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471、木々は歌う、風船は踊る、サイバーテックの世界を魅了するメルヘン

「フーガもこのEXPOの話を聞いて、ラフィが関わるって言うから見に来たの。」


フーガさんは申し訳なさそうに語る。リコリコさんは遠慮なくカメラを向け、フーガさんもその事を気にする様子は無かった。


「永い間霧雨の森に居たから、この空気感に当てられちゃったの。フーガの使い魔達がお祭りをもっと盛り上げるって。フーガが展示品に夢中になっている間に消えちゃったの。」


森のお屋敷に入った時も、賑やかにボク達を歓迎してくれた使い魔達。こういう雰囲気が大好きなのか、大はしゃぎでお祭りに参加したがった。


「無許可に勝手に出し物をやったらダメってフーガも朝から言い聞かせていたのに。困った子達なの。」


「ええと、使い魔って?ラフィくんは知ってるんだよね?」


「はい。フーガさんのお友達です。色んな物に憑依出来て、操れちゃうんですよ。」


カーペットでも、ドアでも、シャンデリアでも。陽気で愉快な仲間達。ラズベリーさんは不思議そうな顔をしてフーガさんを眺めていた。


ピコンとボクのスマイルが開いて、ホロウインドウの中フィクサーさんがハムハムの様子を見せてくれる。



あれ何処の展示品?!木が歌ってるんだけど!

#T&Y EXPO #謎の展示


EXPO公式アプリに無いファンシーな展示があったXD

木がめっちゃ陽気に歌ってて可愛い

#T&Y EXPO #シブサワの新技術?


動画見てXD木が歌って踊って大騒ぎ

今回のEXPOはやっぱ凄えや

#T&Y EXPO #最近のミュージカルの木の役凄え


木の下で綺麗なお花が踊ってる

根っこを足代わりにブレイクダンスXDXDXD

#T&Y EXPO #フワラーダンス



もうなんか騒ぎを起こしてる?!きゃーっ?!急いで誤魔化さないと!


「行きましょうラズベリーさん!フーガさん!」


「うん!魔法少女緊急出動だよ!」


「後で何かお詫びをするから。」


緊急対応時は関係者は駆動魔具を使っても大丈夫。フーガさんは身体を黒い霧に変えてボク達に付いて来た。ラズベリーさんは一瞬ギョッとするも、ボクの知り合いだからって警戒しないで居てくれた。


「ああっ?!ラフィくんが飛んで行っちゃう!待ってー!」


緊急対応時にリコリコさんを抱っこして連れて行く事は出来ないけど、その場に残したミニフィーが手を繋いで案内する。お昼を食べたばっかりなのに、ヒーヒー言いながら走って追いかけたのだった。


ー昼飯後のマラソンの時間だぁ! ーまぁ一般市民だししゃーなし ー使い魔が何だか知らんが迷惑な ーこのままイベント見回るよりトラブルの一つぐらい ー相変わらず妙な依頼を受けるな ー霧になって飛ぶんか ーキャラT可愛い ー大人びた女児だなぁ


アクアマリンが水路を一筋、来場者達の頭上をラズベリーさんと並んで滑走する。皆思わず見上げて、向いた沢山のスマイルカメラへボクは笑顔で手を振りながら突き進んだ。


歌が聞こえて来る。勝手に開催された一足早いミュージカルに、ボクはぴょんと飛んでエントリー!


R.A.F.I.S.Sで意思を交わし、対応をボクがする事を警備のヒトへ報告。ラズベリーさんもボクと一緒に木々の間へ降り立った。


「皆さん!折角ですから、ちょっと歌って行きませんか?」


大事なのは皆に楽しんで貰うこと。フーガさんのトラブルは直ぐに警備のヒトから上へ報告が上がるけど、物々しく扱ったりしちゃダメ。柔軟に対応するよ。


木々は根っこを地面に這わして、枝を手のように振るい楽しく歌う。ウロが口になって低くも良い歌声が響く。歌声はファンタジー、でもアカペラじゃ物足りないよね。


ユリシスの中から飛び出したミニフィーは、ホロミュージカルを操り曲を奏でる。陽気な歌に合わせた賑やかな音符の花火。


ラズベリーさんと同じ振り付けて、ボクも一緒に声を出した。ファンタジーな歌声を支えるサイバーテック。テクテク歩いてウインクを送れば皆が笑い、両手の指でハートを作れば黄色い声が上がる。


R.A.F.I.S.Sが歌詞をほんのり伝え、つられて皆も少しずつ歌を口ずさんでくれた。使い魔達も大満足するような即興ミュージカルが終わると、自然と木々や花から憑依を解いてフーガさんの下へ。


木花は根を地面に下ろし、何事もなかったかのような様子でシン‥‥と静まり返った。ボク達に見送られて人々が離れて行く。近くの自販機の売れ行きが好調な様子だった。


「無事に収められて良かった。ラフィくんと居るとよく歌う事になるね。」


「歌うのは楽しい事です。嫌ですか?」


ラズベリーさんは笑顔で返す。同じ楽しい気持ちを分かち合えて、もっと距離が近付いた感じがした。


「あっ!」


EXPO公式アプリの通知が。“木々の歌声”なんてブロンズアチーブを獲得していた。即席でアチーブを作って対応してくれたらしい。EXPOはトラブルが起きても、それすらも利用してアップデートされるんだから。


『こういうしたたかさは企業らしいですね!にゃはは。』


フーガさんは使い魔達を指先で突いてお説教。ちょっとしょんぼりしながら使い魔達はフーガさんの日傘の中へ帰って行った。


「これで全部ですか?」


「それがまだ足りないの。何処に行ったのかしら。」


フィクサーさんがハムハムで指した先、またも事件が。



会場の上空で風船が踊ってる!

