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SP ハロウィンパレードが荒野から始まる

今回からハロウィンエピソードを毎日投稿していきます!

全5話です!

───某日、ヤマノテシティは迫るハロウィンの話題で盛り上がっていた。エビスタウン・グルメストリートは既にカボチャメニューが一杯!学生街なタカダタウンも可愛いカボチャさんが通りを賑やかす。


パンタシアの中、タマさんは。


「そろそろもうそういう時期か。」


一緒にソファーの上でスマイルをいじいじする時間、まとめサイトかハムハムでハロウィンを意識したように呟いた。


「アングルスでやったハロウィンパーティーは楽しかったですよね。」


アングルスに居た頃もハロウィンパーティーやったな。皆で仮装して、カボチャ料理食べて。ガボチャ好きなルナさんが美味しい物を用意してくれていた。


「今のラフィ様は有名人、季節のイベント事から目を逸らす事は出来ません。既にラフィ様へモモコさんから話がしたいと。」


敏腕秘書なブランさん、開いた予定表にモモコさんとの面会予定が。


『世間はラフィさまのあざと可愛い仮装を求めています!可愛いを振り撒いてファンをもっと獲得するチャンスですよ!』


フィクサーさんも小さなパンプキンが付いたステッキをフリフリ、指を弾けばコウモリのエフェクトが散った。


「人界の祭り事には疎いが‥‥我も参加したいな。」


宙をうねったカテンさんは、共有モードになったハロウィン広告を眺めていた。もう1週間後がハロウィン、ハロウィン関係の広告がハムハムにも沢山流れてくる。


「しかし妙だな。ハロウィンまで1週間もあるのだろう?何故今ハロウィンメニューとやらがばら撒かれているのだ?これでは当日の特別感が薄れるだろう。」


龍の頭上に浮かんだハテナマーク、ボクの頭上を素通りしてタマさんが適当に答える。


「アンタは企業の貪欲さを知らないのよ。お祭りにかこつければどんな商品でも売れるようになるの。カボチャムースを薄っすら掛けただけのケチ臭いプリンが、定価よりも割り増しで売れる時期よ?」


「期間限定って言われると何だか手が伸びちゃいますよね。」


ボクのにゅっと伸ばした手、求めた指先が摘んだのはブランさんが用意してくれた可愛いカボチャお菓子。リビングの卓上は既にハロウィンだった。


「ううむ、そういうものなのか?カボチャの美味さは分からんでもないが、何でもかんでも同じテイストの味だとハロウィン当日には食傷気味になってしまうな。」


なのに不思議。


「意外と飽きないんです。」


ちゅっとボクのお口へカボチャプリンが吸い込まれた。舌の上でまろやかが踊って、ちょっとザラついた食感が喉へ落ちていく。


「んっ、美味しい。」


通年通して食べるなら飽きちゃうけど、カボチャプリンが店頭に並ぶのもこの時期だけ。期間限定、魅力的な売り文句。


寝室へ向かうボクの首を、タマさんの尻尾がくるり。ブランさんへ手を振ってドアがピシャリと閉じた。タマさんに好きなだけ可愛がられ、撫で回され、体温に甘えたまま夜が更けていって‥‥


