452、全てを出し合う決戦へ
英雄の誰かが創り出した無数の兵隊さんは槍を携える。弓を構える。それは中身の無い鎧だけの存在だけど、半透明なモヤに包まれていた。
迎え撃つミニフィー軍団はドラゴンファングシリーズで武装して、弾幕を張りながらガンガン押し上げていっていた。
ミライさんと一緒に動くボクは、ブランさんと一緒に進軍。フィクサーさんはホロウインドウの中で状況を見ていた。
「いけー!いけー!頑張れー!」
ミニフィーを応援するミライさんはなんだか楽しそう。一緒に駆動魔具で国道沿いに敵の本陣まで一直線!ってしたいのに、急に壁が迫り上がって迷路の中に閉じ込められてしまった。
ミライさんと分断されるも、ラビットT-60A5に履き替え渾身の飛び蹴りで壁に穴を開けて突き進む。ミライさんの反応が遠くへ飛ばされていた。転移の類いかな?
「おいおいおい!折角のダンジョンなんだしズルするなよ!」
迷路に反響する男の声が聞こえた。何処からともなく無数のヒト型が現れ、その足音は雪崩のよう。ゴーレム的なそれは2mぐらいあって見上げる程。
「ブランさんは後ろをお願いします!」
「ラフィ様は前だけを見ていて下さいませ。」
後ろからも物量任せにゴーレムが迫ってくる。軍勢を分断して各個撃破する凄い魔法だけど、ボクは止まらないよ!!
セイグリッド・エンジンを展開!白銀の戦車になって、そのままゴーレムの群れの中へ!勢い任せに突っ込まれるとゴーレム達もどうしようもなく、バルカン砲を使うまでもなく轢き潰されて粉々に。
バルカン砲を壁に向かって薙ぐ。一瞬で粉々になった壁がずっと向こうまで瓦礫の山。その中を全速力で駆け抜けて、瓦礫を巻き上げ猛進!
「何なんだよ?!」
向かう先はR.A.F.I.S.Sで検知した脳波の位置。この魔法を発動させたヒトの下まで止まらない。なのにぐぐっと世界が歪んで再びボクはどこかの地下道へ。迷路みたいになった世界は何処までも続いて行く。
「意地でも近付かせないつもりのようで御座いますね。」
ブランさんはそうぼやくけど、フィクサーさんがひょいとホロウインドウから現れて手を叩いた。
「まぁワタシにお任せ下さい。魔法の専門家ですよ。異界化に似た面白い魔法ですが、こういう魔法は特性的に完全に閉じた空間を作れないんですよ。」
魔力の循環の都合上、何処か外部に接していないと構造的に酷く脆くなるんだとか。内部でグルグルと魔力を回すだけだと魔素が空になって魔力不足に陥りやすい。だから外部から魔力を蓄えた魔素を取り入れる必要があった。魔力が不足すると魔法陣が壊れて維持できなくなっちゃう。
「じゃあこの通路に蓋をしてしまったら?」
フィクサーさんがあっさり魔法に干渉して、通路を塞ぐよう壁を一枚作ってしまった。ボク達と一緒に移動しながら、次々と壁を作り足して魔力の流れを妨害して行く。
直ぐに地下道全体が悲鳴を上げるようグラグラし始めて、地表の崩れた国道の上へ投げ出された。ボク達を焦った目で見る、10人ぐらいの青装束の男達。10人がかりでこの魔法を発動していたらしい。
ボクが着地する前に、S.S.Sから覗いたフェンリルが10人共纏めて頭部を灼き貫いていた。もう惑わされないよ。
「お見事で御座います、ラフィ様。しかしミライとは逸れてしまいました。」
「大丈夫です。行く先は同じユグストゥスの所ですから。」
「にゃはは、行きましょうか。」
ステラヴィアで滑走して行く。決着を着ける為に。
ユグストゥスは見上げた。思わず髭を弄り、少しばかり呆けてしまう。野営地から少し先で大怪獣が暴れていた。
都市で指名手配される、大怪獣の中でも特に危険度の高い個体。全身を機銃でトゲトゲにした、大きなハサミを振り回すオオサソリ。シャカシャカした動きで建物を無いもののように蹴散らし、舞った瓦礫が散弾銃のように辺りに降り注ぐ。
食い止めようと動く魔法の鎧の兵隊は、かつて帝国と覇を競い合った覇国の大王が生み出す。ヨルダインの名を持つ大王は、威風堂々とした長髭を垂らし魔法の馬に跨り大怪獣と戦っていた。
征伐軍に自身が直接出向き、そのままアタナイの地の王になろうとした野心の塊。参陣した王族も多少は居たが、覇国大王は中でも抜きん出た覇気を持っていた。ユグストゥスを大いに警戒させるも、躊躇無く血を分ける決断力にその器の大きさを見せる。
代々受け継いだ賢者の石を懐に、王家の魔法で不死の軍勢を呼び起こす。歴代で最も強大な魔法を操るヨルダインは正に覇王。
「ぬぅ‥‥ッ!アタナイの地の怪物は規格外だな。」
ジョン・ドゥは景気良く機銃をばら撒き、周囲の被害ガン無視に大暴れ。行先を軍勢が練り上げた大魔法の結界で塞ぎ、質量任せのタックルを危うくも受け止める。ふと、大怪獣が姿を消した。
突然の静寂に場が混乱し、張られた結界の内側で再び姿を現す。サソリの脚が兵隊を蹴散らし、薙がれた大きなハサミが100体以上を空へ巻き上げた。口腔から放たれた光学ビーム砲は野営地を一薙ぎ。思わず伏せたユグストゥスの隣、天才軍師のホウゼンが足の先だけ残して蒸発してしまった。
その周囲にいた英雄の4人は今ので即死してしまう。
頑強なる大楯、ガンツ。魔導の顕現、ミラルカ。龍の一族、ゴウリュ。死の崇拝者、フラガ。
皆反応も出来ずに消え去っていた。
直後に野営地を凄まじいミサイルの雨が襲う。地形は粉砕し、大地が裂け、流通センターが崩れ去って行く!