#T&Y EXPO #可愛い出し物


あれは何処の展示?公式アプリにないぞ

#T&Y EXPO #突発イベント


初の企業独占EXPOだからか毛色が違うな

風船面白イベントやってる

#T&Y EXPO



歌ったりはしていないけど、ショーのように風船がお空で陽気に身を揺らす。カラフルで形も様々。動物型から、お星様。バルーンアートでキュッと結んで作られた色んな形の物も。どれもEXPOの会場入り口で、アチーブ1個と交換出来る風船だった。


ドローンのように軽やかに動いて、大衆の目を惹き付ける。フーガさんは溜息を漏らして、勝手に使われた風船を弁償するって。


「そろそろショーの時間です。ラズベリーさんは先に行って下さい!ボクはこっちに対処します!」


「分かったよ!お願いね!」


ラズベリーさんはパパッと飛び出し、背中合わせにボクも飛び出す。ボクの背中を黒い霧が追いかけ、そのずっと後方をリコリコさんが‥‥ベンチに座ってへばっていた。真夏だもんね。無理をしなくて良いよ。


寄り添うミニフィーがペットボトルを差し出し、飲みながらも頭を撫で撫で。


『後でワタシが録画した真近の映像をリコリコに見せてやりましょう。宣伝配信の体裁を整えませんと。』


フィクサーさん、フォローをお願いします!


アクアマリンの水路はそのまま空の上へ続き、空をダンスホールにする風船達の中へ飛び込む。


大きなエンジェルウイングをバァッ!と広げ、どよめく来場者達へウインクを送る。ステラヴィアで水路をグルングルン!風船達をパパッとイルシオンに巻いて、放り投げる。


カラフルが空を埋め、和らいだ陽の光に皆の顔が緩んだ。これまで伸ばした水路に一斉にお花が咲く!ランダムな花々が風船達を囲んで、お空に蝶々結びのリボンが広がった!!


思わず誰もが拍手を空へ響かせる。口笛をアクセントに、手のひらが奏でる大合唱は熱気を帯びていた。


「楽しんでくれてありがとう御座います!!引き続き、 EXPOをお楽しみ下さい!」


風船達をイルシオンに巻いたまま、ボクはササっとフェードアウト。フーガさんの下へ戻った。


「最高だったわ、ラフィ。貴方は類い稀なる芸事の才を持っているのかしら。戦士なだけじゃなくて、このフーガを魅了する芸が出来るなんて。」


フーガさんは吸血鬼達の女王様。そんなフーガさんを満足させられたようで良かった。でもね。


「フーガさん、夜の部でやるミュージカルはもっと凄いんですよ?これで満足なんてさせませんから。」


不意にフーガさんの指がボクの頬を撫でる。ドキッとして見返すボクへ向けられたのは、とても嬉しそうな笑顔だった。


「期待してる。」


“空のダンスホール”なんてブロンズアチーブが手に入った。運営の対応が早い。


そしてリコリコさんが追いついて来る。肩で息をするリコリコさんの顔は赤くて。アクアマリンの水がパッと額を冷やした。


「無理しちゃダメです。熱中症になっちゃいますよ。」


「ごめんごめん。流石に間に合わなかったか〜。」


フィクサーさんがホロウインドウの中から、


『そんなアナタに特別な映像がありますよ?』


頑張る姿に応えるよう真近で撮った映像をお裾分けしてくれた。


「いいの?!サンキュッ!わ〜、凄い映像だよ!後で見よう!」



ーやっぱリコリコは持ってるな ーこの一連の流れも全部仕込み? ーアチーブあるし公式でしょ ー良いサプライズじゃん ー今回のEXPOは現地へ行きたくなるな ー配信見るだけなのは勿体無い ー治外街住みだけど今回は来たぜ ー最寄駅から10駅先のホテルまで完全に埋まってるんだよな ーそりゃコレは現地で見たいでしょ



視聴者さん達も喜んでくれているみたい。アチーブのお陰で運営の不手際って印象も無いようで良かった。ライブ配信は後でアーカイブから見れるから、EXPOは実際に現地で楽しんで欲しいな。‥‥でもホテルがそんな混んでるなんて。


「逃げちゃった子達はこれで全部なの。皆もっと楽しませてくれたって、ラフィに感謝してるの。」


フーガさんはそう言うと、見送るボクへ手を振って去って行った。R.A.F.I.S.Sに気持ちが流れて来る。EXPO期間中、空いている時間があったら一緒に夜の部を回りたいって。今日は難しいけど、ボクももっとフーガさんの事を知りたいな。そんな気持ちをR.A.F.I.S.Sに乗せたのだった。


ちょっとした混乱もあったけど、無事誤魔化してEXPOはつつがなく進行中。リコリコさんとあちこち回る内に日が傾いて、ミュージカルの時間が迫って来た。ボクの気持ちは段々とワクワク跳ねて、R.A.F.I.S.Sに乗った想いにリコリコさんのテンションも自然と上がっていく。


「そろそろアレの時間だよね。ラフィくん、ステージ開始前に何か意気込みとかありますか?!」


「今までで1番のステージにしますから。皆、絶対に見て下さい!」


ステージを良くする為に、ボク達だけじゃなくてフィクサーさんにも手伝って貰う。それに強力な助っ人がミュージカルのお手伝いを申し出てくれていた。開拓者は目立ってナンボって言うけど、ブランさんへやらせて下さい!って飛び付いて来たみたいで。


「あっ!と驚く演出を期待していて下さい!」


ボクは後ろ手を振って軽い足音を残して配信を後にした。

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