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460、結婚式を台無しにさせない!都市をマッハで駆ける珍道中

シブサワタウン中央、高級感溢れるビルがそそり立つ。その外壁、魔具路の上に飛び出した!飛んだ先で重力が横向きに、ボクからフェザーステップを借りたミライさんは思わずジタバタ。


「わわっ?!ビル?!高い!」


「大丈夫です!重力の向きが変わりますので、両足を出来るだけ壁面にくっ付けるよう意識して下さい!」


ボクもブレードランナー初体験は怖かった。あの時はR.A.F.I.S.Sが発現してなかったせいか、怖いって感情に心が敏感で。未だにあの感覚を覚えている。


もしミライさんが落ちても絶対ボクが受け止めるからね!R.A.F.I.S.Sで語りかけて安心させながらも、ボク達は一直線!


ホロウインドウが開いて、フィクサーさんが早速経路案内をしてくれた。


『駆動魔具で向かうのが最短距離‥‥とはいかないものです。緊急時以外は魔具路に沿って走らないと違反になりますからね!』


指した先で電車の時刻表と運行情報が、可愛いアニメーションで踊った。


『先ずは電車を使いましょう。今更野暮ったい交通手段に思えますが、場合によっては都市内最速ともなり得ます。地下鉄の運行速度を知っていますか?シブサワ私営地下鉄ならなんと時速200km!!にゃはは、文明の煌めきは地下鉄をぶっ飛ばしてくれますね!』


そんなに速いんだ!ミライさんもびっくりな顔で、


「マジ?!ええと、昔何かの動画で見た速さだと時速50kmもないんだっけ。30kmぐらいとか見た!速過ぎない?!」


ミライさんの居た時代の地下鉄はそんなゆっくりだったんだ。


「時速600kmとか言うヤバい速度の電車も無かったっけ?」


タマさんの戯けた声に、フィクサーさんがニッポンイチの傘下企業のロゴを見せてくれた。ニュースまとめ記事が試運転でそんな速度を記録したって出てる。


そこまで急がなくても‥‥安全性は大丈夫なのかな?


『傾斜バリア装甲による空気抵抗の軽減はあらゆる産業に大きな発展を(もたら)しました!開拓者の皆さんがヒトの身で時速100km、200kmでカッ飛ばせるのもこの技術のお陰ですよ?』


フィクサーさんの図式は分かりやすい。言われてみれば、空気抵抗を上半身に受けたら体がひっくり返っちゃうよね。タマさんは常識だって風にしてるけど、ボクは意識していなかった。


「ラフィさま、このまま最寄の中央街駅に行きましょう。ロス無く進めば待ち時間無しに電車へ駆け込み乗車出来ます。」


駆け込み乗車は危険だけど‥‥!ごめんなさい!


ビルの壁面から壁面へ。見下ろした先に大きな駅が見えてきた。シブサワタウンの中でも1番大きな駅は、大勢のヒトが行き交う。


シブサワタウンにもゆくゆくは、虹渦島みたいな転移移動システムが導入される。でもそれ前提の街作りをしていない分、直ぐに普及とはいかないみたいで。物流にしろ交通にしろ多くの利権問題もクリアしないといけないしね。


最新技術が出来ましたから全部お払い箱です、じゃ大変な事になっちゃう。


ガラス張りが美しい駅の広場に着地。ボクの姿を見たヒト達が手を振って、ボクも笑顔で応えて手を振り返した。でも皆で全力疾走!


駆動魔具は使えないから両足で地面を踏み締める‥‥!普段こんな事しないから走るのがもどかしい!全然進まないよ!


