482、EXPOの陰で開かれていた学園祭を見学しよう
2日目も無事終了、スゥさん達を一度静謐の揺籠へ帰してパンタシアへ。
「ラフィ様、明日の予定ですが。」
「明日はヤマノテシティの自由な街歩きです。」
スゥさん達へ前々から伝えていた自由散策が明日の日程。ボクは1日EXPOから離れちゃうけど、最後のミュージカルだけ出演するから。
今後も外交するにあたって定期的にスゥさん達を街へ招きたいと思う。その為にもトラブル無く終えないとね。
「明日は当機もラフィ様へ同行致します。」
「はい、行き先次第では事前に許可申請がいるかもですし。」
自由散策というだけあって、事前に行き先が決まっていない。静謐の揺籠の面々を5班に分けて、それぞれ行きたい場所へ向かって貰う形になるんだ。ミニフィーとシブサワの護衛がお守りする形になる。
「アタシは相変わらずショーの練習よ。毎日内容変えるって考えたアホのせいでね。」
タマさんはぐったり、エンジェルウイングで招けば伸びた手がモフってくる。
「我もラフィに同行するぞ。農家をやる為に付いて来た訳ではないのでな。」
「お願いします。」
ご飯を食べて、とっとと明日へ備えないと。あったかご飯をかき込んで、お風呂で温まったら直ぐにお布団へ飛び込んだ。
「おはようございます、おはようヤマノテのお時間となりました。」
朝イチで先ずはニュースチャンネルの生配信に出演。ゲスト席にお尻を置いて、カメラへ向かって笑顔を振り撒く。皆っ!見てるかな?お祭り期間なんだし寝ぼけてちゃ損だよ!
「本日は特別ゲストとしてラフィさんにお越し頂きました!」
「おはようございます!ラフィです!今日も一日元気に過ごしましょう!暑いですから、熱中症には気を付けて!」
EXPOの話題は勿論、2大都市の多くの学校が行う学園祭についても話題が移ろう。
「どの学校も学園祭で賑やかなこの時期、生徒達へインタビューをしてきました。」
生徒達の笑顔が纏められ、そんな中にやっぱり疲れた顔の生徒さんも。
『俺もEXPO行きたいんすけど、5連勤で。夜の部にはちょっと顔を出してます。』
『例年の学園祭が2日間だったのに、5日間!私は前半組だから後半お休みですけど。』
『マジで疲れる。でも大人達は皆5連勤とかやってんですよね。ちょっと父さん見直した。』
いつもの倍以上の期間開催する学園祭はとっても大変。準備もそうだけど、当日お祭りを回すのもね。皆大変そうって思った。
「EXPO3日目からあのマックス兄妹率いる、魔具工学部がレースゲームを開催します!当日にも当日滑り込み参加チケットの入手チャンスがありますので!どうぞ奮ってご参加下さい!」
ボク達も応援したんだから!と一押ししておいた。
10時頃にスゥさん達と合流、向こうで纏められた予定を確認し合って行動開始!
『今回は貸切りではありませんので、社会のルールを守って楽しく観光致しましょう!にゃはは!言っときますが、アナタ達であっても犯罪は亜人犯罪扱いで罰せられますので。都市追放されたくなかったらどんな些細な行動もラフィさまへ確認して下さい。』
フィクサーさんの注意事項にスゥさんはしっかり頷く。
『大丈夫だ。皆とニホンコクのルールは勉強している。もう一つルールを学んだ。“郷に入っては郷に従え”。的を得た言葉だと思う。』
静謐の揺籠の掟、強要せぬ事は拡大解釈しやすいルールだなってボクも思っていた。こちらからも強要はしないから、ニホンコクの法を守る事も強要される筋合いは無いなんて。
「もしそんな世迷い事を抜かすようで御座いましたら、一度はっ倒してどちらが上か分からせをする必要が御座いましたね。」
「ブランさん。上下はありません。分かり合えなかったら、距離を取れば良いんです。」
ボクが転移ゲートを開かなければ、それっきり。それはスゥさん達も良く理解しているようだった。だから尊重し合おうって皆動いてるんだから。でも異文明との交流は経験がお互い少ないから、手探りで距離を測り合っていた。
『今日は宜しく頼む。真なる美羽よ。』
「こそばゆいです。ラフィで良いですから。」
