463、キラキラな2人はラフィの全てを識りたがる
エンベリT&Y EXPO応援企画第4弾!!
トウキョウ工科大学魔具工学部、新作レースゲームテストプレイヤー!!
朝からラズベリーさん達とワクワク顔で現地へ向かう。今回はデビルズ・エコーのヒトも対戦相手として来るようだし、レースゲームに勝って魔の手から守らないとね。
「私が推したんだ。だって面白そうじゃん。」
ラズベリーさんは上機嫌。レースゲーム好きなのかな?
「こう見えてそういうゲームすっごいやってるんだよねー。リアアク10のプチラナランカーなんだよ?」
FDレースゲーム話題の新作、リアルアクセル10。沢山のヒトがやっててハムハムのトレンドにもなってるやつだよね。ラズベリーさんってゲームが好きなんだ。親近感湧くかも。
「私はあんましだけど、新作ゲームって何かしら?FDゲーだったらゲームプレイ動画上げる形になるの?」
「まぁそういうお仕事もありだのぅ。」
グミさんとブラックカラントさんを見下ろすキャウルンさんは、ボクの頭にのっしり乗っかったままちょっと抗議目。
「お仕事言わないの。魔法少女の使命なんだから。」
のし、のし、と前足でバランスを取って、肉球がぷにぷに。あの、重いです。
「癒されるしちょっとだけ。ふふん、私を雇ってくれればお腹も撫で放題だよ?」
「‥‥魔法少女を導く精霊さんは労務に勤しみません。」
キャウルンさんは苦笑いで誤魔化し、ブラックカラントさんとアマネさんがツッコミを入れていた。
E地区にあるトウキョウ工科大学も、大きくて学科の多い大学だった。中央大学のような煌びやかさは無いけど、質実剛健な感じの建物が並ぶ学舎だった。構内の誰もがボク達へ手を振って、ボク達も笑顔で振り返す。
「ラズベリーちゃん!!」
「グミー!」
「カラントも負けんなよー!」
「アマネー!」
なんて、皆の名前も沢山呼ばれていて。沢山のファンの皆が応援すれば、魔法少女達も嬉しい気持ちを隠さなかった。
「よ・う・こ・そッ!!トウキョウ工科大学、魔具工学部!!クレイジーィィィィズへ。いつもバカでマヌケでイカした魔具を作っては壊す研究ラボだよ!」
ボク達を出迎えたのは‥‥こう、すっごいクセの強いお兄さん。目元はサイバーテックなアイバイザーで見えない。伸びた前髪は漫画のキャラのように、お腹の辺りまで一本線を描く。ダボダボな服装もなんかカッコいい感じで‥‥いいなって思った。
でもラズベリーさん達はちょっと引き気味。
「あはは〜‥‥お名前は?」
「すまない!言い忘れていた!ハハハッ、この大学で天才の名を知らぬ者は居なくてね!私はトール!!マァックス!!」
トール・マックスさん?演技掛かった話し方、そして大袈裟な身振り手振り。コスプレイヤーさんって言われても納得しちゃう。なんかのキャラクターになりきっているのかな?
と、後ろからヤンチャな雰囲気のお姉さんが。
「副部長レディ・マックス!すまんなぁ、お兄ちゃんはいつも“こう”なんや。ウチらマックス兄妹をよろしくな!」
ラズベリーさん、そんなに後退ったら失礼ですよ。今までに見た学生さん達と比べて、可能性に満ちた感じというか。キラキラ眩しい2人と握手をした。
「ボクはラフィです。キラキラだったら負けません!」
大きく展開したユリシスに、2人は急に奇声を上げて飛びついて来る!けどユリシスへ触れずにすり抜けてしまった。
「これは?!」
「ええと、エンジェルウイングもユリシスも一定以上の力を透過させる性質を持つんです。」
だから銃弾で撃たれても穴は開かないし、瓦礫が当たってもボロボロにならない。ボクは技術者じゃないから詳しくは知らないけど、ブランさんなら分かるかな?
「す、素晴らしい‥‥!!これは既存の技術に無い新技術!!シブサワの機密か?!」
ううん、多分。
「数世紀先の未来の技術です。」
2つ並んだ奇声が再び。卒倒してしまった。あっ、大丈夫ですか?!
