387、煌めく魔法の花畑が就活中の天才に光の手を差し伸べさせた
『魔法少女エンジェル・ベリー♡!!公式』
エンジェル・ベリー♡!!の皆がトウキョウシティのB地区とA地区でゲリラライブ?!
摩訶不思議なマギアーツを携えて、EXPOで披露される新作マギアーツのちょい見せだ!
↓詳しくはこちら↓
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#エンベリ #ゲリラライブ開催!
それぞれの地区を管理するモモコさんとレイホウさんの許可が取れたし、早速ボク達はヤマノテシティから転移ゲートでひとっ飛び!
「ラフィ様、只今都市間移動手続きを終えましたので。どうぞショーを盛り上げて下さいませ。」
ワープゲートでも手続きはちゃんとしなきゃね。ブランさんが手続きを済ませてくれて、噴霧器を携えたボク達はショーの予定地へと向かう。
とは言っても、今回のショーはプロレスじゃなくてあくまで新作マギアーツの披露。皆で駅前を花畑にしちゃうんだ!
ショーの告知が入ったお陰か、駅前は既に人集りが。
「さぁ!魔法少女の皆、準備は良いかい?!」
ボクに抱かれて付いて来たキャウルンさんの掛け声に、
「「「「はいっ!!」」」」
皆の声が合わさった!
魔具路を滑走して一気に迫り、観客達の頭上を飛び越えて行く!
「皆っ!エンジェル・ベリー♡!!だよ!見に来てくれてありがとう!早速、駅前をお花畑にしちゃうんだから!」
ラズベリーさんの掛け声に歓声が上がって、ボク達の名前が口々に呼ばれていく。
ラフィー!って声に手を振って、こっち見てー!って声には笑顔で応える。ボクの楽しい気持ちが伝播すれば、自然と観客達もワクワクした顔になって声援を送って来た。
「では!注目です!!」
ボクの手に握られたノズルから、勢い良く薄虹の霧が噴射された!霧が掛かった駅ビルの一画が瞬く間にお花畑に。ヒマワリ、チューリップ、ビオラ、トケイソウ、スズランにコスモス!
多彩なお花はランダムに咲き乱れ、思わずって風に観客達は声を上げて夢中になった。沢山のスマイルカメラが忙しく動いて、SNSが途端に騒がしくなっていく。
「ほらほら!もっと行くわよ!」
「駅前ガーデニングの時間だ!」
駆動魔具で駅ビルを上から下まで滑走!ボク達が通った後にお花の道が続いて行く。あっという間に駅ビルがお花でふわふわ。誰もが最高!と声を上げた。
ボクは男の子だけど、本当に魔法少女になったみたい。皆を幸せにする魔法を振り撒いて、ボク達が翳した先が花園となる。
「アマネさん!」
「はいはい。」
息を合わせて駅前広場で一緒に踊る。花が咲き乱れたハート型が地面に残された。
お花畑になった駅前広場を最後にぐるりと回って、そのままボク達は手を振って退場して行った。
『エンベリ追っかけ隊』
ゲリラライブに間に合って良かった
なんか凄い技術じゃないこれ?駅前がめっちゃ綺麗になってる!
#エンベリ #ゲリラライブ #ラズベリー可愛い
『マキシマムきび団子』
駅ビルが花畑になっててXDXDXD
水を掛ければ好きな場所に花畑作れるんか
#エンベリ #ゲリラライブ #ARガーデニングに革命来たか
『user12659@ハマ』
仕事の移動中だったけどゲリラライブ見に行けた
次のEXPO楽しみだな
#エンベリ #ゲリラライブ #EXPO
『つくだに』
エンベリが何かする度にトレンド入りするのはもう恒例じゃん
エンベリが全力でサポートする次のEXPO、ファンなら行かない選択肢ないよな
#エンベリ #ゲリラライブ
『ラフィ可愛いアカ』
花畑を生み出しながら駆けるラフィきゅん最高!XD
神秘的な感じがランクアップって感じ?
ラフィぐるみと一緒に見に行っちゃった!
#エンベリ #ゲリラライブ #ラフィ可愛い
『エンベリ推し』
ラズベリーの視線ラフィに向き過ぎ〜っXDXD
グミちゃんの笑顔も頂きました!
