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458、今日は休日

そのまま夜をミライさんの抱き枕として過ごし、ミライさんが起きる前。朝早くにパンタシアへ。ミライさんのお部屋にドアを付けちゃったけど、朝ごはんを一緒に食べようかなって。


その前にタマさんと朝のお風呂にいかなきゃ。まだ早いのにタマさんはもう起きていて、


「結局向こうに泊まっちゃってさぁ。ほら、行くわよ。」


尻尾にボクを巻いて露天風呂へ。フィクサーさんがスマイルから出て来て一緒に脱衣所に。ブランさんは朝ごはんを用意してくれるみたいだった。


先客の鼻歌が湯気に乗ってお風呂場からふわふわと。


カテンさんが宙でうねりながらシャワーを堪能していた。全身をミスト状のシャワーが撫でるのが、堪らなく気持ち良いらしい。


「カテンさんも一緒に入りますか?」


「我を気にせず入れ。我も先程起きてな。昨日は泥のように寝たわ。」


チラリとタマさんを見るけど‥‥気にしないんだ。嫌がるかなって思ったのに。


「にゃは、動物扱いですね。」


小声で茶化すフィクサーさんを、タマさんの尻尾が叩いた。


「差別する訳じゃないけど、気になるかと言われたら鬱陶しい以上の嫌悪感は無いわね。シャワーを浴びながら踊るのはウザいけど。」


カテンさんもボク達の肌を見ても特に感慨も無く。


「昔下界を這うヒトは、薄布一枚どころか裸で過ごす奴も多かった。」


カテンさんには亜人という概念が薄い。全部引っくるめてヒト。オークもサキュバスもニホンコク人もヒトで、好奇心を持って接する隣人以上の存在にはなり得ない。


「ほーらラフィ。あんなの放っておいて洗わせなさいよ。」


タマさんの手がワキワキ。ボクの脇腹を指先が撫で回す。耳の辺りの匂いを嗅がれて、お腹を遠慮なくサワサワ。


いつも以上にスキンシップ多めなタマさんに、ボクもドキドキしながらなすがまま。恥ずかしいけど嫌じゃないし。撫でられるのも触られるのも好きだから。タマさんのやわらかにぐいぐいと頭を預けさせられ、耳まで熱くなるボクは甘えていた。


「アツアツですねー。」


隣で体を洗うフィクサーさんは茶化しながらも邪魔はしない。でも視線はボクの下腹部へ向いていて‥‥ってそんな所見るのはダメですって!


慌てて手で隠すけど‥‥反応しちゃって収まりが悪かった。タマさんもそんな様子に満足げ。伸びる指先に、ヤっと答える。


「しかしタマよ。毛の処理はもう少し丁寧にした方が良いのではないか?我もネットで知ったのだが、女性は毛の処理に特に情熱を掛けるそうだ。髪の毛は剃らずに整える癖に、それ以外の───」


投げられた桶がカテンさんの頭を直撃?!


オウッ?!なんだ急に?!


デリカシーも一緒に知っておくべきだったわね!!


「キモい所凝視すんな!!性欲が無かったら何処見ても良い訳ないでしょうが!!ムキ──!!出て行きなさい!!」


「分かったから投げるな!ううっ、凶暴な奴め。」


そんな騒ぎの中、ボクはフィクサーさんに髪を丁寧に洗われていた。手付きが悪魔的に気持ち良い。


「元気有り余っているようですね。ほら、タマは無駄毛処理をあっちでしていなさい。」


「こんの‥‥!」


そう言いながらも、ボクの視線から逃げるようにコソコソと洗い場の裏手に行ってしまった。身だしなみを整える大変さをボクは知らない。髪もあまり伸びないし、それ以外の毛も大して生えない。整えなくても眉毛は綺麗だし、鼻毛が気になった事もないかも。


「手入れが大変な種族は苦労しますねー、にゃは、ワタシは悪魔ですので。魔法生物には無縁なお話です。」


「いつもタマさんとブランさんが髪を梳かしたりしてくれます。気持ち良いけど、変わった感じはしないんです。梳かさなくても最初から整ってる感じ。」


皆で露天風呂の湯船に身を沈める間、フィクサーさんがボクのホロウインドウを操って脱毛エステの広告を見せた。


『これで面倒とオサラバですよ?』


「獣尾族は脱毛しても半年で普通に生えてくるのよ。元々毛深い種族だし。完全脱毛とかもあるけど、あれホルモンバランス崩れるのよね。」


快適さと健康をトレードに。フィクサーさんも分かってたみたいで、ヘラヘラ笑ってホロウインドウを閉じた。


あまり朝のお風呂でゆっくりしていられないし、そろそろ出ちゃおう。ボクが上がれば皆も続く。速乾タオルドローンがボクの体を拭く間、ブランさんが髪を乾かしてくれた。


同時にミライさんのスマイルに、今日の予定を送っておく。今日もミライさんにシブサワタウンを案内しようかなって。大きな山場を超えたご褒美に、ボクも数日休日になっていた。


エンジェル・ベリー♡!!の皆がEXPOのお仕事をしているのに、ちょっと悪いかな?でも流石に精神的に疲れた。



『ミライ』

おはよ!居なくなっててビックリ、お部屋に見慣れないドアが付いててもっとビックリ!!私も朝風呂浴びておくよ。

朝ごはんまで出してくれるなんてありがとね!マジ大好き!



調子の良いノリなメッセに返信を。ブランさんが豪華な朝ごはんを用意してくれていた。今日はお刺身定食!