ピャーッ!と慌てるボクの体をタマさんがひょいと抱えちゃう。


「歩幅が小さいと大変よねー。捕まってなさい!」


ミライさんは息を上げながらも付いてきて、荷物抱きしてしまおうと迫るブランさんから逃げていた。


「スカート履いた女の子を変な持ち方しようとしないでよ!」


「でしたらダッシュで御座います。開拓者をやるなら基礎体力作りは必須ですよ?」


「こんのぉぉぉぉ!!!」


ボクの手の中でキュルゾウがわちゃわちゃしていて、そんな慌ただしい旅を沢山写真に収めていた。


ホロウインドウの中のフィクサーさんは悠々自適に、ティーセットを弄って寛いでいる。その足場が急にランニングマシンに置き換わり、勢いに押されて椅子とテーブルごと転がって行っちゃった。


タマさんの悪い顔。クイックハックがボクのスマイルに飛んだようだった。


地下へ続く長いエレベーターの脇、ドア一枚挟んだ先にある長い階段へ飛び出す。避難用のこっちなら人目も無いし、駆動魔具で壁を駆けても大丈夫!


アクアマリンとステラヴィアを起動!


「ボクが運んじゃいます!」


ボクがタマさんを抱っこ。イルシオンの中へブランさんが消え、ミライさんに巻き付く。足場の薄虹の水路の上を一気に急加速!


「わわっ?!ひゃあ〜?!」


ミライさんの悲鳴を置き去りに、ジェットコースターの軌道でホームまで爆進した。


ドアを開けて転がり出るように飛び出すボク達、目前で丁度止まった地下鉄のドアが開く。


行き交うヒトの波に飲まれながらも、電車の中へ入り込む事が出来た。


「満員電車ね‥‥何年ぶりかしらこんな窮屈なのは。」


「ラフィくん、離れないでよ?!迷子は嫌だからね?!」


「手を握っていて下さい。」


満員の車内は足の踏み場もない。モゾ‥‥と動くボクはミライさんと並んで座席の前に立った。タマさんは後ろ側かな?尻尾がボクのお尻をくすぐった。痴漢ですよ、もぅ。


目前のお姉さんがボクを見て驚いた声を上げる。


「ラフィさんですか?!」


「はい、ラフィです。用事があって電車を使いましたがすっごい混んでますね。」


「可愛い‥‥!動画とかいっぱい見てます!あの、サインを!」


色紙を持っていないみたいだけど‥‥お姉さんは着ている白い服に書いて欲しいって。良いのかな?収納からペンを握る。ミライさんと繋いでいた手を離してパパッと服にサインを書いた。最近はボクの個人章をサインに加えたんだ。


シブサワの社章の盾を包む天使の羽。そんなロゴが刻まれた空飛ぶ機関車。何度も描いていればR.A.F.I.S.Sで段々最適化していって、それなりに精密な絵を描けるようになった。本来の用途とは違うから、プロ顔負けってレベルじゃないけど。


「ありがと〜!握手も良いですか?」


「はい!応援してくれてありがとうございますっ!」


ミライさんはそんな様子に、


「ラフィくんって芸能人さんみたい。人気者は大変だぜってね。」


なんて。茶化さないでよ。


アレ?って風にミライさんがボクを指す。


「キュルゾウちゃんは何処に行ったの?持ってなくない?」


「えっ?あっ!居ない?!」


キュルゾウがどっか行っちゃった!人集りに飲まれた時に他のヒトにくっ付いちゃったかも!!


動き回って探せないけど‥‥天井なら。目の前のお姉さんへ、口に指を当ててしーっとポーズを取る。小さな体でするりと抜けて、跳躍しながら電車の窓を蹴る。光学迷彩で姿を消しつつ天井に張り付いた。


次の駅まで30秒も無い!!R.A.F.I.S.Sを本格起動、キュルゾウの気配を探す。脳の無い機械類の探知は得意じゃない。でもやらなきゃ!


ユリシスを小さく展開、同じように光学迷彩を纏ったプチフィー達がわっ!と出てきた。


他の車両にもカサカサ天井を這い回って全速力で散って行く!


キュルゾウ!どこ?!


ああ、もう10秒!


