465、空前絶後のはちゃめちゃレース!!
レース開始、皆で一斉にスタートダッシュ!!
TO・TOのフルスペックだと、なんと速度は時速400kmを超えるらしい。勿論都市内の空域でそんな速度で爆走するのは御法度だし、そもそも相当な訓練を積んだヒト以外じゃ乗りこなせないから。
初回というのもあって、レースは時速150km制限で行う形になった。開拓者的には駆動魔具と大差ない速度だし、このぐらいの速さなら制御も安定する。
「ひゃっほーっ!!」
楽しそうなラズベリーさんが一気に首位に立って独走!その後ろからタマさんが迫ってピストルを抜く。妨害ありな以上、レース序盤に首位に立つと危ない!
発射音は風の音にかき消されず、ボク達のバリア装甲内へ直接音が出力された。軽い発射音はどこか心地良く。
「ひゃんっ?!」
「アハハッ!何よ面白いじゃない!」
撃たれたラズベリーさんのTO・TOが、一瞬操作が荒ぶったのかコースアウト!オートパイロットに切り替わって直ぐに戻って来るけど、首位をタマさんに取られてしまう。
「妨害レースは荒れてナンボでしょ!」
グミさんがバズーカを撃ち放ち、爆風でタマさん諸共皆吹き飛んじゃう。ボクも巻き込まれてぴゃああっ?!とTO・TOがクルクル回転しちゃう!けど、コースアウトする前に勢いよく推力を逆噴射!体勢を無理やり立て直しながら前へ!
一度使った妨害アイテムは自動で転移して消失。新しい妨害アイテムは都度ルーレット抽選で手に入れる。ホロウインドウの中をルーレットが回って、ボクの手には‥‥爆弾?
爆弾?!
「きゃあっ?!」
手元で爆発!バリア装甲の中が桃色の煙に包まれちゃう!
慌ててバリア装甲の一部を開放、換気して煙を追い出した。でもその間に皆に抜き去られちゃう。目前でヒミコさんが同じようにハズレアイテムを引いて、Booom!!なんてARの文字と一緒に空高く吹き飛んじゃった。
『これはこれは。中々泥試合レースになりそうですね!しかし初心者にもワンチャンある運ゲーというものは需要があります。100戦やって一矢報いる機会も無いPvPより、こういうバカゲーが覇権を取るんですよ!』
早速レースは大荒れ、ボク達はしっちゃかめっちゃかになりながらもARで強調表示されたコースを行く。
そんな中フィクサーさんは実況掲示板を横目で眺めていた。
:名無しの都民
レースが想像以上に開幕カオスでXD
:名無しの都民
こんな感じのFDパーティーレースゲームあったよなXDXD
あれをリアルでやるとはたまげたなぁ‥‥
:名無しの都民
カートというよりトイレだけどな
:名無しの都民
トイレに跨って駆けるレースゲームは前代未聞だわ
:名無しの都民
スマイルマーケットによく出回る格安インディーズレースゲーにありそう
:名無しの都民
空飛ぶ一軒家を操作するレースゲームは知ってる
:名無しの都民
シブサワ本社ビルっぽいのが出てたアレか
:名無しの都民
アイテムの運ゲー要素強過ぎない?こんなん腕前関係ないやろ
:名無しの都民
逆に初心者でもお友達と一緒にワイワイ楽しめるよな
お友達は自前で用意しろ?クソゲーかよ
:名無しの都民
速度よりも運を競うレースゲーム
ええやん
ビルが立ち並ぶ摩天楼、ビル風吹き荒れるその谷間へ突入っ!わあっ!風が強い!タクポでもちょっと揺れるのに、バリア装甲頼りのTO・TOは思いの外揺れる!操作が難しい!
「わっ?!」
バランスを崩して吹き飛ばされるアマネさん。けど、ビルの壁に激突する気配もなく。自動で姿勢を安定させられて、オートパイロットでコースへ帰って来る。
「ふふふっ、面白いじゃない!」
何でも器用にこなすシライシさんは、安定した走りでラズベリーさんと接戦!互いに手にしたアイテムはピストル同士。撃ち合いながらも上へ、下へとTO・TOを動かして弾を避け合う。
「負けないんだから!」
「あらっ。」
同時に命中させ合い、2人してコースアウトしてしまった。お先に失礼します!ボクは間を駆け抜けて、タマさんの背中を追う。
アイテム良いの出ますように!良いの‥‥良いの‥‥っ!
手にしたアイテムは時限爆弾!説明を見ればハズレアイテムじゃなくて‥‥
ビル風吹き荒れる中を小刻みなカーブで距離を詰め、タマさんのTO・TOへ体当たり!