お刺身、アジのグリル、海鮮出汁の効いたミニお鍋に、サーモンサラダにお漬物とホカホカご飯!カラフルゼリーのデザートも付いてくる。


リビングでちょっと気圧されるミライさんへ、ブランさんはふんすっとお椀を差し出した。


「開拓者志望でしたら、これぐらいご飯をかきこめる体力は必須で御座います。朝からトースト2枚とヨーグルトで戦えるでしょうか。」


「うっ‥‥!豪華でテンション上がるけど。頑張って食べます‥‥」


ボクとタマさんにとってはいつも通りの朝ごはん。でも世間一般的には結構重めの朝ごはんだよね。いっぱい体を使う開拓者だから、体力作りも兼ねてご飯の量は基本多めなんだ。


「ま、アタシだって1年前まではこんな豪勢な朝ごはんとか食べてなかったわよ。高級ホテルの朝食みたいじゃない。毎日オートレシピで作れるカロリー爆弾な適当ハンバーガーだったわ。」


「いただきますっ!」


あむ、はぐはぐ。小さなお醤油ドローンが、脳波に反応してチュッと適量お刺身を濡らす。お箸で摘んでパクリ。ホカホカご飯をはふはふ。


「便利ー。いちいちお箸置かないと醤油とか弄れなかったけど、これ良いじゃん。ねえ、幾らするのこれ?」


どうだっけ?結構前に買ったし‥‥


一緒に食卓を囲うフィクサーさんが、ボクのホロウインドウに商品紹介ページを映してくれた。


「15000円?うーん、便利だけど思ったより高い。」


「こーいう無くても良いけどあった方がQOL上がるやつって高いのよね。金持ちが一般人に差を付けるグッズ的な。」


生活を便利にしてくれる“楽活ドローン”は生活ドローン専門店、エンジェル・フライのもの。全体的にお値段高めな代わりに高品質で、保証も充実していて人気店なんだ。


パリパリ焼き加減のアジのグリルはそのまま食べても良いけど、備え付けのバンズに挟んで即席バーガーにするのも良い。バーガーの中にサーモンサラダも挟んでガブリ!


ん〜っ!お口が幸せだよ!


パンタシアのドアが開いて、カテンさんも顔を出す。カテンさんでも食べやすいアジのグリルバーガーを、ブランさんはそっと差し出した。


「おおっ!これは美味い。良い賄いを出すな。」


皆で朝ごはんを食べて、先ずはミライさんに最新モデルのスマイルを買うようお勧めを。


「ミライさん、リビングのあそこ。あの窪みは通販用の転移陣なんです。この部屋専用の転移陣の情報を、通販サイトに登録する時に一緒に登録して。買えば発送準備が整い次第すぐ来ます。」


大型の家具とかは流石に運送飛行ポッドとかが持ってくるけど、小型の家具やインテリアとかそういうのはここに直ぐに届く。


「そういうのだったんだ。買って即届くとか最高じゃん。私の居た時代じゃ基本明日以降だし、遅いと1週間以上待たされるんだよ?」


「不便な時代もあったもんねー。そんなに待てないわよ。」


ブランさんが食器を片付けてくれている間に、ミライさんはボクお勧めのスマイルを買っていた。開拓者業務用モデル、収納内に入れておいても脳波で通信出来る優れもの。


1世代前は業務用モデルと言ったら脳に埋め込むやつが多かったけど、手術の手間や費用もそうだし。故障した時の交換も大変だったから。ボクも買った次世代モデルは通信技術の向上によって、複雑な脳波コントロールを収納内でも安定して出来るものになっていた。


お値段30万円程。


「高過ぎない‥‥?」


「でもすっごい便利ですし、これからの収入を考えると安いのを買うと後悔します。」


タマさんも、


「どうせ50万じゃ開拓者の初期投資分には足らないし。今更低ランクが装備するような安物買っても仕方ないでしょ。装備は交渉次第でそれなりなもんをシークレットサービスの業務中は貸与して貰えるって。丸腰じゃ務まんないのはそうだし。」


ミライさんは暫く悩んだ後、結局買う事にして全財産の5分の3を支払ったのだった。


転移陣に洗練させたデザインのパッケージがポンと現れる。


サイバーシティの最先端をミライさんは楽しむ。直感的に操作出来るホロウインドウに感動して、その多機能性に驚いて、大はしゃぎでボクの肩を揺さぶった。


「きゃー!SF映画で見たやつ!前の簡単なアレとは全然違うじゃん!立体的!超便利!」


気になったら今日の天気から最新ニュース、付近の美味しいカフェに手に取った商品の最安値が幾らかまで全部知れちゃう。街中で聞こえた音楽の曲名を知って、気に入ればそのままサブスクミュージックアプリのプレイリストへポンと追加。


ARで投影されたボクサーとボクシングも出来るし、カラオケアプリを使えば街中で大声で歌っても誰にも迷惑を掛けずに音響を楽しめる。


業務用だから開拓者アプリと連携してもっとお仕事をスムーズに。


ボクはブランさんにお任せだからあんまり恩恵を感じないけどね。


最新鋭に酔いしれるミライさんはボクに手を引かれて、そのまま街へ繰り出した!


アプリで呼んだタクポの中、ミライさんと一緒にシブサワタウンを見下ろした。


上空から見ると学校施設や塾の充実した学生街、エビスタウンのように賑やかな歓楽街、行政施設が一まとめな行政区、そして街の周囲を埋める住宅街。キッチリ分かれていて、整理整頓された街だった。


「じゃあ早速街探検にレッツゴー!!」


タクポの乗り心地にワクワクしながら、マップアプリで気になる場所をピックアップ!


『ファッション?オシャレなスイーツ?にゃは、全部がありますよ。』


「アタシはインテリアショップ寄りたいわね。」


「ボクも気になります。パンタシアに飾れるインテリアが欲しいですね。」


通販で見るのと、実際に手に取って見るのとじゃ違うから。


タクポが飛び出したのだった。

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