太陽が大地におはようを告げてから数時間後、こんにちはの時間に応接室へモモコさんがやって来た。今日はキュエリさんも連れずに1人だけ。


「ラフィ!会いたかったよ。」


「よく会ってますよ。でも、ボクもモモコさんに会うのは好きです。」


「ふふふ、可愛いなぁ。」


応接室のソファーで向かい合ったのはタマさん、ボクの隣にモモコさんがお尻を置く。正面から向けられたジト目をモモコさんは軽く流した。


「さて、今日は面白い話を持って来たんだ。ハロウィンに行われる催し物への招待チケットさ。」


トウキョウシティの都市から荒野を舞台に、ハロウィンに因んだ仮装で面白レースをするってお話。


「レースですか?」


「そうそう。ハロウィン仕立ての山車の上に乗って、妨害含め何でもありなレースに挑むんだ。」


勝負の決着はあくまでゴールへの到達。山車が破壊されようが搭乗者がダウンしちゃおうがお構いなしにレースは進む。


「使えるのはトイ・ウェポンのみですが‥‥武器使用じゃなければ良いのですね?」


「ま、ルールに明記されている訳じゃないってだけ。勿論実銃をぶっ放したら警察に逮捕されるから。ただ‥‥」


「当機が山車の舵取りをする運転手として搭乗する分には大丈夫という事で御座います。」


バトロイドのブランさんでも今回は参加出来そう。聞いた感じだとランブルファイトのようなしっかりとしたイベントというよりも、ハロウィンの騒ぎに便乗して好き放題やっちゃおう的な。


「元々は企業の悪ノリから始まったお祭りでしょ?企業の宣伝山車でチキチキレースすんのよ。シブサワ名義で出場すれば良いのよね。」


モモコさんは話が早くて助かるよ、と笑った。山車‥‥と言ってもしっかりエンジンの付いた大型車。車と違うのは運転席以外座席は無いし、山車の上に立って参加する事。


『毎年まぁまぁ怪我人の出る荒行事ですね!参加者は開拓者に企業の私兵、傭兵連中。ラフィ様へ合法的に挑みたい者が集いそうです。』


「受けて立ちます!皆で面白楽しくチャンバラレースを賑やかしましょう!」





『明日はハロウィンですよっ!』


大手ニュースチャンネルに備えられたゲスト席、悪魔っ子な格好のボクは笑顔で手を振った。強化外装の衣替え機能はハロウィンのコスプレに最適!


『ラフィさん、明日はハロウィンパレードに出場するのですよね?』


『はいっ!皆で仮装して荒野から都市まで駆け抜けます!初参加ですけど、動画で予習した感じすっごい賑やかで楽しそうです。』


可愛いから面白いまで見た目様々な山車が勢揃い、各企業が山車にヒトを乗せてレースへ送り出す。


『やはり最大のライバルとなるのはニッポンイチでしょうか?』


『レイホウさんも出るそうです。ボクが出るって言ったら私もって。一緒に遊べたらなって思ってましたから。』


アナウンサーさんがもう一つライバル候補の名を挙げた。


『そしてもう一つ、お祭り公爵さんでしょうか。』


トウキョウシティから全国展開したメガコーポ、KABUKI。そこの代表のご子息さん。とは言っても代表はもう80歳のお爺ちゃんで、お祭り公爵さんも50代。それでもエネルギッシュで、こういうお祭り事に目が無くて。実はランブルファイトにも出場していたのだとか。


『KABUKIの暴れ獅子こと、お祭り公爵はその鉄腕で多くの勝利を掴み取って来た大物です!既に数度ハロウィンパレードで優勝を飾った事もあるのですよ。』


お祭りが好きな所はボクも一緒!歳は離れているけど、分かり合えるかな?


『優勝するのはボク達なんですから!』


画面の向こうで観ているお祭り好きな伊達男へ、グッと拳を突き出して挑戦状を叩き付けた。





ニュースチャンネルを眺めるお祭り公爵、ことアキラ。赤く染まった目を引くボンパドールの下、大きなサングラスが目を薄紫に隠す。サイボーグ化した大柄な肉体の下には特殊ミスリル骨格、オーガの筋肉が埋め込まれた脚は図太く強靭。両腕もまた、丸太のよう。


