470、ピザvsお寿司軍団vs守護天使&魔法少女!!
「リコリコさん!ここがグルメフェスエリアです!学生さん達が生み出した新作レシピのお料理がズラリ、ですよ!
ぴょこっと跳ねるボクの頭に、良い匂いに思わず身を乗り出したカテンさんの大きな顎がのしり。
「色んな珍味が堪能出来ると聞く。お値段は幾らだ?」
「なんと!500円!!ワンコイン価格!!きゃーっ!安いです!!」
現金の無い都市内でも、500円=ワンコインという概念が共有されていた。企業が安さを謳う時、ワンコインってお得感あるからね。
ー宣伝フィあざとい ーきゃー頂きました ーなお500円は味見サイズな模様 ーその程度の出費を気にする層は客じゃ無いっす ー色々楽しめていいじゃん
「ラフィくんと一緒にやって来ました!でも意外と空いてるね?鬼混みかと思ったのに。」
リコリコさんの前、喫食エリアは空席が目立つ。
仕組みを知っているボクはドヤ顔。むふん、と上を指す。
そう、喫食エリアは浮遊のマギアーツで浮いた上空にもあるんだ!カメラが空を映し、自然公園の会場から離れたエリアを回遊する巨大ドローンが見えた。マシュマロクラウドでコーティングされた喫食エリアは、下から見ると大きな雲が漂っているみたい。
「ですからお昼時でも席がないなんて事はありません!快適なランチタイムを楽しめます!」
ーはえー金掛かってるな ー企業独占なだけあって豪華 ー今までの学生手作りEXPOとは違うわ ー遠慮無くシブサワ色を出していくぅ ーでも来場者的には企業的な快適さの方が嬉しい ー昼時の混み具合は毎度問題になってたし
今までは企業同士が牽制し合う中、学生達の手作りを押し出す方向性だった。企業はあくまでお金を出して、細かいアドバイスや運営に関わる学生では難しい所をお手伝いしたり。ガッツリとした技術提供は今回が初めて。でもやっぱり建前よりも快適さ。
古き良きって言葉は、最新を知っちゃうと中々口に出せないよね。
除夜の鐘はラジオチャンネルで、初詣はFDゲームのサイバー空間で、お年玉は口座の中へ透明なまま送金される。伝統は時代と共にアップデートしていくんだから。
伝統、大事!でも便利、もっと大事!!
現代っ子なボクは快適さを尊んだ。
料理系のブースで汗を流して調理に明け暮れる学生さん達が、ボク達へ手を振ってくる。
本格ジビエスープカレー。世にも珍しい、魔素の影響を受けていない原種の鹿肉をふんだんに使ったカレー。珍味だけど好んで食べられる事もなく、好事家達の間で少量出回るお肉を頑張って用意したらしい。
数量限定販売‥‥って言われると買いたくなっちゃう。
同じくカレー料理、廻天渦巻きカレー。目の前にあるカレーをチョイと味見。んっ美味しい。言われるがままにスプーンでかき混ぜる。すると色が変わってチキンカレーに変化した!もっと混ぜればビーフカレー、グリーンカレー、ムナンチョカレーに変身していく。
ムナンチョ風味が香ばしい。これも下さい!
ずっと続くベーコン焼き?
カリカリに焼かれたベーコンを摘む。んっ、んっ、と噛み続けるもいつまで経っても口の中で味が劣化しない。唾液と混ざって段々旨味が薄れて飲み込む準備が整うまでのアレ。あの口内で食材が萎んでいく感覚が無くて、いつまで経っても一口目の味を楽しめた。どうなってるんだろう?
因みに飲み込もうと思えば問題なく飲み込めた。ちょっと喉奥が脂っぽいけど。
ゴールデンパフェ。ボクに手渡された空の容器。底が収納になっていて、念じればクルクル底が回転しながらパフェを捻り出す。目前でにゅにゅにゅ、と伸びていくパフェは見ていて面白くて。
「きゃあっ!なんだか可愛くて面白いです!」
フルーツマウンテンだけじゃなくて、ゴツ盛りモンブランも買っちゃった!きゃーっ!モンブランがモリモリ迫り上がってくる!!