ホロウインドウの中でフィクサーさんが助言を。


『物事の解決手段は無数にあります。直接キュルゾウを発見出来ないのであれば、それに関わったヒトを探しましょう。』


そうか!急に見知らぬファミットが体にくっついて来たら驚いちゃう!多分走行中ずっと弄ってる筈。


脳波を感知して皆の感情を覗いていく。可愛いペットを車内で弄り回す事に集中している意識は?!


電車が駅に到着して、ドアが開く。


ボクは素早く電車から飛び出して、小さな風を残しながらホームの天井に張り付く。丁度この駅で降りて来た1人の乗客がキュルゾウを不思議そうに弄って居るのを見つけた!!


「はっはっは、行く当てが無いのなら俺が世話をしてやろうか?可愛いやつめ。」


つるんとした頭のおじさんはスーツ姿。時間的に外回りのお仕事の最中かな?悪いですが、キュルゾウには行くべき所があるんです!


R.A.F.I.S.Sがおじさんへ情報を伝え、驚いた顔で見上げた先でボクを見た。伸びたイルシオンがキュルゾウを巻き上げ、思わず手を伸ばしたおじさんにごめんなさい!と頭を下げる。


「良かったよ、行って来な。」


おじさんは電車の中へ再び身を滑らせて乗り込むボクへ手を振ってくれたのだった。


天井の上をカサカサ!と這い回り、ミライさんの頭上でしゅるりと降り立つ。体が小さくて良かった!さっきよりも少し空いていたお陰で問題なく元の場所へ戻れた。


「ラフィくんお帰り。キュルゾウ帰って来て良かったぁ。」


「すいません、急いでいて気付けませんでした。」


ボクの所有物じゃないから、セキュリティ的にキュルゾウはイルシオンやS.S.Sの収納へ入れられない。最悪自動で通報機能が働いて警察沙汰になっちゃう。手荷物を持って満員電車へ入る経験が無くて、キュルゾウの事が意識から抜けちゃっていた。


後ろのタマさんの尻尾がまたボクのお尻をさする。ツンツン、さすさす‥‥


からかわないでって。


この駅で下車‥‥ってタイミングで、急にタマさんの尻尾を近くのお姉さんが掴み上げた!


「ぎゃっ?!何よ?!」


「ラフィさん!このヒト痴漢でしょ?!ずっと撮ってたから!駅員さんに突き出すよ!」


「違うわよ!!アタシはラフィの‥‥!引っ張んなって!」


「あの!タマさんは大丈夫ですから!お気遣いありがとうございます!!」


パッと感謝の気持ちをR.A.F.I.S.Sでも伝えて、ヨタヨタ逃げるタマさんの背中を押して電車を降りる。まだ急がないと!もう式まで10分も無いよ!フィクサーさんはホロウインドウの中で『自業自得』と書かれたうちわを振っていた。


駅を飛び出したボク達の前‥‥


「ラフィくん?!」


まさかのエンジェル・ベリー♡!!の駅前ライブイベントをやっていた!!


そっか!忘れてた!!シブサワタウンで今日イベントがあるって!ボクは征伐戦争の件でどれ程長引くか分からないし、暫く分のエンベリのイベント出演をキャンセルしていた。


ブランさんがホロウインドウで予定を見せてくれる。


今日のイベント、今から30分のヒーローショーをやるんだ。その後にシブサワタウンの街巡りの動画撮影も!


観客のヒト達が、ボクのサプライズな登場にびっくりしながらも期待の眼差しを向ける。偶々通りすがっただけなんて言えない!


「ラフィ様、それとタマ。只今連絡をしましたので飛び入り参加の方お願い致します。ファンの期待を裏切れないでしょう。」


「ええと!分かりました!」


「ああもう!なんていう日よ!!」


ボクは魔法少年の姿に、タマさんはデビルズ・エコーとして登場すべく慌てて舞台裏へ。キュルゾウはミライさんへ手渡された!


「当機が案内しますので、ミライはそのまま式場へ届けて下さい。」


「うえっ?!そんな事ある?!‥‥っ!分かったってば!」


ミライさんはブランさんに先導されながらも走り出したのだった。

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