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481、2度目のミュージカルは観客達の度肝を抜く

日が傾いて、ボク達はステージへ。今回はスゥさん達が特別席から応援してくれて、ボクも笑顔とウインクで応える。他にもアリスさんとチズルさん、バーニスさんとクニークルスさん、イシダさん達も来てくれて。


実行委員会の皆も、テツゾウさんも‥‥昨日見たヒト達までやって来てくれていた。


皆が期待する程、ボクはもっといっぱい応えようって力が湧くんだ。


歌う、皆がうっとりと。魔法が幻想的に、誰もが目を見開く。踊る!人々の体が揺れる!物語が動き出すっ!観客席がショーへ引き込まれて行くっ!!


スゥさん達は声を出せなくても、目に焼き付けるようにしていた。何度も羽ばたきの拍手を、魔法文字で話し合う事もなくただ食い入るように前のめり。


そして───


ショーの物語にifが足される。


5日間続くショーなのに、同じ内容を繰り返すだけじゃ芸が無いってレイホウさんが提案して、モモコさんも頷いた。同じ公演が続く“無難”よりも、EXPOらしく新鮮な驚きが詰まった“びっくり箱”を仕掛けようって。


勿論ガッツリ台本全部を変えるレベルは無理だけど、もしここで勝者が変わったら‥‥なんてレベルのifは仕込める。


モモコさんを攫ったレイホウさんのアジトへ、真の黒幕が姿を現す。アウランさんが異形の影をけしかけるも、レイホウさんの槍捌きは凄まじくッ!


「キャアッ?!」


アウランさんがバリア装甲にヒビを入れて吹き飛んでしまった!これには観客席が大きく波打つ。特に昨日のお話を知っていたヒト達の衝撃は凄い。


「なんだこの強さは‥‥!」


真の黒幕は呆気なく倒されてしまい、レイホウさんは勝利の歌を歌った。


予想外の展開に、誰もの期待が急激に膨らんでいくのを感じる。ふふん、見てて。


そしてレイホウさんのアジトへ集まる、エンベリとデビルズ・エコー。モモコさんを巡って三つ巴の戦いへ発展する。


レイホウさんは昨日と違って本気でボクへ迫る!


ボクも本気で迎え撃った!!


この瞬間だけ台本無しの1本勝負、どっちが勝っても同じ展開が待っていた。


「ラフィッ!!」


「レイホウさんっ!!」


ボクの手にはスピードスター、そして袖先から大きく伸びたイルシオン。イルシオンはラインレーザーを纏わずとも、絡めば転倒を避けられない。足元を刈る動きは、虹渦島で学んだテンタクルスの触手。


槍先がイルシオンを弾く間にスピードスターが魔法弾を乱射する!レイホウさんとボクは縦横無尽にステージを駆け回って、乱闘を繰り広げる皆の間をヒョイヒョイと。


大きくイルシオンがステージ全体を薙ぎ払った瞬間、R.A.F.I.S.Sで繋がった皆がイルシオンを回避するよう一斉に跳ねたっ!地面を蹴る音、着地する音はどこかリズミカルに。飛んで、跳ねて、ステップを踏んで小刻みなイルシオンに巻き込まれないよう皆は足を忙しく。


場に鳴り出すBGMはカッコいい戦闘を彩って、整った足音が曲に躍動感を付け足した。


観客席がどよめく、激しい戦いの中で自然と紡がれ出した音楽が耳を揺さぶった。感動は声になって無意識に飛び出し、今回のショーの1番の見せ場に感動の嵐が吹き荒れる!!


ボクとレイホウさんの戦いは互角に拮抗する中、皆は台本通りに決まった動きで決めて行く。乱闘を装った過激なダンスは、馴れ合う距離感を感じさせないながらに一糸乱れず。靴底を楽器に、イルシオンが大きく薙げばfff(フォルティシシモ)!!


これはミュージカルなんだ!いつも通りのプロレスとは一味違うショーだからね!


ボクは槍先をスピードスターで弾きながら、背中にアクアマリンを召喚。大きく踏み込んだ水剣の一刀と槍が激しくかち合った。一瞬で両手に2本の水鉈を、ステラヴィアで小躍りするような激しい乱舞を浴びせ掛ける。


突き、袈裟斬り、投擲、手元に戻して交差斬りに、ステラヴィアで跳ね上がりながら回転斬り!流石のレイホウさんも凄まじい連撃を防ぎ切れずに、何度も被弾してバリア装甲を消耗してしまう。


肉薄した距離、瞬間的に動いた槍がボクのバリア装甲に穴を開ける。けど、ボクの手に握られた水薙刀がレイホウさんを吹き飛ばしてしまった。


「グッ‥‥?!流石だな。」


転がって着地、直ぐに起き上がるもバリア装甲の破損を確認する。小さなため息を吐いて、ボクの勝利を祝ってくれた。


「エンベリは負けませんから!!」


物語が動く。


モモコさんの元へ現れた、ブカブカの白タキシードの悪魔。フィクサーさんは仰々しい演技で高らかに悪の歌を歌う。背中から大きく生えた悪魔の翼、長い尻尾を隠さずに本物の悪魔として振る舞った。


「では、この者を攫ってしまいましょうか。」


フィクサーさんの普段とのギャップに声が上がった。


消えたモモコさんは電子の世界へ、ボク達も後を追って電子の世界へ飛び込んだ。サイバーテックなARがステージ上に電子の世界を創造する。SF全開なショーの中、裏方からこっそりアウランさんが呼び出した電子の怪物達と大乱闘!