「ははっ!あの守護天使様が俺様を意識して下さったぞ!」


ぱっと見で誰もが抱く印象は遊び人。ワイルドに整えられたヒゲを片手でなぞり、鋭い目が向いた先には表情少ない執事が1人。


「今回はどんな仮装で?良い加減教えて下さりませんか?公序良俗に反する衣装は禁止ですよ。」


「トバリ!こういうのはサプライズな方が胸が躍るじゃねーか!分かってねーな!」


トバリの振る舞いは執事というより‥‥子守役。50さいの男児のお世話は畏まった口調だけでは務まらない。


「前々回、キワドイビキニ姿で毛むくじゃらな汚体(おからだ)を晒して出場禁止になったのをお忘れで?コウシン代表がどれ程キレ散らかした事か。」


「ケッ、あんなジジイ放っとけよ。あのまま何世紀でも代表に居座り続ける気なんだろう?俺様は好きに生きるんだ!」


代表の息子、会社の次世代を担う中核にある筈の男の顔は老獪な(まなこ)に映らない。最後に交わした言葉は、


「大人になれ‥‥!クソジジイが。」


その身を、脳の殆どの部分さえサイボーグにして生きながらえる老醜がKABUKIを支配する。お祭り公爵の派手な名は、会社を覆う影の中でギラギラと光を放った。





『にゃはは、これがシブサワグループの山車ですか!』


笑うフィクサーさんの前、純白と青が美しい山車が。常に薄っすらと霧を纏っていて幻想的。


「ハロウィンなのにいつも通りじゃない。」


タマさんの苦情をキュエリさんは予想通りって顔で受け流す。


「これを見ても言えるかな?」


指を鳴らせばパァッ!と山車が虹色に眩く?!きゃーっ!コンサート会場みたい!光の柱が幾つも天へ伸びて、虹色に染まった霧が渦を巻いた!


「虹渦島をイメージしたのだな。しかし色合いが派手過ぎて‥‥ゲーミングカラーと言ったか?やや下品だな。」


「これはこれで綺麗で良いですよ。ボクは気に入りました。」


パパッと乗ってしまう。山車の内部に操縦席があって、ブランさんは早速身を滑り込ませ操縦の確認を。


『ルールの確認をしますよ?』


武器はトイ・ウェポンのみ使用可能。格闘戦は大丈夫だけど、ラインレーザーを纏うブレードランナーでのキックとかは禁止。ランブルファイトと大体同じ。違う所は戦闘に使わなければバトロイドの使用が可能って事。持ち込みに関するルールが無いって方が正確かな?


戦いに関するルールはランブルファイトと比べるとかなり荒い。バリア装甲が破損してもリタイアは無いし、自己判断で死傷しないよう気を付けて撤退してねって感じ。そういう判断が付かないようなヒトは、多分このお祭りに参加する事も出来ないと思うけど。

参加者は皆企業が選んだ精鋭なんだから。


山車が破損した場合、修理可能なら修理してもOK。ゴールへ上位10位が到達するまでなら、山車の破損状況で失格になったりしない。


ひょこ、ボク達の山車の前今回の為に一緒に遊ぼっ!って招待した仲間が姿を現す。


「へへへ‥‥旦那様。来ましたよ。」


「ラフィ〜、面白そうな話じゃん!」


ヤスコさんとジャックさん。ヤスコさんのフリースタイルナノマシン(FSN)なら修理も簡単かなって。攻撃はあくまでトイ・ウェポンを使って貰うけど、修理にナノマシンを使っちゃダメってルールは無いよ!


「なんか微妙にズルいな。まぁルールに無いのなら良いのだろうが。」


『これは結局企業が悪ノリで開催した何でもあり無茶苦茶レースです。にゃは、毎年想定外が起こってルールが増えるイベントですよ?一昨年なんか、ビキニ仮装禁止なんて変なルールが追加されましたね。ビキニの禁止サイズを数センチ単位で指定したんですよ。』


今回はヤマノテシティも来ているし、レース参加企業は沢山ある。スタート地点は大賑わい、ズラリと山車が並んでいた。そんな様子を見物しに来る大勢のヒトが居て、その誰もがハロウィンのコスプレで身を着飾っていた。


ボク達も勿論ハロウィンコス!


