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349、カサノバ大空洞の戦い

歴史の深いカサノバ大空洞。3000のミニフィー旅団大隊に対して、蜘蛛のコロニーを守る3万を超す大規模な群れ。トウキョウシティの地下にこれ程の原生生物のコロニーが出来上がっていたなんて。


エイトランス・テラースパイダーもとい、巨大蜘蛛が後方から強酸を滴らせた蜘蛛糸を噴射してきた。


飛び出したAC-621シラヌイが、両腕の火炎放射で迎撃した。


宙で凄まじい勢いで噴射した燃え盛る燃料と、ずっしり重い蜘蛛糸が激突するもあっという間に糸が燃え尽きてしまった。ミニフィー達がタンパク質の溶ける悪臭を検知して伝えてくる。


シラヌイは飛び上がったまま、72連装ミサイルを発射。ロックオンした眼下の群れへ凄まじい量のミサイルが降り注ぐ!


同時にミニフィーも一斉に攻撃を仕掛けた。後方に配置されたクラスターミサイルランチャー“万雷”が、更に激しいミサイル攻撃を続ける。蜘蛛の放った酸の雨が豪雨のように横殴りに、大型のミスリルシールドを構えた部隊の後ろから銃口が覗いた。


シラヌイのバーンバズーカを、とんでもない機動力で巨大蜘蛛が身躱す。発射された糸を火炎放射ブレードで灼き払い、腰の2門の軽機関砲が狙い撃つ。壁に張り付いた巨大蜘蛛は、気持ち悪い速度でシャカシャカと回り込もうと動いてきた。


巨大蜘蛛の数は3体。司令塔の役割を持っているのかな?飛んだ脳波の動きに対応して蜘蛛達が一斉に動いていた。


ラビットT-60A5を装着した、黒軍服の精鋭ミニフィーが宙を蹴って一気に巨大蜘蛛へ迫った。紫電M10を撃ち込むも、凄まじく硬い外殻に弾かれダメージが薄い。


吐き出された蜘蛛糸は範囲が広くて、距離が近いと回避が難しかった。


蜘蛛の群れが数に任せてドンドン押し込むよう進んでくる。倒されても一切怯まず、仲間の残骸を乗り越えて地面を飲み込んでいく!


そんな中急に一体の精鋭ミニフィーの首が飛ばされた!気配が希薄で、レーダーにも映らないニンゲン大な蜘蛛は前足が鋭い鎌になっていた。動けば瞬足で跳躍して、高速道路を最高速で走る車に追いついて両断出来るパワーを見せつける。


迎え撃ったのは死神ミニフィー。速度は互角ながらも、腰に装着した大型のショットガン2丁が離れた所から胴体に風穴を開けた。危険なステルス蜘蛛はその1体だけじゃなくて、10を超す数が戦場に散って被害を出していた。


まるでダンプカーのような、分厚い装甲でずんぐりした大型の蜘蛛が一列に並んで突っ込んでくる。5mを超す体躯は近くで見れば巨壁のよう。伏せていたエクエス自走機関砲台が、真横へ一気に回り込んで激しい銃撃を浴びせかけた。


貫けなくても衝撃ですっ転んで、守りの薄い腹部を晒す。遠方から飛来した対物弾頭が、1体ずつ丁寧にお腹を穿っていった。


ミニフィーの一画が、地下を掘り進んで迫った蜘蛛の群れに飲み込まれてしまった。直ぐにミスリルシールドを持った予備隊が対応して、包囲しながら十字砲火で殲滅するけどドンドン湧いてくる。


でも事前にあらゆる状況を想定して準備を済ませて来たから大丈夫!空いた穴へ長時間燃える燃料が詰まった重たいドラム缶を投下、1発の銃弾が火花を散らし大きな火柱が上がった。


蜘蛛達の動きは想像以上に組織的で、本物の軍隊を相手しているようだった。ただ本能に任せて襲ってくる訳じゃなくて、とても頭が良いみたいだった。


ボクも状況に合わせて柔軟に動かしていかないと。丁度前線が蜘蛛の勢いで押され気味だった。少しずつミニフィー達は戦線の無理な維持をせずに、弾幕を張って後方へ。ラビットT-60A5で飛び回る精鋭ミニフィーが孤立するけど、スナイパーが支援してなんとか巨大蜘蛛の気を引き続けた。


シラヌイが一度に相手取れる巨大蜘蛛は1匹。とにかく動きが速い上に、軽機関砲を弾くレベルに外殻が硬い。吐く糸はバリア装甲を溶かして破壊する強酸性。シラヌイであっても直撃したら危ない。


バーンバズーカの弾速でも距離が離れると躱しちゃう。大型の原生生物の脅威に内心ビックリしていた。


戦況の推移はR.A.F.I.S.S越しに皆に伝わっていた。


「どうする?誰か援護に行く?」


タマさんの声にボクは首を振った。


「敵の主力がコロニーから出ている今は好機です。それにあの不審な気配を確認しに行く方を優先したいです。」


ボク達も不審な気配へ向かって迂回しながらも急いだ。


「‥‥っ!目標地点、交戦音が聞こえます!」


感知した反応は戦闘用ドローンのもの。かなりの高級品で、複雑な演算が滝のように流れていくのを感じる。


近づいて見れば、4足で歩く大型のバトロイドを中心に10機程のドローンが蜘蛛の群れと戦っていた。


「何よアレ?」


「話は後!こっちにも撃って来た!」


ドローンに備えられた機銃が、蜘蛛ごとボク達を薙ぎ払った!