エンベリ、デビルズ・エコー、ファントムの共同戦線が電子の悪魔を追い詰める!


「よくここまで来ましたね!にゃはは、纏めて相手をしてあげましょう!」


フィクサーさんは手の内を明かし過ぎないよう、衝撃のマギアーツと転移を中心に立ち回る。手を叩けばカラフルな魔法の爆発が、ブラックカラントさんとレイホウさんが転がってしまう。


捉え所のない動きは軽快で、でもボクとラズベリーさんの銃撃がフィクサーさんを吹き飛ばした!敢えて真剣勝負って雰囲気じゃなく、お遊びで相手をしているような態度のフィクサーさん。負けても余裕の表情のまま、ケラケラ笑って姿を煙に変えてしまった。


「流石はエンジェル・ベリーですね!良いでしょう、今回は人質をお返ししましょうか。」


消えればボクのスマイルにコソッと戻って来る。スマイルの中で早速寛いで、何処からか取り出したお酒を一杯あおった。


お疲れ様です。後は任せて下さい!


皆がモモコさんへ手を伸ばす中、ボクのイルシオンが大きく薙いで妨害する。そしてラズベリーさんがモモコさんを抱き抱えて救出した。途端に世界はSF世界から元の舞台へ変貌する。どさくさに紛れてエンベリ以外の面々は退場、ボク達は勝利の歌を歌ったのだった!





件のミュージカル、後半の内容ガッツリ変わっててXD

これは毎日見なきゃダメなやつだな?

#エンベリ #ミュージカル #EXPO


やべぇよ‥‥やべぇよ‥‥(尊死)

こんなん見せられて情緒が崩壊しそう

#EXPO #エンベリ 


レイホウのお貴族様の武芸強過ぎんだろ

もうランク20を超えた開拓者なのに取っ組み合って勝てる気がしない

#レイホウ #エンベリ #EXPO


レイホウってヒムロ家の当主様だよね?

あのラフィと互角の戦いしててヤバい

本気で戦ったらどっちが勝つんだろ?

#レイホウ #鬼当主


フィクサーが戦ってる所初めて見たけど大物感あるな

ラフィ含めた面々との戦いでも余裕そうだったし案外強いのか?

#フィクサー #エンベリ



日が暮れた夜の部、ホロウインドウから目を離したグミは隣を歩くヒミコを引っ張って野外シアターまで。陽が落ちた夜の部になってから、クロサワ監督がEXPOへ出展する新作映画をダイナミックな野外シアターに映し出す催しがあった。


シブサワフードカンパニーが贈る、ポップコーンとジュースが出店に並ぶ。向こうでラフィ達がはしゃぎ目に、空に浮かぶドローン席を揺らしていた。


「一緒に行ってくれば良いだろ?」


「映画の出演者として上映が終わった後にちょっと出番があるのよ。今日も、明日もね。」


今日は母と観ようとグミから誘っていた。開拓者家業を親子でやっていると、どうしても万が一の事態が頭を過ぎる事が多い。親子の時間を大切にする気持ちはより強くなっていた。


後悔だけはしたくない。もっと一緒に過ごして、笑い合いたかったなんて。


少し前まで生首姿だった母が、今は隣で同じシアターを見上げている。ラフィの天使の羽が奇跡を起こしてくれたお陰。エンベリの仲間同士、特別態度に出さないように意識している。それでもラフィへ強い恩義を感じているし、特別な気持ちも抱いていた。


今日は母と観たい。明日はラフィと観たい。開拓者なんだし、欲張りに生きて行こう。齧ったポップコーンはクシャっと歯で潰れて、濃い塩気に涎がじゅわり。時代は進めど、ポップコーンの旨味は変わらない。


「今日のミュージカルは大ウケだったねぇ。グミの歌声も冴えてたんじゃないかい?」


「母さんもね。雄々しい歌声は評判なんだよ?」


「ハッ、そうかい!錦鯉に男性らしい歌い方を指導された時はちょいと複雑だったが。」


ヒミコに指導したのはまさかの男性アーティスト、男性陣と並んで日々声を出す。最初は散々だったが、毎日プロの指導を受ければ技術がどんどん向上して行く。ヒミコのハングリー精神が、セミプロレベルの歌声を獲得するに至っていた。


「歌いながら体を動かすのは、中々堪えるものがあるけどね。」


「引退する年齢かしら?スーパーでパートでもしたらどう?」


グミの肩を拳で小突く。ヒミコはグイッとビールを飲んだ。品出しでバックヤードと棚を往復する女傑の姿は、直ぐにヒミコの脳内から消え去った。


映画が始まる。暗くなった空へ投影された映画は、要所要所で画面がARへ切り替わりアクションシーンを立体的に映し出す。トンファーを持ったラフィが暴漢達を薙ぎ倒せば、吹き飛んだ1人がARになって観客席へ!