「わー、不思議な感じがする。アイデアが面白いじゃん!ありそうで無かったよね!」
「ふむ、パフェも思いの外量が多いな。詰め込めるだけ詰めた感じか。」
カレーをお口がアツアツ。ベーコンで脂の旨味を堪能して、甘々なパフェを満喫する。正に喫食!
上空からの景色も綺麗で、広大な自然公園を一望出来た。バリア装甲に守られた天空カフェから、安全に自然公園に住まう野生動物を観察出来るんだ。
ーカレー美味そう ーパフェめっちゃ出てくるな ー他にも十徳手羽先オススメ ー鳥の全部位が詰まった手羽先か ー凝縮ハンバーグも良いよな ー肉汁を限界まで詰めましたアホ飯 ーフォーク刺すと肉汁の噴水が上がるの笑う
3人で空の上から下界へヤッホー!楽しいお昼時を過ごした。
道を行くドローンをスマイルカメラでパシャリ!
「EXPOには遊ぶとお得な要素も満載です!」
ドローンカメラ巡り。会場中を周回する各ブースの宣伝ドローンをスマイルカメラで撮ると、EXPOアプリ内に沢山設定されたアチーブメントを獲得出来る。アチーブを10個集める度に、会場内に設置された自販機で何でも好きなものを1個無料で買えちゃう!
それだけじゃない。5時以降に開催されるEXPO夜の部で、アチーブを使って買い物も出来ちゃう?!遊んで得トク!
アチーブの中でもレアリティがあって、ドローン撮影はブロンズ。ソノコさんのお化け屋敷踏破だとゴールド。ゴールドになれば1個でアチーブ10個分の価値を持った。
会場に入るだけで『EXPOへようこそ!』のゴールドアチーブを入手出来る。
『真夏のEXPOだからね。遮光バリアである程度快適にするとはいえ、熱中症で倒れられちゃ大変だ。だから自販機のジュース1本分ぐらいプレゼントしても良い。ついでに、実行委員会の素晴らしいアイデアと絡めようじゃないか。』
モモコさんはそう言っていた。見て回るだけでゲームをしているみたい。ハムハムでもレアなアチーブの攻略情報が出回っている。条件不明な隠しアチーブもあるんだから。
‥‥その中のヒーローショー中に戦うボクの写真を撮るとかもある。攻撃をヒットさせた瞬間を撮れればゴールドアチーブ。取れるヒトはどれぐらい居るんだろう?
リコリコさんもアチーブの話を分かりやすく説明してくれた。
「私ももう結構アチーブ持ってるんだよ!共有モードで見せるね。ジュース2本分ぐらいかな?」
「我は3本は買えるな。お化け屋敷踏破分、ゴールドアチーブが多い。」
ボクは5本分。折角だから出来るだけ集めたいな。こういう収集要素好き。ヒーローショーのカメラアチーブ系は、ボクのスマイルカメラを使ってフィクサーさんが撮ってくれているから。さっきのショーで粗方取得出来ちゃった。
見回せば来場者達もアチーブ目当てもあって、積極的に全部のブースを回っていた。ただブースを回るだけじゃなく、やり込んでこそレアアチーブが手に入るんだから。
お陰で閑散とするブースは無くて、大勢に訪れて貰って学生さん達も楽しげにしていた。今までの準備がしっかり報われるよう、実行委員会の皆が出したアイデアが一層EXPOを盛り上げるんだ。
喫食エリア付近で色々紹介しながら歩いていれば、にわかに地上の喫食エリアの方が騒がしい事に気付いた。リコリコさんが指した先、人集りが出来ている。興奮して叫ぶ声、誰もの声は熱狂的で。
「見てきます!」
飛び出すボクが見たものは。高速回転しながら宙を舞う円盤、トロリと溶けたチーズに焼きパイナップルが並んだピザ。
宙を自在に舞い、高性能ドローンのように飛び回るお寿司。マグロ、サーモン、サバ、エビフライにカルフォルニアロール!!
