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467、もうEXPO真近!今こそ皆の心を一つに

B地区、シブサワ自然公園にて。既にT&Y EXPO真近になった会場は生徒に学生さん、教員の方々で賑わっていた。自然公園の中でも自然保護区の反対側にある、レジャーがメインの大きな原っぱ。トウキョウシティの敷地の広大さを感じさせる広場は、ずっと向こうまで続いていて。


テントが立ち並び、出し物の舞台が整えられていく。既にお祭りの雰囲気に会場は賑やか、笑い声に気合の入った掛け声がそこかしこから聞こえてきた。ラズベリーさん達と一緒に回るボク達も、皆に手を振られて笑顔で応援して回っていた。


ボク達の今のお仕事は皆のお手伝い!特に出し物の準備で力仕事が必要になったら、強化外装を着込んだボク達の出番。高い場所へ何かを設置するお仕事も、癒しを振り撒いて英気を養うのも何でも御座れ。


雑務依頼扱いで、ピロンとスマイルが通知を鳴らす。あっ!ソノコさんからだ。不思議発見部の出し物はお化け屋敷。


「ラフィさん!こっちです!」


向かった先でソノコさん達が大きなテントを設営している所だった。


「手伝います!」


ユリシスが開いて、ミニフィーが3体ぴょんこと飛び出す。皆が重たそうに動かすテントの部品を、サッと組み立てて直ぐに設営完了!ホロウインドウの中でフィクサーさんが設営手順を図解で分かりやすく見せてくれたから簡単だった。


「わっ!もう出来たの?!」


「すげー!小さいのに簡単に持ち上げるんだもんな。」


褒められるのはこそばゆいし嬉しい。でもどうしてお化け屋敷を?


「前の体験で面白い動画が撮れたから。学校の先生とかに掛け合って予算出して貰ってね。ラフィさん達のARを投影して、あの迷宮での戦いを真近で見れるダイナミックなお化け屋敷にしちゃおうかなって。」


AR映像の編集は皆未経験だったけど、専門家を招いて色々教えて貰ったらしい。どんな出来になるか楽しみだな。


手を振ってお別れするボクのスマイルを、ラズベリーさん達から届いたメッセが突き回す。内容はお仕事というより、もっと気楽な雑談みたいなやり取り。皆バラバラに動いてあちこち手伝って回っているから、顔を合わせてお話しする時間もないんだよね。


皆にも沢山雑務依頼が届いていて、てんてこ舞いって風だってメッセが届いていた。建てたトークルームにメッセがどんどん投稿されて、お仕事の片手間に電子のお喋りを。フィクサーさんが忙しいボクへ定期的に見せてくれた。



