462、結婚式を祝うミュージカル!そして開拓者のビッグドリームを掴む少女
ショーに飛び入り参加して、お客さん達の大満足な顔を沢山見れた後。ラズベリーさん達と一緒に、そのまま件の式場へと向かっていた。タマさんも普段着に着替えて付いて来ていた。
一緒にデビルズ・エコー役を演じていたヒミコさんも来ようとしたけど、グミさんがグイグイと背中を押して帰しちゃった。
「だって恥ずかしいっていうかさ。これから行く場所考えたら絶対要らない事言うじゃん。」
親子同伴を茶化す声にくすぐられ、呆れ顔のアマネさんの前バシバシとブラックカラントさんの背中を引っ叩く。
皆に連れられて一緒に歩くボクの背中に手が伸びた。
ラフィが歩く度に髪がフリフリしてて尻尾みたい撫でて良いよね?こっち向いた顔が赤くなってる可愛い
アマネさん!気付いてますから。
「急に髪を撫でちゃ恥ずかしいです。お外でそういうのはダメですから。」
アマネさんは心の中では多弁だけど、実際口数は多いタイプじゃない。気恥ずかしげにそっぽを向いた。
「結婚式かぁ。私は‥‥」
ラズベリーさんはボクを見る。
「一緒に結婚式を盛り上げちゃおうね。」
「はいっ。折角ファミットを送り届けたんですから。祝福を贈りたいです。」
事前に式場に連絡をして、夫妻にも確認を取る。サプライズでの登場だけど、受け入れて欲しいな。
結局二つ返事で受け入れてくれて、道中に何をするかパパッと決めちゃう。
「祝福するのですから。歌を送りましょう。皆で夜な夜なミュージカルの練習をした成果を見せるんです。」
おーっ!と皆で盛り上がる。歌う楽曲は歌いやすい結婚式の定番を。タマさんはどうしよっかな。ボク達と一緒に歌うのは立場的にマズいし。
「だったら簡単なミュージカル形式にすれば良いじゃない。」
練習しているミュージカルの一部のシーンを抜粋、楽曲だけ入れ替えて演じるのも良いかも。R.A.F.I.S.Sで繋がっていれば皆の連携は完璧だから。
『ワタシも協力しますよ?ミュージカルサポートコンサルタントの出番です。』
フィクサーさんが演出を手伝ってくれるようだった。
『悪魔の魔法で1つ最高に思い出に残る式を用意してやりましょう。にゃはは、幸運な夫婦ですね!ラフィさまの生ミュージカル初公開ですよ?あのモモコさんですら見た事ない劇を先取りするんですから。』
道中の話し合いは加熱、最高のエンターテイメントを作る熱意はフィクサーさんの的確なディレクティングで空回りせず。瞬く間に寸劇の脚本が出来上がった。
ボク達は開拓者、アドリブはお任せだよ!対応力が腕前を決めるんだから!
式場はもう目の前。タマさんは一旦外れて、魔法少女なボク達は式場のドアの前へ立った。ボク達を案内してくれた係員のヒトも、期待した目で見送った。
R.A.F.I.S.Sが伝播して『これから楽しい事をするよ!』とふんわり語りかけ、フィクサーさんが魔法で式場の光を徐々に弱めていく。式場の光が妖精さんのようにふわりと集まって、照らし出したドアからボク達がパッと飛び出した!!
「うわっ?!エンベリか?!」
びっくりする声、
「きゃーっ!!ラフィくん!!」
黄色い声援、
「おいおい豪華なゲストだな!」
指笛がピュー!と吹く。
シズエさんとジュウロウさんが笑顔でボク達を迎えてくれた。じゃあ、早速ショーの時間だよ!
背中にアクアマリンを展開、ユリシスから楽器を持ったミニフィーが飛び出して配置へ付く。ボクの歌声が最初にメロディーを作り、楽器が曲の架け橋になる。ラズベリーさん達が声を合わせて歌に厚みが増して、喉を慣らすような静かな旋律が流れた。
宙を流れる薄虹の水路がそっと伸びて行って、暗い式場のそこかしこを囲う。皆まだ水路に気付いていない。
『では、it'sショータイム。』
パアッ!!