チラリと振り返れば、キャウルンさんと皆がどうすれば良いか分からずに困惑していた。
「どうする?」
「帰っちゃダメ?なんか疲れたんだけど。」
「ああいうテンション‥‥ダル。」
「合わせられるのはラフィぐらいだのぅ。」
そんなボク達へ副副部長さんが頭をペコペコ。
「ハグルマと申します。すいません、マックス兄妹は大天才なんですがこう。社交性が死んでいまして。私が進行をさせて頂きます。」
温和そうな雰囲気のハグルマさんに皆も安堵の息が聞こえる。取り敢えず来客用の部屋へ案内するハグルマさんの後ろ、ボクの肩がもう復活した2人にがっしり掴まれていた。
「「少しだけ!!お話しよう!!」」
きゃあっ?!ジタバタするボクに、魔法少女達は片手で謝りつつハグルマさんと一緒に行っちゃった。このままじゃ話が進まないからって。もぅ。
ホロウインドウの中からフィクサーさんが現れ、驚く2人とボクの距離をグンッと開いた。
「にゃは、ラフィさまを驚かせないように。こういう時にあのメイドは居ないんですよね。」
ブランさんはショーに出られない以上、タマさんのサポートをするかパンタシアで秘書のお仕事をしていた。ボク周りでやらなきゃいけないお仕事は山積みみたいだから。
そろそろカテンさんの農園で育ったお野菜第1弾が収穫どき。急速成長剤も使っているけど、ボクの癒しを実験的に植物へ散布したお陰か成長が異様に早い。
だからモモコさんと相談しながら、収穫数を計算して販路へどう割り振るかも決めないと。
他にもプライベートフォレストの一画を占める、虹渦島植生エリアの生物種の観察レポートとかも。内部に配置されたドローンが観察していても、それとは別にブランさんが未来の技術力を売り込んでより精密なデータを提供していた。良い収入になっているらしい。
フィクサーさんもブランさんの多忙さを理解してくれているから、口ではそう言いつつもボクのお世話を代わってくれていた。
マックス兄妹はフィクサーさんにも興味津々。先手を打ってフィクサーさんはハンカチを振った。
「言っておきますが、アナタ達に悪魔の知識の取引はしませんよ?押しが強すぎるタイプは好みじゃないんです。」
けどトールさんは気にせずに、
「別にそんな事はしない。重要なのは過程と積み重ねだ。答えだけポンと貰っても邪魔な知識になってしまう。ゴールだけ見えていると要らない先入観のせいで研究が鈍るだけだ。」
レディさんも肩をすくめた。
「そういう事。悪魔という種族を色々観察して研究したいんやけど、今はそこまで悠長してられる時間あらへんな。」
でも伸びた指先がフィクサーさんの裾を摘んで、トールさんも急に顔を近づけて匂いをすんすん。これにはビックリしたフィクサーさんがビャッ!とホロウインドウの中へ逃げてしまった。
『何このヒト達気持ち悪い!!』
ボクもちょっと抗議する。
「デリカシーは大切です。変な事はしないで下さい。」
「ああ、済まないな!つい。匂いは魔法生物特有の魔素臭、しかし流石高位の存在。ふんわり柔らかな匂いに変質させている。参考にしているのは獣尾族の女性フェロモン6割、ニホンコク人種の女性フェロモン3割、サキュバスフェロモン1割と言った所か。」
「触った感じあの服も全部体の一部やな!ホロウインドウの中へスムーズに入れるよう、魔素の組成がホログラム投影組成と似た感じがした!」
よく見たらレディさんは指先に小さな機器を付けていた。一瞬触っただけで、フィクサーさんの体の構造をザックリスキャンしちゃったみたい。ホロウインドウの中でフィクサーさんはドン引き。おえーって顔で2人を見やっていた。
「お二人はどんな事に興味があるのですか?」
ボクをもふもふ触って来る2人へ問い掛ける。返ってきた答えは単純明快。
「勿論、森羅万象全てだ!!」
「そうそう。ウチら昔っから理解力とか記憶力が凄くてさ。調べれば何でも分かるし、忘れる事も無いの。なんだろ、理解するって工程が要らないっていうか。だからこの世の全部を知りたいし、人類社会をウチらの知識で照らしたい。」
トールさんはズバリ、ボクの正体を言い当ててしまった。
「ラフィ、君はダンジョンコアだね?つまりは魔王だ。素晴らしい、家畜化されたダンジョンコアとでも言うのかね?!その技術があれば世界がどれ程繁栄を遂げるか!」
けど、ボクは言葉を遮るように。
「滅びました。ボクの居た時間軸は、それでも滅んでしまったのです。お見通しなら隠しませんが、タマシティで魔王が勝利した後の3世紀先の未来。ダンジョンコアの家畜化には成功しましたが、それも資源産出ではなく兵器としてです。‥‥ボクを創り出す為に全ての技術力が集結されました。」
ボクは手を差し出す。
「ボクの全てを知れますか?滅びの運命に抗いながらも3世紀研鑽を積み上げた、人類の叡智の結晶です。理解出来るでしょうか?」
何でも簡単に理解出来る、なんて言われてちょっとだけムッとした。人類の研鑽はそんな簡単に識り尽くせる程浅くないよって。
だけどトールさんもレディさんも、寧ろワクワクした顔で。でも、トールさんはそっと頭を下げた。
「つい舞い上がってしまった。君の事を軽んじる気は無い。辛い過去があるようだ。ただ、それでも“今は”違う。共に繁栄の未来を拓いて行こうじゃないか!」
レディさんもウインクを送った。
「悪いな。でもそんな話を聞いて尚更ラフィの全てが識りたくなったわ。どれだけ時間を掛けてでも、必ず解体新書を出してみせるから覚悟しとき。」
明るい未来の為に‥‥2人が頼もしく見えて。ボクも手を差し出した。
ラズベリーさん達が別室でお話を聞く間に、キラキラな2人とちょっと距離が縮まったかな?
『ラフィさまを識りたいのでしたら、先ずはシブサワの門戸を叩くべきですね。彼らはラフィさまの解体新書を機密としますから。』
ホロウインドウの中でフィクサーさんは2人を見下ろしたのだった。