ラズ『思いの外忙しいよね!』


グミ『力仕事ばっかり。魔法少女を何だと思ってるのかしら?』


カラント『今日は一日ガテン系魔法少女として業務に勤しまなければな』


アマネ『ダル‥‥』


ラフィ『終わったら皆さんも癒しますから!頑張りましょう!』



トークルームへメッセを放り込んで反応を楽しむ。皆が皆そんな感じにすれば、トークルームは段々とカオスな状態に。



ラズ『今朝の朝ごはんはピヨご飯だったんだよ!(目玉焼きの上で踊るタコさんウインナーの画像)』


アマネ『ピヨご飯って何‥‥?』


カラント『(ハムハムから拾ってきたであろうネタ画像)』


グミ『変な画像上げないでよ!作業中にニヤニヤしちゃうじゃない』


ラフィ『ピヨご飯と言えば料理同士を戦わせられる改造調味料が話題になってますね!』


カラント『(カットステーキとサバの味噌煮が皿をひっくり返す勢いで揉み合うGIF動画)』


ラズ『笑わせないでって!!変な目で見られちゃうじゃん!』


アマネ『振り掛けるだけでそんな料理が荒ぶるの?食べて大丈夫なやつ?』


ラフィ『美味しい調味料ですよ!改造品、この前ブランさんがちっちゃいアイスボール詰め合わせの中に振り掛けて───』


ラズ『想像しただけで笑っちゃうから!』


グミ『あれ振り掛けた食材同士が磁石みたいにくっ付いたり反発したりすんでしょ?』


ラフィ『(アイスボールの詰まったバケツが弾け飛ぶGIF動画、リビングでカラフルなアイスが跳ね回り画面外で放たれたキックが映り込む)』


カラント『これは酷いのぅ』


アマネ『リビングでやるなって』


ラズ『もう!暫くトークルームは見ないから!』


グミ『あんま不真面目にやってるとキャウルンにキレられそう』



あの時は大変だった。久しぶりにタマさんがキレて、イタズラをしたブランさんが応接室の方まで蹴り飛ばされてたっけ。リビングのそこかしこをアイスが溶けるまで飛び回って、最後にはフィクサーさんがギュッと空間ごと圧縮して一纏めに。カテンさんが纏めて食べてしまった。頭をキーン、とさせてたな。


そんな事を思い出しながらも、会場の飾り付けを手伝っていく。実行委員会の皆も総出で案内ホロ看板の設置や、ルート案内ARの構築作業に忙しそう。細かい機器を地面に刺して、プログラムを弄り回していた。


「ううん?あれ、おかしいな。」


ルート案内ARがあらぬ方向を指して動かない。ボクのホロウインドウからフィクサーさんがにゅっと出て、


「分からない事がありましたら、どうぞARデザインコンサルタントへご相談を。にゃは、今ならお得な無料サービス期間中ですよ?」


驚く学生さんもフィクサーさんの的確な助言を受ければ、直ぐに飲み込んで設定を完了させた。


「ありがとうございます!助かりました!ちょっと理解が曖昧で。」


手をヒラヒラさせ、フィクサーさんはボクのスマイルへ戻って行った。フィクサーさんも楽しそうで良かった。


お昼の時間になると、皆予め用意していたお弁当を取り出して食べ始める。鳥のさえずりと一緒に聞こえてくる楽しげな声。段々会場が形になって行くのが嬉しいって声が多かった。


ボク達魔法少女組も集まってご飯っ♪


実行委員会の本部テント前、パンタシアの中から出てきたブランさんがサンドイッチバイキングを用意してくれた。


「わぁっ!美味しそうです!」


「どうぞラフィ様。他の方もお好きに食べて下さい。」


「いいの?!」


「何よ、気が利くじゃない。」


摘みやすい一口サイズのサンドイッチの具材は様々。オーソドックスなハムチーズもあるし、カツサンドに天ぷらサンドなんてのも。クリームが美味しいデザートサンドにはフルーツが詰め込まれていた。


コウタロウさん達もテントから顔を出し、ボクに招かれれば皆でサンドイッチを手に取る。


「誘ってくれてありがとう。はははっ、美味しいな!複写ゲルを使っていないのか?食感が本物だ。」


「ラフィ様のお口へ入る食材は全て本物に拘っていますので。おこぼれを有り難がって‥‥どうぞご堪能下さいませ。」


皆で囲っていると、付近でお弁当を食べていた学生達が様子を見に来る。中でもお調子者なヒトがサンドイッチを指せば、勿論断られずに受け取れた。そうなると皆寄ってきて、思いの外大勢でサンドイッチパーティーをする事に。


急いでブランさんが作り足してくれて、気合の入った食材を挟んだサンドイッチは大好評だった。


「大騒ぎになっちゃったね。」


キャウルンさんはちょっと呆れ顔で。食材から漂うセレブリティがサンドイッチを煌めかせる。ボクは皆で騒ぐのは大好きだから良いんだけど、遠巻きに見る教員のヒト達は苦笑いだった。


そんな中、コウタロウさんがボクへ語り掛ける。


「その。このタイミングで言うのも変だと思う。ただ、やっぱり言っておきたくて。」


キョトンとして見上げるボクへ向き直った。そして深々と頭を下げる。


「ゴーストの件、ラフィさんの捜査が無ければ私達は助からなかった。ありがとうございます。」


ボク達がゴーストを追い詰めて、コウノトリの翼の捜査をした結果実行委員会の皆を誘拐する計画を見つけられた。こう言う時は謙遜したりしちゃダメ。ちゃんと感謝を正面から受け止めないと。