式場は薄明るく、水路が輝いて皆の驚く声が響く。水路の上を無数の花々が咲き乱れ、フィクサーさんの魔法でランラン♪と踊るよう身を揺らした!
ボク達の声が跳ねる!結婚を祝福する歌詞、結婚までの幸せなデートの日々を語る。ラズベリーさんと手を取り合って踊り、グミさん達も3人で輪を描くように優雅に音の波間にたゆたう。
ボクは魔法少女達と次々手を握って踊って回り、皆の前へ出て明るい歌声に跳ねるよう腰をゆらゆら。お尻をフリフリ!フィクサーさんが指を鳴らせば、光球が沢山浮かんで星空のように瞬いて会場を幻想的にした。
そんな中、会場の一角に暗い闇が漂う。観客達の目の向いた先で、闇の中からデビルズ・エコーの姿のタマさんが現れた。
ずっと練習を積んできたタマさんの歌声は、もう素人カラオケな歌声じゃない。凛として、ハリがあって、ハッキリ聴こえる歌手のような歌。
悪の怪人は歌う。結婚は人生の墓場。結婚に向けた花嫁と花婿の抱える不安、愛は鉄板の上に乗せられたハンバーグ。じゅうじゅう言うけど、半分食べる頃にはもう冷めてる。
下品なブラックジョークをかましてヘラヘラするタマさん。けど踊りはプロ顔負けの足捌き。体を動かしたらタマさんの体幹の安定は凄い。見惚れるような動きでジュウロウさんの前まで歩き、問いかけた。
「それで結局アンタは結婚する勇気はあるの?怖いわよ、大変よ、身を持ち崩すかも♪」
R.A.F.I.S.S越しにジュウロウさんへセリフが伝わる。ニッと笑ってしっかり言い放った。
「うるさい、俺はシズエと結ばれるんだ!愛を知らない悪の怪人、独り身は黙ってろ!」
怯んだようなタマさんへ、ラズベリーさんの放ったキラキラ輝く魔法が降り注ぐ。フィクサーさんが操る魔法は眩しくて、タマさんは光に飲まれて転移して消えて行った。
悪の怪人が消え去って、物語はハッピーエンドへ向かって行く。ボク達は祝福を歌い、2人を囲んで笑顔を振り撒く。
最後にふわり、大きく展開したエンジェルウイングに会場がどよめいた。癒しの波動が皆を寛がせ、キラキラ光る粒子が神秘の世界を演出する。
ボク達は声を合わせて最後を飾った。
「「結婚、おめでとう御座います!!」」
盛大な拍手と歓声が式場の外まで聞こえたようで、係員のヒトが思わずドアを開けて中を確認していた。会場は光を取り戻し、やりきったボク達は汗を拭う。一発勝負だったけどちゃんと成功して良かった。
今回の成功のお陰で、ミュージカルの本番への自信が付いたように感じれた。
ジュウロウさんは拍手をして大喜び。シズエさんも感極まって涙を流して祝福を受けてくれた。
「最高でした!!エンベリの皆さん!!不思議なご縁でしたが、私達の式を祝って頂いて感無量です!!一生残る思い出となるでしょう!!」
「‥‥本当にありがとうございます。それに、キュルゾウを送り届けてくれたのです。お陰で祖父からのお祝いメッセージを無事受け取る事が出来ました。そして、傷を負ってでもジュウロウを助けてくれたあの少女にも感謝します。」
ボクは後ろの方で見ていたミライさんの背中を押す。
「私は良いって。ちゃんと結婚式が出来たんだし、それで十分なのに。」
「ダメです。感謝の気持ちはしっかり受け取らなきゃ。助けるのは大切ですけど、感謝を素直に受け止めるのも同じぐらい大切です。」
「そっか。えへへ、先輩が言うなら仕方ないな〜。照れるぜぃ。」
皆の前、ミライさんはシズエさんと握手を交わしたのだった。
「しかしミライさんは開拓者かな?とっても強かったんだ。瞬く間に暴漢どもをバッタバッタと倒してしまったんだぞ。」
「あははははっ。開拓者志望でーす。装備すら無いんだけど。」
ミライさんったら、ブランさんからの報告だと素手で戦ったらしい。お陰で拳はボロボロ。強化外装が応急処置で治してはいるけど、後でボクがしっかり治療しなきゃ。
「私はミライさんを応援するよ。お礼といってはなんだが、後でお似合いの装備カタログを送ろうじゃないか。良い装備を身に付ければ間違いなく伸びる。開拓者ドリームとして受け取ってくれ。」