「うひゃっ?!ラフィ?!」
「お裾分け、ですっ。」
時限爆弾がタマさんのTO・TOへ引っ付いた!頭上に爆弾マークが表示されて、チックタックと針は忙しく。
「要らないわよ!」
「ボクのプレゼントでもですか?!」
「そーいう問題じゃないから!」
互いに競り合いながらタックルの応酬!ブラックカラントさんの射撃でタマさんが怯んだ所へ、ボクの体当たりでまた時限爆弾を突き返す!そのままタマさんは吹き飛ばされた勢いを殺さず、コースアウトしない絶妙な制御でTO・TOを操作。後続のグミさんへぶつかった!
「ハンッ!どーよ?!」
「コイツ‥‥!抱え落ちしなさいっての!」
グミさんの手にはブースター。使えば手の中から消失して、一時的に速度制限が緩和される。5秒間だけ時速300km!都市航空法スレスレの大加速で、組合警察達のブーイングの波間を飛沫を上げて突き抜ける!
「あら?!」
シライシさんが跳ね飛ばされ、縦回転しながらコースアウト!その先で時限爆弾が大爆発!!更に遠くまで吹き飛ばされてしまう。ARで仕上がった派手な演出にテンションが上がっちゃう!きゃーっ!楽しい!
:名無しの都民
思ったよりプレイスキル要るんか
:名無しの都民
体当たりしまくりの格闘戦でXD
:名無しの都民
一般人には関係ない乗りこなしやね
:名無しの都民
アマネ選手、順当に順位落としている模様
:名無しの都民
想像以上に派手なレースで見てるこっちもドキドキするわ
:名無しの都民
あれは上澄みの戦いです
俺らには関係ないので気にしないように
:名無しの都民
開拓者同士の試合とかやったら結構いい興行になりそう
:名無しの都民
マックス兄妹がまたやってくれたな
天才児の創る発明品は毎度世間を騒がせる
ビルの市街地を抜けたらそのまま歓楽街の上空を一直線!広告ARが華やかす歓楽街は見ていて楽しい賑やかなコース。下からも大勢がスマイルカメラを構えてボク達の影を追う。
「ほらほら!退いた退いた!!」
ヒミコさんのTO・TOに4丁のバズーカ砲がくっ付いていて。ランダムなタイミングにボカン!ボカン!とカラフルな砲弾を炸裂させる!ボクのTO・TOは爆風の隙間に滑り込んで、ヒミコさんへ急接近!
ボクのTO・TOに装着されたアイテムは、操作反転爆弾!TO・TOのお尻に引っ付いた爆弾を、マシンを回転させながらヒミコさんへぶつけちゃう!
「おわわっ?!やってくれるね!」
操作が反転してコースアウト!TO・TOの推進力を小刻みに噴射、マシンが浮いたボクの真下を爆弾が飛び抜けていった。
「あらあら。相変わらずの曲乗りね。」
シライシさんの妨害も躱して、首位のラズベリーさんの後を追う。
「ラズベリーを援護するわよ!」
「はいっ!」
ボク達に並走するタマさんへピストルを抜き撃つも、急ブレーキと大きな旋回で身軽に躱しちゃう。
反撃に放られたそれは、自動で追尾して迫って来るバナナミサイル!ああっ!躱せない!
スリップしたようにクルクルするTO・TOにしがみついて、きゃーっ?!と慌ててしまう。ラズベリーさんも同じようにボクの近くまで滑って来た。タマさんが後ろ手を振って挑発してくる。もぅっ!負けないんだから!
歓楽街のビルの谷間をカラフルな爆発が賑やかし、風の中を突き進むTO・TO。タマさんがアマネさんの狙撃で派手にコースアウト。アマネさんは敢えて順位を落としながら、後方から援護射撃に徹する構えを見せていた。
「なんだい!折角のレースだってのに、競わなきゃシケちまうだろうが!」
ヒミコさんの体当たりに対し、アマネさんはTO・TOに角度を付けて迎撃。カウンターを決めて逆に吹き飛ばしてしまう。
「はいはい、レースゲームは苦手なんだってば。」
「うおっ?!あはははっ!そういうのもあるのかい!」
ブラックカラントさんがシライシさんと撃ち合うも、不意に出て来たARの警告にビックリ!危うくビルにぶつかりそうになって、TO・TOが急停止しながらビルへ激突したようなARエフェクトに埋もれた!
「なんだ?!」
「危ないわね?!」
撃ち合いに夢中になっている間にコースが裏路地へ。急に狭まって安全運転しないと激突しちゃうような高難易度ステージへ変わっていた。
それに‥‥
『にゃは、ARの障害物ですか。空の上でアスレチックを楽しめますね!』
デコボコなARの障害物が表示されていた。
「ちょっ?!急に出て来たら対応出来ないって!!」
ラズベリーさんがTO・TOを半透明な壁に引っ掛けて、あたかもぶつかったような挙動で縦回転しながらコースアウト!