「はい。皆さんが無事で良かったです。」


気付けば実行委員会の皆がボクへ頭を下げていた。R.A.F.I.S.S越しに本気の感謝の気持ちが伝わって来る。ボクの事を命の恩人だって。


「コウタロウさん。貴方はあのキュエリさんを説得して、このEXPOを勝ち取ったんです。大きな壁を乗り越えてもっと凄いヒトになったんですから。絶対このEXPOを一緒に成功させましょう!」


頼りにしてるよ!って手を差し出す。ボクの小さな手が、コウタロウさんの大きな手に包まれて。握手が交わされるのと、流れを見守っていた場の皆が歓声を上げるのは同時だった。


コウタロウさんは少し涙ぐんで、


「はい‥‥っ!」


今までの事が想い返されたように、R.A.F.I.S.Sにコウタロウさんの感情が波紋を広げた。小さな時から今までずっとトップを走り続けるのは大変だった。遊ぶ時間も削ってたゆまぬ努力を重ねた結果、今へ繋がっている。


なのに悪い大人に騙されて絶望を味わった。後からボクのゴースト捜査に助けられた事を知る。すっごい感激したみたいで、ボクについて沢山調べて。今までボクが駆け抜けて来た凸凹な道を自分の人生と照らし合わせていた。


ボクと同い年だった頃は何をしていたんだろうって。いつもトップからクラスを見下ろしていたのに、知らなかった外の世界にはそれ以上に高い所で危険な道を駆け抜ける子供がいる。


人生を見つめ直す、良いキッカケになったようだった。


「共にEXPOを盛り上げて行きましょう!」


お昼過ぎ、皆の準備はより気合が入っていた。キュエリさんもシブサワのヒト達を連れて視察にやって来る。まだお祭り前なのに、熱気で昂る会場の空気感に関心したみたいで。


「何だ、随分やる気が(みなぎ)っているな。」


身なりの良いスーツの幹部のヒト達も満足げに頷いていた。


独占で出資する以上、このEXPOにはシブサワの威信も掛かっている。学生達のお祭りとは言え、トラブルがあったらシブサワには荷が重いなんてケチを付けられちゃう。独占だからこそ責任も重かった。


皆の準備に不備が無いか直に見て回る。キュエリさん達が会場を回れば誰もがはつらつとした声で挨拶を。忘れてはいけない。ここは就活の場でもある。学生達からすればメガコーポの外交官は、先生や教授よりも気を遣う存在。連れ添う教師達も愛想の良い笑顔で対応して、次々投げ掛けられる質問にペコペコしながら答えていた。


「ああ、ラフィ様。準備は順調そうですか?」


幹部のヒト達に囲まれて、ボクも色々聞かれちゃう。皆がすっごい張り切ってる事に関しても、お昼に急遽(きゅうきょ)開かれたサンドイッチパーティの事を説明した。


「それで、皆とってもやる気が出たんです。元々やる気満々でしたけど、もっと!頑張ろうって思ったんだと思います。」


キュエリさんは舌をチロっと出して見回した。


「差し入れか。ふむ、シブサワグループ独占である事に対するメリットを分かりやすくするのは良い。今までは複数の企業で出し合っていた分、どこかの企業が出しゃばれば顰蹙(ひんしゅく)を買いやすかった。」


エンベリのショー関係で、ボク担当の専属外交官としてキュエリさんが実行委員会の皆とも関わっていたけど。逆に実行委員会に対してあれ以上関わるのは難しかった。でも今回は独占だからサポートは好きにやって良い。