ボクはカボチャの騎士さん!豪華に飾り立てられたカボチャパンツ、赤いマントに騎士の羽帽子!ふふん、トイ・ウェポンですらない見た目だけのオモチャだけど、腰にレイピアも差していた。


タマさんはサイバーゴースト、纏ったローブはネオンギラギラ。立て襟とアイバイザーで顔を隠して、足元をARの黒い霧で隠しちゃう。


ブランさんは執事服。操縦席で目立たないからって、何だか適当。


宙をうねるカテンさんの頭にはトナカイの角‥‥まだ季節じゃないよ。でも龍のコスプレって難しい。


『全身に薄ピンクの膜を巻いて、空飛ぶソーセージにすれば良かったのに。にゃはは、ワタシのアイデアを蹴った結果コレですか。』


「晒し者になる気は無いぞまったく。‥‥はぁ、我がどれ程力になれるか分からんがな。」


勿論カテンさんは魔法で攻撃するのは禁止、タックルとかも危な過ぎるから禁止、風の防御で山車を護るのもトイ・ウェポンの出力が手が出せないから禁止。参加するにあたって何度か協議した結果、出場が認められた代わりにルールの糸でがんじがらめにされちゃった。


「ラフィの旦那、あーしは?褒めて下さいよ。へへ。」


ヤスコさんとジャックさんはお揃いの‥‥魔法少女衣装。エンベリのコス衣装は当然広く売られていて、ラズベリーさんとグミさんの衣装を身に纏っていた。


「似合ってますよ。えへへ、見慣れた衣装ですけど2人が着ていると新鮮で楽しいです。」


お祭り感あって面白い!


「そう?ヤスっちがこれ着るって言うからさー。ハロウィンとか真面目に参加するの初めてで勝手分かんなくて。映えているならいっか〜。」


「今回は絶対にラフィの旦那を勝たせて見せますから。ランブルファイトでも鬼のヒミコを倒したんでさぁ。あーしらの実力を頼ってくだせぇ。」


頼れる2人も加わって鬼に金棒、絶対勝つ!そんなボク達の元にレイホウさんが。


「今回はライバルとして一戦交えさせて貰おう。しかし‥‥ラフィ、愛くるしいな。」


そっとボクに寄って頬を綺麗な指先が撫でる。ヤスコさんが反射的に退かそうとするもジャックさんに止められてわちゃわちゃ、代わりにタマさんがボクを尻尾で引っ張った。


「お触りしたいんなら勝ってからにしなさいよ。解放されていないコンテンツよ?」


「そうか。なら私が勝ったら‥‥一緒にスパリゾートへの視察を依頼させて貰おうか。最優先でな。負けたらまた今度とさせて貰うが。」


レイホウさんの顔が近くて急に顔が赤くなる。モジ‥‥ってしていると、そんなボク達を笑い飛ばす豪快な声が。


「おおっ!これはこれは!シブサワグループの守護天使様にヒムロ家のご当主様まで。」


ズカズカと歩く大男はお祭り公爵さん。赤紫のサングラスで目が見えないけど、その視線がボクをしっかり見抜いているのを感じる。一歩ボクを庇うよう前に出るタマさんを、躊躇なく肩を掴んで退けてしまう。乱暴そう、けれど。


「レディが怖い顔すんなよ、自慢の彼氏さんに挨拶ぐらい良いだろ?」


自慢の彼氏‥‥なんて言葉にちょっと嬉しそう。


『これはこれは。道化と思っていましたが、案外傑物かもしれませんね。にゃは、ヒトのいなし方を心得ているようで。』


向かい合ったボクはお祭り公爵さんへ。


「今日は正々堂々勝負ですよ!折角のレースです、楽しんだもの勝ちですから。」


拳をグッと背伸びして向ければ、コツンと拳が合わさった。


「ハッハッハ!なんだ案外面白いボウズじゃねぇか。ヒムロの小僧も、纏めて相手してやるよ。祭りを楽しもうぜ!」


お祭り公爵さんが去る間、レイホウさんは興味なさげにしていた。


「噂通りの男だ。ああ言う手合いが私と直接口をきくのは風聞が宜しくなくてね。」


誰かを介さずに口をきくつもりもないなんて。その気配は正に上流、なのにボクへ向けられた声色は少年のよう。


「さぁ、そろそろ時間だ!お互い楽しもうか。」


「はいっ!頑張りましょう!」


猪突猛進なハロウィンパレードが始まろうとしていた。

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