかなか面白い体験でしたわ。臨場感といい、FDとは一線を画した経験でした。」


ついつい皆感想を言い合って、ブランさんとセバスチャンさんがが代わりにカネモチさんとやり取りしてくれていた。


軽快なダイス音が鳴る。ボク達全員分の。


へっ?なんの判定なの?


成功、失敗、失敗、ファンブル、成功、成功‥‥


ファンブル‥‥皆の目がアリスさんへ向く。アリスさんは苦笑い。ボク達の目前で、キャリーバッグを壊したポチさんが筋骨隆々に膨らんでいく。やっぱりポチさんを抑える為の何か重要なアイテムを取り逃がしていたらしい。


力技で解決して、運が良ければそれでもOKだった的な?けれどファンブルが出た時点で成功が3人居ても不運に天秤が傾いた。


「何でこうなるのよ!!」


30ターンに及ぶ大激戦の末、カネモチさんの邸宅は崩壊。チズルさんとセバスチャンさんとブランさんが戦闘不能、ボクも瀕死になりながらなんとかポチさんを瓦礫の山へ沈めたのだった。

ー自動生成AIシナリオー

AIが書き出したシナリオは奇想天外、時として支離滅裂。しかしTRPGのカオス体験の為、敢えてそう作られた。「シビアなサスペンスより、奇天烈コメディの方が面白いだろう?」トール・マックスの意見がこのカオスシナリオを作り上げた。

依頼の詳細にポチを抑える為の精神安定剤を、カネモチ弟が遣わした黒服から受け取るように書かれていた。しかしその黒服はディープネオン上がりのチンピラの身内。非道な実験を見かねた黒服がポチを脱走させ仲間内のチンピラと一緒に匿っていたのだ。

弟の悪事の証拠を集め告発するサスペンスシティシナリオは、ダイスの邪神様のご機嫌により怪獣パニックシナリオと変貌を遂げてしまった。

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