「あまりにも‥‥こんな事があり得るのか?!」
ユグストゥスだけは因果律に守られ無事なものの、野営地に居た全員が砕け散ってしまった。規格外。圧倒的。破壊の権化。
手も足も出ないとは正にこの事を言う。
───いや、ユグストゥスは諦めてなどいなかった。
攻撃がユグストゥスへ通用しないのなら勝てる。魔眼を発動し、その視界内の大怪獣へ圧壊を命じた。
タマモの禁術に似たそれは、空気中の魔素へ干渉し狙った場所を爆縮させる事が出来た。ただ負担も大きく、ユグストゥスの魔眼が血を吹き出してしまう。目前で大怪獣が歪に凹んでいた。
堪らず姿が消失し、再び何処かへ行方をくらませる。
そんな中、急に魔法の兵隊が力無く倒れ込み消失し始めた。
ヨルダインの背後、紅の燕尾服がビームシュナイダーを突き刺していたのだ。背後からの奇襲は舜動に突き動かされ、その心臓を灼き裂いてしまった。魔法の軍勢に守られる1番守りの分厚い場所にも関わらず。
「キサマ‥‥?!」
「悪いわね、アンタは厄介だから消えて貰うわ。」
落馬する合間に、この地を征服出来なかった無念を噛み締める。それか、アタナイを舐めて掛かって死んだ自身の愚かさを嗤った。1度目の死因は狙撃、2度目は背後からの奇襲。
ヨルダイン自身武術の達人であり剛腕が大刀2振りを軽々と振るい、吠えれば豪傑さえも怖気付かせ、魔法の隕石を落として周囲を焦土へ変える化け物。
剣と魔法の世界なら間違いなく最上位に君臨する戦士。
しかし結局敵は正面から正々堂々戦ってくれず、ぶつかり合う派手な戦を愛するヨルダインはその力を発揮し切る前に倒されてしまう。戦いは無情な事を知っていても、
(冷えた戦だった───)
覇国大王の呆気ない最期だった。
不死の魔法の軍勢相手に進軍を阻まれていた自衛隊がユグストゥスの元へ動き出す。
「まだだ‥‥まだ終わらん!!」
ユグストゥスは懐から、遥か昔に帝国に打ち倒された魔神の血を取り出す。征伐軍へ従軍する際に陛下から任された最終手段。いざとなった時は、これを使いアタナイの地を命と引き換えに滅ぼせという命令。
「ただでは負けんぞ。全部を出しきって戦うのだ!」
血の入った瓶を飲み干す。その体が纏う魔力が激増する。ヒトの姿を捨て醜悪な巨人へと変化していった。
背中から腕を8本生やした10腕の魔神。太古からの封印が解き放たれた魔神は、起き抜けにユグストゥスの意識と体の主導権を奪い合いながらも激しく暴れ回った。
その姿は何処からでも見る事が出来た。
「あれは‥‥?!」
「チッ、我々も行くぞ。殴れずとも自衛隊の支援は出来る筈だ。」
英雄を片付けたシンイチの率いる部隊がそのまま進軍して行く。
「アラ、あんなのが残っていたのネ。」
セルペンスはウィッチワークス旅団へ集合を掛けながら、巨人の足元へ向かった。
「あの子ったら。あんな危険なものを隠してたなんて。」
瓦礫の山の上、フーガも荒れ狂う巨人を見つめていた。