スゥさんのスベスベモチモチな指先がボクを引っ張って、付いて来た数人と一緒にバスポへ乗り込んだ。他の班の皆も、ミニフィーとシブサワのヒト達に連れられてバスポへ乗り込んで行く。
行き先の1番人気はやっぱりピュアシナガワマリンブルー水族館!ボクも一度行ってお気に入りスタンプを押したお魚さんの王国。でもスゥさんが行きたがったのは‥‥
「ラフィ様、先方よりアポが取れました。」
「ありがとうございます。行き先はタカダタウンです!ボクの仲間が通う学校になります。」
普通の学園祭を見てみたいって。ラズベリーさん達が通う高校にアポを入れて、見せて貰う事になった。向こうは快諾してくれて、交流会の架け橋になれるのは光栄だって。
「でもどうしてですか?」
『EXPOを見て、幼き者達の輝きを見た。聞けばこの時期は全てが輝くようだ。揺籠を創る者として見てみたい。』
要するに子供達の活躍が見たいって事かな?スゥさんは子供が好きなんだ。
『幼き者は最も可能性に満ち溢れた存在だ。籠を紡ぐ者こそが宝なのだ。』
将来的に社会を形作る子供達、彼らのお祭りを女王として見て行きたいって。
『ラフィの輝きは眩い。しかし幼き者として扱うには成熟している。』
「ボクはまだまだ子供です。皆に支えられてここに居るんですから。」
バスポは学校裏の駐車場へ。教員さん達のタクポや簡易な駆動魔具がズラリと並ぶ駐車場は、満員なぐらい来場者達のタクポが敷き詰まっていた。けれど校長先生のタクポが場所を退かして、わざわざバスポの駐車スペースを作ってくれていた。
ありがとうございます。後でしっかりお礼を言わなきゃ。急なお話になっちゃったけど、スゥさん達もギリギリまで悩んでいて。EXPOでキュエリさんを始めにスゥさん達と意思の疎通が出来る人員が皆忙殺されてて。どうしても今日の事は社内でも後回しにされがちだった。どうせ貸し切り予定じゃないし、ボクに頼んじゃえって。
ボク自身もEXPOにミュージカルでいっぱい、いっぱい。ワープゲートだけ開いて、多忙なブランさんが確認に何度か行ったものの結局今日までハッキリしなかった。
スゥさん達だってヤマノテシティの事は分からないし、前の経験だけじゃ決めあぐねちゃうよね。スケジュール詰め詰めの弊害が出てしまっていた。
「我もこういう雰囲気は好きだが‥‥学園祭というのはEXPOのような派手さは無いのだな。」
「企業が絡む訳じゃないんです。生徒達のお手製のお祭りですし、予算も多くはありません。」
駐車場と校庭の境目に、手作り感満載のゲートが設置されていた。薄いベニヤ板で構成されたそれは頼りない感じでも、出来る限り華やかにしようって想いが装飾に現れている。
「文明の利器の真逆を行く祭りのようだ。」
『しかし足りない中での工夫がある。幼くとも賢い。』
近付けばパッとホロウインドウが大きく開いて、
『ようこそ!!』
だなんて。よく見るとゲートに誰かのスマイル端末がくっ付いていて、見れば近くで駐車場から来るヒト達を案内する生徒さんが操っているようだった。これなら予算は掛からない。
「盗難のリスクに目を瞑れば悪く無い工夫で御座います。」
「もし何かあったら、ボクが犯人を捕まえちゃいますから。」
案内する生徒さんは、ボクを見るとついついって風にサインを求めてくる。
「大丈夫です。」
ファンサービスの為に収納内へサイン色紙を持ち歩いているんだ。欲しいって言われる事が多くて、最近ブランさんの提案で用意するようにした。勿論数量限定だけど。ずっとサインしてたらスケジュールが遅れちゃう。
どうぞっ!って渡せば大はしゃぎで喜んで貰えて、ボクまで嬉しい気持ちになる。でも足は止めず、スゥさん達と一緒に校舎内へ歩いて行った。
『EXPOの支援は出来ませんが、各校に学園祭向けの商品を売り捌くのは規制が御座いません。』
ホロウインドウの中でフィクサーさんが指した先、ギャラクシー・トイズの風船が沢山飾られていた。
『学園祭を華やかせる小道具をこの時期、ギャラクシー・トイズは纏め売りで安く出しているんですよね。この催しはかき入れ時なんです。』
聞けばあちこちの学校と事前に契約を結んでおいて、小道具類を独占的に卸しているようだった。ギャラクシー・トイズもメガコーポだし、やっぱり取引の規模感が凄い。