それらを追い掛けるラズベリーさんと目が合った。目線が助けて!ってボクに縋るようだった。
何が起きているのか分からないけど、お昼ご飯が反乱を起こしている?!料理のクーデターに喫食エリアはざわめいて。激しくぶつかり合う和洋の食文化代表が、チーズとお米を撒き散らしながらも大激闘。
「皆!危ないから下がって!‥‥あうっ?!」
武器を抜く訳にもいかずに、素手で追い回すラズベリーさんのおでこへお寿司が体当たりをくらわせていた。
「お手伝いします!」
ボクもピザへ飛び掛かる。浮遊のマギアーツかな?宙を浮くピザの挙動は鋭く、ステラヴィアで滑走しても薄く小さいせいで手が掠らない!
ホロウインドウの中でフィクサーさんが面白そうにボクを撮る。手を貸して欲しいです!
『まぁまぁ、もうちょっと頑張りましょうよ。ラフィさまなら悪魔の力が無くてもお昼ご飯に負けませんって。』
もぅ、笑っちゃダメです。
R.A.F.I.S.Sへラズベリーさんを接続、息の合った連携で戦うよ!ラズベリーさんの指先をすり抜けるマグロ。追った先で、口を開けたボクが待ち構える。躱そうとするマグロが身を翻すも、ステラヴィアで半回転したボクがバクンッ!!
んっんっ、美味しい。
この時初めてお寿司達がボクを敵だと認識したようだった。一斉に迫るサーモンの土手っ腹、ピザが急襲を仕掛けて轢き飛ばす!サバをラズベリーさんのトイ・ウェポンが殴り抜き、エビフライをアクアマリンの水刀が一刀両断!
再び飛来するピザが水刀をすんでで避け、ラズベリーさんのハイキックすらヒラリと避ける。伸びたイルシオンが動きを牽制して、宙を転がるカルフォルニアロール共々翻弄した。
カルフォルニアロールが力を溜めるよう、宙で高速回転!!
時間にして1秒───来るッ!!
イルシオンの隙間を抜けてボクへ突っ込むカルフォルニアロール。でもボクの体は、ステラヴィアでバク転して飛び越すように動いていた。指した先が急に深い霧に覆われ、カルフォルニアロールは姿を消す。ツキシロの満足げな唸り声を残して霧は消え去った。
ボクの背後を脅かすよう動くピザ、その背後へラズベリーさんは身を滑らせる。突き出した軍用質量ナイフが、ピザの胸元?を一突きにしてしまった。
指先で操られたナイフがあっという間にピザを八つ裂きに。イルシオンの上に力無く切り身が横たわる。パパッとナイフをしまったラズベリーさんは誤魔化すように笑った。
「あはは〜、ラフィくんありがと!丁度私もお昼にしようかなって時に巻き込まれちゃって。でもこれ何だろうね?」
「あんなに宙を自在に動くなんて、魔法で操られていたのかな?」
と、ホロウインドウの中から片腕だけ突き出して、ヒョイと姿を現すフィクサーさん。指を鳴らせば、もやもやした希薄な何かを掴んでいるのが見えた。
「にゃは、魔法生物‥‥使い魔の類いですね。」
首を傾げるボク達の前へ、群衆を掻き分け白肌の美少女が現れる。可愛いポップなアニメキャラの笑顔が眩しい、キャラシャツを着こなすフーガさん。
「ごきげんよう。悪いわね。EXPOの雰囲気に当てられて、使い魔達がはしゃいじゃったの。」
誰?って風なラズベリーさんの前、フーガさんに挨拶を。
「お久しぶり‥‥って程でもないですね。こんにちわ。」
オシャレな日傘を差したフーガさんは、何やらトラブルの気配がして。落ち着きなさそうに傘を弄って揺らしている。困った事があったらボク達に相談して!
「その前に、先ずは迷惑を掛けちゃった子達に謝らないと。」
料理の暴走に巻き込まれたヒト達へ、フーガさんはサッと頭を下げる。怒る気配もなく、寧ろ面白いものが見れたって笑っていた。
リコリコさんが一部始終を撮りながら、事件の匂いにワクワク顔。
「身構えなくていいの。深刻な話じゃないけど‥‥放っておくとちょっと困った事になっちゃうかも。」
フーガさんはボク達へあらましを語ってくれたのだった。