ミライさんは照れて顔を赤くしながらも嬉しそうにする。ジュウロウさんはシブサワ傘下企業の重役。それも本社があるシブサワタウン住まいだから、傘下企業の中でもより中枢に近い大企業。
ミライさんへ投資してくれるってお話にボク達も祝福を贈った。
「開拓者ドリームよねー。夢があって良いわ。」
グミさんは羨ましそうに、
「ドリームと言えば‥‥えへへ。私達だってアレがあるし。」
ラズベリーさんが企画が裏で動いているお話を口にした。多くの企業の失敗で深未踏地の探索がまた下火になりかけているこのタイミング。エンベリの広告も兼ねて、深未踏地をボクと一緒に探検しちゃおうって。法人探索許可証をエンベリの運営本部が用意するのには時間が掛かるけど、それさえあれば開拓者憧れの地へ行ける。
「生涯縁がないって思ってたのにね。何が起きるか分かんないのが開拓者ドリームよ。」
「そうだのぅ。いつかはと思いつつも‥‥行くのに億単位、危険が一杯で成果が上がるかは運次第なんぞ手が出ないものよ。」
「その話まだ秘密だから話すなって。バレたらダルいじゃん。」
そんな魔法少女達のこそこそ話にミライさんは首を傾げるけど、まぁいいやとジュウロウさんに向き直った。
「応援ありがとね。正直めっちゃ助かる!色々あって私一文無しでさ。家族も家もお金もぜーんぶ過去に置いてきちゃった。一杯活躍するから、投資するなら損はさせないぜっ♪」
調子の良い声に、ジュウロウさんはニッと笑ってしっかり握手したのだった。
───その夜。
プライベートフォレストの開けた草原、カテンさんの農地の真横にて。
地面に寝そべって空を見上げるミライさん、そして息を荒くしながらも傷一つ無いままに見下ろすタマさん。
「ま、こんなもんよ。筋は良いけど経験が足りてないし動きに無駄が多い。」
「武術を習うのー?」
起き上がるミライさんの髪はボサボサ。
「CQCよ。ただ、アンタの場合はビームシュナイダーメインの動きじゃないわね。純粋な徒手空拳がメインかしら。それだけじゃ弱いし色々サブウウェポンも仕入れなきゃね。」
ボクが沢山武器を買い揃えているから、試し振りをするのなら武器種に困らない。アクアマリンで水製の武器を創り出せるし。
ボクがチラリとグリムリーパーを見せれば、ミライさんのテンションは爆上がり。
「何それカッコいいじゃん!色々振り回りたくよね!」
ジュウロウさんから送られて来たカタログは3000万円分。まだ開拓者の試験も受けていないのに、すっごい金額の装備の数々。その中から皆で意見を出し合って決めて行く。
重要なのは強化外装の値段!
『守りが1番重要ですよ!質の良い強化外装は無茶を出来る場面を増やしますし、替えの強化外装があれば継戦能力を大きく底上げ出来ます!』
ホロウインドウの中のフィクサーさんは、アニメーションで分かりやすく強化外装の重要性を説く。
「武器を徒手空拳メインの籠手タイプの装備にするのなら、低価格帯でも十分活躍が見込めます。勿論基本的な銃器類は必須になりますが。」
ボクの使うスマートフィストA7みたいな武器種はプロ向けというより、護身用って感じだから値段帯も一般人向け。銃がメインのこの業界で素手を強化する装備の需要は低いし。タマさんもそういうのは使わないぐらい。
グミさんが使ってたな。勿論ナックル系の武器種も性能の良い高級品があるから。カタログにそんな武器がしっかりと載っていた。ジュウロウさんもこういう知識があるみたい。
「安めに装備を揃え易いので、サブウウェポンを充実させ易い利点も御座います。ですが何度も言いますが、銃が基本です。そこを疎かにすれば近付く前に穴だらけでしょう。」
「わーってるって。アドバイスあんがと。ふふん、もう拳が砕ける思いをしないで済むって思えば有難いものですなぁ。」
ミライさんは早速装備を買い揃えたのだった。