ブラックカラントはいつも通りどこか妖艶でえっちだ‥‥XD
新入りのアマネちゃんダルそうな流し目、良いじゃん
#エンベリ #ゲリラライブ
ハムハムの賑やかな様子を、ワープゲートで一旦部室まで戻ったボク達は眺めていた。
「相変わらずラフィ人気ねー。」
「そんなにラフィ君の事見てたかな‥‥?えへへ。」
「とは言え前よりも私達のファンは確実に増えているのぅ。グッズの売り上げも右肩上がりだそうだ。」
「へぇ。そーなの。」
スマイルを眺めるボクをアマネさんの手が触ろうとして、グミさんに引っ張られてグイグイと。
「ラフィは懐こいけど急に触ったら驚かせちゃうでしょ。」
「別に。ちょっとだけだって。」
キャウルンさんはそんな魔法少女達に、適度な緊張感を保つようにチクリと苦情を。ボクの頭の上にのしっとお尻を置いたままね。
「キャウルンさん、重いです。」
「ラフィも、スマイル眺めちゃダメだって。今はお仕事‥‥ええと、皆の応援中だから。」
「ごめんなさい。次は20分後まで待機ですよね?」
「ま、ゲリラライブと言ってもヒトが集まらなきゃ意味無いし。最初は話題作りに一回、次はちょっと時間を置いて集客‥‥エンジェル・スピリットを共にする仲間を集めないとね。」
「キャウルン、苦しいわよなんか色々と。」
所々素が漏れるキャウルンさんとグミさんが睨み合っていた。帰って来たボク達にチョウリさんが飛びついて来て、早速使用レポートを求めてくる。皆各々レポートを書き上げて、チョウリさんへ送信した。
「もう!最っ高だよ!ハムハム見てるけど、M.S.P.S新作のマギアーツがこんな形で注目されるとサァ!頑張った甲斐があったなーって。」
他の部員の面々も口々に感想を飛ばしあって大賑わい。もう改善案まで飛び出していたようだった。そんな中、ボクのホロウインドウが開いてぬるりと。
電子の悪魔、フィクサーさんが顔を出した。
『にゃは、面白い技術ですよね。お花畑を作る魔法、ワタシも聞いた事はありましたが委細は知りませんでした。』
ホロウインドウの中の白タキシードに、チョウリさんは驚いた風に声を出す。その星形の瞳は真っ直ぐチョウリさんを見つめていた。
『取引をしませんか?』
悪魔と言えば取引。何だか悪魔らしい振る舞いのフィクサーさんをボクのジト目が見抜く。変な事考えちゃめっ、だよ。
しゅるんとホロウインドウの中からフィクサーさんが姿を現して着地した。ブカブカな白タキシードをコミカルに揺らして、優雅に一礼。
「大丈夫ですよ?そのマギアーツの権利と引き換えに、悪魔の知識を授けてあげようかと。魔法の王が秘術、禁術、何でも一つ知識を交換しますよ?」
権利?このマギアーツが欲しいのかな。
と、丁度良いタイミングでボクのスマイルに通話が入って、今度はモモコさんがビデオ通話モードで顔を出した。チョウリさん達はびっくりして思わず姿勢を正しちゃう。
『急に済まないね。嫌な予感がしたので掛けさせて貰ったよ。おや、そこの悪魔は何を企んでいるのかな?』
「にゃはは、何でしょう?このマギアーツは正にラフィさまの為に生み出されたようなもの。頂いてしまおうかと。」
通話越しにため息が一つ。
『やっぱり。チョウリさん、悪魔の知識は魅力的かもしれないけど。それで売り払っちゃうのは勿体無いな。良い提案がある。』
急な話が続いて混乱するチョウリさんへ、更に追撃が!
『キミをS.T.Cにそのマギアーツごと招待すると言ったら?そのマギアーツは大きな発展性を秘めている。マギアーツの権利申請はまだだろう?S.T.Cで認可を受け持とうじゃないか。』
S.T.C‥‥シブサワテックカンパニー。シブサワグループの技術牽引を行う超一流の大企業!そうか、EXPOは学生さん達の就職活動にも繋がっているんだっけ。そして成果を上げた学生さんへ、企業の声が掛かる事もあるから尚更皆気合いが入る。まだEXPOは始まっていないけど、モモコさんのスカウトする決断は素早かった。他の企業や悪魔が唾をつけてしまう前に、いち早く入札してしまおうと動いたんだ。
フィクサーさんはやれやれと手をヒラヒラ。
「ワタシが欲しいのはそのマギアーツの権利でしたが、モモコさまが買うのでしたら結果は同じですね。悪魔の知識が欲しいのなら、別の材料を用意して下さい。貴女なら腐らせる事は無いでしょうし、ワタシは取引を受け入れてあげますよ。」
そう言ってホロウインドウの中へ消えて行った。悪魔の知識かぁ。ボクが欲しいって思ったら何を差し出せば良いのかな?