「危ないわね!」
グミさんも巻き込まれ、バリア装甲がぶつかり合った時点で一緒になって吹き飛んでしまった。内部に衝撃は無いみたいだけど、瞬時にオートパイロットに切り替わって慣性を殺しながら一緒に吹き飛べる。とんでもないGが掛かりそうなのに、そんな気配は無かった。
TO・TOの挙動は完全にオーパーツのよう。ゲームの世界を現実に。常識を覆すとんでもない挙動を実現していた。
「ボクが前へ出ます!」
アマネさんの援護射撃を受けながらも、アスレチックコースに挑んで行く。突っ走るだけじゃなく、時には大胆に減速しながら障害物をスレスレで躱してもっと前へ。
次々と現れる半透明なARは裏路地の上空を埋め、その下を加速しながらタマさんと一緒に潜る。その間にも数回の体当たり合戦。
えいっ! きゃっ! このっ! ピィッ?! 負けないっ!!
はしゃぎ合いながらタマさんと押し退けあって、2人してARの壁に激突!派手な激突エフェクトの中でTO・TOが急停止しちゃう。
「アハハッ!やるじゃない!」
「ああっ!抜かされちゃう!」
シライシさんが片手で挨拶しながら抜き去り、復帰する前にラズベリーさんにも抜かされちゃった。
「ほら、気を取り直して行くよ。」
後ろから来たアマネさんの声に押されて、ボクは再びタマさんと先頭目指してTO・TOを走らせた。丁度その時、自爆アイテムを引いて吹き飛んできたシライシさんと目が合った。
片手で挨拶しながら抜き去って行く。アイテム運も大事だから。レースは想像以上にごちゃごちゃカオス。今度は目前に現れたファンタジーな街路へ突入する。
場は大通りの上空。そこへ投影されたARはファンタジー世界の街並みを映す。ホロウインドウには簡潔に、壊したモノの数でスピードアップだなんて。
きゃ〜っ!!と突っ込んだ先は、レンガ造りの建物。横穴をぶち抜いて、丁度パーティー会場になっていた中を全部薙ぎ倒しながら直進!!
爽快感が凄い!ヒットする度にハンドルに手応えがフィードバックされて、TO・TOが加速して行く!!壊れたモノは蹴り飛ばされたジェンガのよう、細かくなって消えて行く。
巨大ケーキがボクに轢かれ、派手に倒壊する中スピードが時速200kmを超えた!!
皆一緒に住宅地を飛び出して、そのままお城の中へ。お城の門が粉微塵に、中にあった馬車を吹き飛ばし、迎撃しようとする巨大ゴーレムが弾け飛んで消えて行く!
直感的に分かる。最奥の玉座を1番最初に引き壊したヒトが優勝者!あそこがゴールテープなんだ!
開けた玉座の間は温存していたアイテムの使い所!!全員がアイテムを構え‥‥!
ああっ!グミさんがまた自爆アイテムを引いちゃった!派手に爆発して無念のコースアウト。
「チックショー!」
という声が背後へ消えて行った。
ヒミコさんの撃ったバズーカが敵味方関係無く全員を吹き飛ばす。ボクの放ったバナナミサイルが復帰しようとする皆を狙い撃ち!
隙あり!って突っ込むボクへシライシさんがピストルで狙撃してくる。
「ラフィっ!」
アマネさんが身を挺して庇ってくれて、そのままシライシさんの方にスリップしながら激突に巻き込んだ。
「行かせないわよ!!」
ブラックカラントさんに撃たれながらも、タマさんがボクを狙い撃つ。きゃあっ?!TO・TOがスリップしちゃう!あの体勢で当てて来るなんて!
そんな隙にヒミコさんが猛進して追い上げる!先頭を走るラズベリーさんの手には───
自爆アイテムの爆弾?!
そんな!!負けちゃう!!
「勝負ありだね!!」
「いえ、魔法少女は‥‥!負けないッ!!」
ラズベリーさんの自爆アイテムは、TO・TOを頭上に打ち上げられるように吹き飛ばす。だったら。咄嗟にTO・TOをその場で横倒しに、無茶な体勢になるとオートパイロットに切り替わって元の体勢に戻ろうとするけど一瞬なら。
横倒しのまま、頭上‥‥つまり玉座の方へラズベリーさんは爆発しながらも吹き飛んで行った!
自爆して吹き飛ぶ際の速度は、普通に走るよりも速い!!平時は真上へ飛ぶから意味ないけど、この瞬間ならヒミコさんを追い抜ける!!
「こいつは‥‥ははっ、おめでとうさん。」
ラズベリーさんは頭から玉座へ突き刺さり、そのまま砕き割ってゴールイン!!
トールさんのアナウンスが会場へ響く。
『勝者、魔法少女‥‥ラァズベェリィィィィィ!!!世界の平和は守られたァ!!』
ファンファーレが鳴り響く中、オートパイロットで帰って来たラズベリーさんは笑っていた。
「勝った!!皆!魔法少女の勝利だよ!!」
空前絶後のはちゃめちゃレースは無事、ボク達の勝利で幕を閉じたのだった。