「不躾なドローンで御座いますね。転がしてやりましょうか。」


イルシオンを伸ばしてドローン狙えば、宙で小刻みに動いて無駄なく避ける。でもイルシオンからにゅっと覗いた紫電M10の銃口が、ピタリと側面に突き付けられた。


1機が火花を散らして吹き飛んで行く。ラファエルさんの操作する光学ドローンに対抗して、複数機で抗光学バリア装甲を展開するもタマさんが3M50を一点に集中させた。


衝撃で空いたバリア装甲の隙間へ、ブランさんがacus(アクス)を撃ち込んで中のドローンを撃墜した。数が減って抗光学バリア装甲が維持出来なくなると、そのままラファエルさんに纏めて貫かれてしまった。


残っているドローンをボクが指せば、急に湧き出た霧に包まれて姿が消える。硬質な金属を容易く叩き壊す破壊音、霧がニヤリと笑って消失した。後には凹んだドローンの残骸だけが残っていた。


「まったく、敵味方の見分けも付かないバカなのかな。」


残っていた蜘蛛が、眩い光の中で灼き崩れていった。ラファエルさんは、土で汚れたドローンを蹴り飛ばす。


「このバトロイドは何かしらね。」


護衛が居なくなり、搭載された銃器を光線で灼かれて無力化した4足は脚を止めずにそのまま進んで行く。


ボク達も気になって後を追いながら見回した。


パッと見は大型の4足機。速度はあまり速くない。足場も悪いし、それに動きが慎重そうな感じがした。


『ほうほう。にゃはは、見た感じじゃ分かりませんがワタシなら分かっちゃいますね。このバトロイド、小型核が搭載されています!』


「えっ?!核って、爆弾ですか?!」


思わず皆飛び退いた。クイックハックしようとするタマさんを、ホロウインドウから伸びた手が止める。


『落ち着いて下さい。まだ爆発はしませんよ?早める事は出来ますが。例えば余計なちょっかいを出すとかね。』


核を搭載したバトロイドがこんな場所へ護衛と一緒に迷い込んで来た?そんな訳が無い!


「ええと、じゃあボクがどこか別の場所へ飛ばします!」


タマさんに引き止められた。ボクの首を巻いた尻尾がほっぺを突く。


「止めておきなさい。多分だけど、もしこれがイージスが送った爆弾ならその対応を考えていない訳がないわ。」


フィクサーさんもホロウインドウの中で頷いた。


『ご名答!先程から一定間隔で断続的に電波を発しているのが分かりますね。GPSでしょう。つまり、予期されていない場所への移動を感知した場合‥‥』


ホロウインドウの中で、 BOOM!!と爆弾が爆ぜてキノコ雲が上がるアニメーションが流れた。


そんな!!それじゃどうしたら?!


「一旦壊しましょうか?当機が解体しても宜しいですよ?」


『止めておいた方が良いですよ〜。ワタシが設計者ならもし脚部に一定以上の損傷が起きた場合、その場で起爆するように作りますね!ここで爆発すれば規模にもよりますが、コロニーもアナグマも爆風で吹き飛ばせるでしょうし。』


勿論予定の場所じゃないから、効果が確実かは分からないけど。でも見つかって無力化されて持ち去られるよりはマシだという事かな?


「考えたものね。蜘蛛の大部分はミニフィーの軍勢と戦ってるから、蜘蛛にこれがバレても所詮はバトロイド一機とドローン数機だし見逃される可能性が高いって訳か。アイツらは蜘蛛とラフィが戦ったらラフィが勝つと読んでいるだろうし。」


戦況が悪化すれば、バトロイドを攻撃する蜘蛛も戦場へ向かって行く。だから敢えて戦力は少な目に、無視できる程度と思わせるようにしていた。


「クソッ!!!」


ラファエルさんが地面を蹴った。そのまま地団駄を踏んで感情的に声を上げる。


「どこまで汚いんだ!!最後には企業が勝つのかよ!!都市の真隣だぞ!!」


「それでも害獣退治の為なら大丈夫とでも言うつもりでしょうか。ラフィ様が対応中ですのに、開拓者組合をコケにする所業で御座います。」


でも誤魔化せると算段が付いたから実行に出ているんだと思う。思わず悔しくて、涙が滲んだ。


「都市運営委員会っていうのはこんなにも無法出来るなんてね。呆れたわ。」


『そんな訳ないですよ。ま、それだけ追い詰められているのでしょう。しかしこのままでは最後の最後で盤面をひっくり返されてしまいます。』


フィクサーさんも困り顔。このまま脚を壊さずに爆弾解体とかは‥‥


「確実に言える事は、常識の範囲内の対処法は全部向こうの想定内って事。何しても爆発が早まるだけでしょうね。出来る事はもう、アナグマに避難の指示を出して逃げ出すぐらいかしら。」


タマさんの耳は垂れ、そんな姿に思わず目頭が熱くなって。目を擦っても涙が溢れた。こんなに頑張ったのに負けちゃうの?街を守れないの?


イージスのヒト達がほくそ笑む姿が瞼の裏に見えた気がした。

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