『ラフィさまならベッドの上でなら。にゃはは、知りたい事があるなら何でもお教えしましょう。』
なんて、調子の良い事を言ってホロウインドウを閉じちゃった。
チョウリさんは展開について行けず放心、副部長のハルマキさんがモモコさんへ対応した。
「部長をお誘いありがとうございます。本件につきましては将来の事ですので、この場で即決は難しいかもしれません。後程連絡を入れさせて頂きます。」
『悪かったね。シブサワから最初にお誘いを受けた事は覚えていてくれると嬉しいな。他の企業が条件を出して来たら、僕に教えてくれ。良い待遇を約束するよ。』
通話が切れて、場が静まり返る。皆の緊張の糸が切れたのと、大騒ぎになったのは同時だった。
「部長がスカウトを受けたぞ!」
「あのシブサワだろ?!ヤベえ!」
「このマギアーツそんな価値あったのか?!」
「部長が変な土着魔法を持って来たと思ったら‥‥大事だな。」
サークルメンバー達が慌てる中、ハルマキさんはチョウリさんの肩を揺さぶって正気に戻す。
「先ずは部長!!こっち向いて!」
「はわっ?!夢じゃないよね?!凄い事になっちゃったぁ‥‥!」
ラズベリーさん達はそんな皆をキョトンとした目で見ていた。温度差が凄い。
「えっと。おめでとう!」
ラズベリーさんが笑顔を振り撒く中、グミさんがこそっと。
「マギアーツの認可がどうのって何よ?」
それに答えたのはキャウルンさん。
「そりゃそこらで適当に開発されたマギアーツが出回ったら社会が混乱するでしょ?必ず都市運営委員会の企業に届け出なきゃダメなのよ。そこの専門機関で安全性とか再現性を確認して初めて正式にそのマギアーツの権利を取得できるって感じ。」
そっか。シブサワグループもトウキョウシティを取り纏める都市運営委員会の1柱。S.T.Cが認可を与える機関の役割も担っているみたい。ヤマノテシティ発のマギアーツでも、EXPOへ出展する物なら出資者として認可を受け持っても問題ない。
「皆のテンションが凄くて居心地が悪いのぅ。」
「私ら立ってただけだし。就活とかした事ないんだよね。」
チョウリさん達はひとしきり騒いだ後、顧問の教員に相談しないと!と駆け出して行ってしまった。あの‥‥ボク達は。
部室に魔法少女なボク達だけが残される。いや、1人副部長のハルマキさんだけが残ってくれていた。とても申し訳なさそうにぺこぺこと頭を下げて。
「うちのサークルはいつもこうなのです。皆研究熱心ですけど、火が付くと周りが見えなくなると言いますか。‥‥はぁ。」
ハルマキさんはM.S.P.Sの大黒柱のような。そんな感じがした。
「癒しますから。お疲れ様です。」
エンジェルウイングで包んであげたのだった。
ーEXPO真近!!トウキョウシティの英雄ラフィに直撃インタビュー!!より抜粋ー
───今、思えばチョウリさんが全ての始まりだったんです。いえ、チョウリさんが悪いとかそういう話じゃありません!でも全てのキッカケはこの日の出来事でした。
沢山戦って、大勢が亡くなって、トウキョウシティ全部をひっくり返すような。歴史的な大事件だったと思います。でもボク達は事件の中に通された一本の線、暗がりへ続く数々の陰謀と様々な人々の思惑を手繰って突き進みました。
「あまりこう言う質問をするのはいけないと思いますが、ただラフィさんを非難する声も少しばかり聞こえています。あそこまで思い切った事をするなんて、普通のヒトは考えても絶対にやらないと思います。」
あの頃のトウキョウシティは真っ暗で。ボクの手で大勢の家族を、友人を、誰もかもを引き裂いてしまったんです。けれど、ボクは正義を成したと断言します。後悔はしません。非難も受け止めます。
「全部覚悟の上なのですね。」
ごめんなさい。でも、ボクはより良い未来を創りたいから。だから戦争をしたんです。