ボク達一行へ沢山スマイルカメラが向いて、下駄箱並ぶエントランスで校長先生が挨拶をしてくれた。
「本日は我が校を選んで頂き、ありがとうございます。話を聞いた生徒達も皆やる気が漲っているようでして。」
「今日は宜しくお願いします。ラズベリーさん達は参加出来ませんでしたが、ボクが学園祭の様子を後で伝えようって思います。」
「きっと喜ぶでしょう。彼女達は学校のスターですから、自分達の催し物の話題が伝わったとあれば嬉しく思う筈です。」
校長先生はついつい話を沢山したくなっちゃって。でも、ブランさんがそれとなくボクへスケジュールの話題を振って挨拶を程々にしてくれた。校長先生の長話は聞いた事あるけど、こんな感じなんだ。新鮮だし時間が許せばもっと聞きたかったな。
スゥさんに付き添う美羽の皆は、校長先生へ深々と礼を。羽ばたきと魔法文字で挨拶をするけど、校長先生はどう返せば良いか困ってしまう。
『今日は見学させて頂く。』
R.A.F.I.S.Sで仲介して、そう伝えたのだった。
スゥさんは興味津々にボクへ聞いてくる。
『セイトだったか?彼らは同じ種族なのか?』
生徒達の誰もが獣耳のARを揺らしていた。モモコさんもオフの時はちょくちょく付けてたっけ。
「そういう買い切りのARアプリがあるんです。お値段も高くなくて、人気なんですよ?」
種類は沢山あるけど、どれも1000円いかないぐらい。簡単に仮装出来て、ものによっては顔全体を動物さんに変えれるARアプリもある。
『私達も使えるか?』
「はい。ですがストアのアプリがインストールされていませんので、後程キュエリさんへ申請をお願いします。」
動画サイトと連動してARを発生させる、スマイルにデフォルトで付いてるアプリもあるけど‥‥その話は今は良いや。使い勝手も良くないし。動画を見てると偶に暴発しちゃう。
羽ばたきで応えるスゥさんの側、こそこそしていた案内係の女の子2人がヒソヒソ話を。ここはエントランス、結構目立つ場所で。校長先生もそんな様子を見て顔を顰めていた。そんな女の子へスゥさんは興味津々に近寄った。サッと覗き込んで、驚く顔を見つめたのだ。
「ひゃあっ?!ああっ?!」
なんて叫んで、肩を叩いた校長先生に更に驚く声。
「こらこら、大事なお客様の前だよ?」
「あいっ?!あ、あははは‥‥このヒト達は。」
「ラフィさんの事は知っているかい?この高校の文化祭の見学へ来てくれたのだ。重要な異文化交流会の場所としてね。」
2人の女の子は慌しく、あれこれ捲し立てようとするも教員の1人に連れられて行ってしまった。
凄い動揺だったけどどうしたのかな?って首を傾げるけど、スゥさんに腕を引かれてそのままパンフレットを開く。
『これは?』
「紙製のパンフレット‥‥学園祭を案内してくれる地図です。」
紙は都市じゃあまり出回らないけど、ギャラクシー・トイズが卸しているようだった。高級品じゃないんだよね。必要性が薄いから取り扱うお店が少ないだけで。
でも実際に触ってみると手触りが新鮮で面白い。
「ラフィ様、お気をつけ下さいませ。紙は時としてヒトへ牙を剥く危険なマテリアルに御座います。その鋭利な刃で指を落とす者が続出したお陰で廃れたのだとか。」
カテンさんはパンフレットを覗き込む。
「これでか?ダガーよりも頼りない刃だな。」
「ブランさん、ネットのデマを拡散しないで下さい。指の皮を切っちゃう事はあるみたいですけど。」
ブランさんはしれっと真顔で冗談を言う。でもR.A.F.I.S.S越しに冗談だって気配が伝わるから騙されないよ。
スゥさんはパンフレットから警戒して距離を置き、魔法文字で行き先を指してくる。部活の出し物とクラスの出し物、有志の出し物に分かれていて。どれも面白そうってボクもワクワク。
「しかし本当に目立ちますね。美羽の一行にカテンまで居ると当機達の存在自体が催し物の一部に見えるでしょう。」
『にゃは、廊下を行く人々の視線を独り占めですよ!この学園祭で間違いなく1番目立っていますね!』
2人が茶化す間も、スゥさん達は廊下を行く皆に羽ばたきで軽い挨拶を交わす。勿論皆対応が分からなくて、愛想笑いで返すしかなかった。