思わず仰け反ってしまう迫力に、あちこちから歓喜の声が上がる。


ラズベリーの素人演技に失笑する小さな波、ブラックカラントにチンピラ演技の妙な相性に笑い声、演技なのか素なのか曖昧なグミがラフィへ襲い掛かれば


「頑張れー!」


なんてどちらを応援したのか分からない声援がまばらに聞こえた。


「頑張れー。」


隣でハッキリ聞こえた母の声に肩をすくめるグミ。結果は惨敗、トンファーを避け損ね‥‥


『アグッ?!痛った?!』


間抜けな悲鳴はしっかりと収録されていた。


「ハハハッ、」


「笑わないでよ。」


「失敗するのは仕方ないさ。次は避けられるようにならないとな。」


「はいはい。」


白身魚のフライのようなシナリオに、アクションシーンが濃厚なタルタルソースのように絡んでカンフー映画が進んで行く。


流石はクロサワ監督、ARを使った演出技術は素人とは思えないクオリティで。これが映画研究サークルの自作映画だなんて、言われなければ分からない満足感。EXPOへ出展するだけはある映像美だった。


カット割りは小刻み良く、冗長な長尺セリフを入れるのならとにかくアクションを挟み込む。短い尺へ詰め込んだトンファーのスイング、カンフーキック、ライフルのガンカタ、そして魔法少女!!


見所盛り沢山、エンベリファン必見の超豪華アクションムービーに会場は興奮で熱気を纏う。


そしてラフィを抜いたエンベリの面々と、タマとのアクションがARで展開された。結局NG入りしたタマの大暴走シーンから幾つか拝借、上手く繋ぎ合わせてエンベリの大苦戦をダイナミックに描き上げる。


演技ではない開拓者としての死闘は迫真の映像となって、平和ボケした都市の人々の脳をぶっ叩く───



一発の魔法弾がタマへ迫る。


反射的にミスリルシールドで防いだ視線の先、額に血の跡を残したラズベリーが銃を構えていた。


『何よ?まだやんの。いい?負けたら無理に食い下がらずに大人しく寝ていた方が生還率はずっと高いわよ。先輩からのご指導ご鞭撻(べんたつ)を有り難く受け取りなさいよ。』


『‥‥それでも。私達は負けません。魔法少女は貴方達、デビルズ・エコーに負けないんだから!』


頭から血を垂らしながらも笑みを浮かべるラズベリー、エンベリの面々が立ち上がって行く。タマは僅かに動揺を見せ、そしてエンベリのテーマソングが流れ出した!!



「ボコボコにされたって聞いたけど、やっぱりアイツ中々やるねぇ。」


「むーっちゃ強かったわよ。悔しいけど、ラフィの隣に居続けただけの腕はあるわ。」


台本無しの殴り合いでエンベリを圧倒しつつも、それでも負けずに最後まで立っていたのは魔法少女達。怒涛の攻勢を前にタマはバリア装甲を破損させて転がって行ってしまう。


「ふぎゃっ?!こんの‥‥!!覚えていなさい!これで勝ったと思わないでよねー!」


タマが消える中、レイホウを下したラフィが帰って来る。ビルは爆発しながら倒壊していき、最後には皆でビルの壁面を駆け降りて脱出したのだった。


映画とグミへヒミコの拍手が贈られる。愛娘が遂に映画へ出演、女優としてデビューしたのだ。親として鼻が高い!自慢して回れるママ友が居ない事をガラに無く惜しく感じてしまった。


グミはそんなヒミコの隣で少し小さくなっていた。年頃の女の子にとって、親に褒めちぎられるのは嫌じゃないけど反応に困る。素直に受け入れる事が、どうしてか気恥ずかしく感じてしまう。


開拓者としてヒトへ銃を向けられるグミも、この瞬間はどうしようもなく思春期の娘だった。


「じゃあこの後監督と一緒にちょっと前に出てくから。先に帰ってても良いわよ。」


「何言ってんだい。しっかり最後まで大女優さんの活躍を見ておくよ。」


「はいはい、分かったから。」


グミはヒミコの笑顔を直視する気が起きず、とっとと背を向けてラフィ達の下へ急いだのだった。

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