「でしたら今日の作業が終わりましたら、おやつを配るのはどうですか?疲れていると思いますし、甘いものが欲しくなると思います。それとボクの癒しを撒きましょう。」


おやつが有ると皆やる気がもっと出るかな?ボクだったらおやつが楽しみで頑張っちゃう。ボクが好きなスイーツを皆にも味わって欲しいなって。


「良いだろう。費用はこちらで負担する。何せスポンサーだ。こういう出費は全額経費で構わないとも。」


「ありがとうございます。ここまであまりにも色んな事件がありました。EXPOの開催が危うくなったりで、皆に沢山心配を掛けちゃったと思うんです。聞けば1年以上前から沢山準備しているって。ですから、少しでも最高の結果を残せるようお手伝いしたいんです。」


良いものを食べて、沢山癒されて、元気いっぱいになって当日を迎えて欲しい。ボクのお願いをキュエリさんは快く受け入れてくれた。周りの幹部のヒト達も、


「ラフィ様は遠慮なく頼って下さい。立派なお考えだと思います。」


皆の気持ちは一つのようだった。早速ブランさんと連絡を取り合いながらサプライズに向けての準備を行った。


シブサワのヒト達がやって来ると、流石にラズベリーさん達もトークルームへ視線をやらずに、あくせくと体を動かして右から左へ走って運んで汗が額を伝う。


今は夏真っ盛り。夕暮れ時になってやっと気温が落ち着いてきた。


タマさん達デビルズ・エコーの皆は、朝からプライベートフォレストでミュージカルの練習中。そろそろ本番に向けて練習も大詰めになっていた。売れっ子アーティストの指導もあって、皆の歌声は凛々しくも美しいんだ。元々体力も肺活量も十分あったから、後は技術だけだったし。


日が暮れると今日の準備は終了。予定よりも早めに進んでいて、これなら前日には1日余して準備が終わっちゃいそう。


事前に用意したEXPO会場全体のマップを確認しつつ、各校のブースの位置関係のズレをコウタロウさん達が確認し回っていた。ぐるりと見渡せるような広さじゃなくて、もっと広いから。確認するだけでも大変そう。ボクもラズベリーさん達と一緒に、最後にしっかり確認を行った。


最初に確認しても、いざブースを組み立てると結構ズレちゃったりする。案の定そこかしこで予定よりも広かったりして、明日再調整をお願いして回る事が決定した。このままじゃ大勢のお客さんが行き交う通路が狭まっちゃう。


皆が帰り支度を始める頃、会場全体に放送が入る。


『皆さん!今日はお疲れ様でした!最後にボク達シブサワグループから差し入れがあります!美味しいスイーツをどうぞ受け取りに来て下さい!それとボクが癒しますので、遠慮なくどうぞ!』


そこかしこから歓声が上がって、ゾロゾロと皆やって来る。ブランさんが卓上に用意してくれたスイーツは、虹天リゾートタウン発。深未踏地で採れた食材をふんだんに使って製作された限定スイーツ!レインボーケーキ!!


ミライさんにもプレゼントしたスイーツはボクのお気に入り。結構高いけど、キュエリさんはOKを出してくれた。


伸びる手が次々と個別包装されたケーキを持って行って、早速齧ればギュギュッと詰まった甘味にほっぺが落ちる。ぎっしり詰まった一口ケーキの中、仕込まれた収納の演算陣を噛んで壊せばフルーツやあったかなチョコがまろび出る。


普通に中へ具材を入れるのとは密度が違う。一口サイズなのに大満足なボリューム。


大好評で、皆はしゃいで口々に感想を言い合っていた。美味しいって気持ちを共有出来たのが嬉しくて、ボクも笑顔になっちゃう。好きなスイーツを褒められるのは気持ち良いからね。


そしてボクのエンジェルウイングがふわり、大きく開けば皆の視線が釘付けに。撒かれた癒しの波動が誰もを脱力させていった。疲れた顔の血色が良くなって、緊張に強張っていた体が緩む。


就活の場でもあるのは分かっているけど、結局は楽しんだもの勝ちなんだから!1年間温めたインスピレーションで、お客さん達をびっくりさせちゃおう!!


R.A.F.I.S.Sがボクの気持ちを伝え、皆の心が一つになったのだった。

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